自民政調全体会議 骨太方針原案に「賃上げ・物価上昇対応は社会保障費の別枠で」 消費税増収分活用を
公開日時 2025/06/10 04:51

自民党政調全体会議は6月9日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2025)の原案をめぐり、部会長から意見を聴取した。長坂康正厚生労働部会長はこれに先立って行われた厚生労働部会での議論を踏まえ、「(社会保障関係費における)賃上げや物価上昇などの対応分は、歳出削減の深堀りではなく、足し算で別枠として対応することを明確にすべき」と主張した。医療機関経営が厳しさを増すなかで、「医療・介護分野等の賃上げへの対応の財源は社会保障の歳出削減の深掘りで対応します、ということでは全く意味がない」と強調。財源については、「(消費税などの)税収増を社会保障の充実の財源として活用することがわかるような文章を追記すべき」とも述べた。
骨太方針原案では、注釈として、「社会保障関係費については、医療・介護等の現場の厳しい現状を踏まえ、これまでの歳出改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ、25年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等を踏まえながら、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う。高齢化や高度化等による増加分に、こうした経済・物価動向等を踏まえた対応による増加分を加えた、いわゆる自然増から、これまでの歳出改革努力を継続する」としている。長坂厚生労働部会長は、「注釈ではなく本文に明記すべき」と述べた。
そのうえで、「原案の“いわゆる自然増から歳出改革を継続する”という引き算の形では、これまでのように歳出改革で賃上げや物価上昇などに対応するようにも読める。賃上げや物価上昇などの対応分は、歳出削減の深堀りではなく、足し算で別枠として対応することを明確にすべき」と述べた。「経済全体の賃金物価上昇にともない消費税などの税収が増加していることを踏まえ、税収増を社会保障の充実の財源として活用することがわかるような文章を追記すべき」とも主張した。
「保険料負担の抑制努力の継続」が明記されることにも触れ、協会けんぽでは10年以上保険料率が変わらないことを引き合いに、「抑制努力をしなければいけないのは、保険料額ではなく、保険料率であって、これは変わっていないことを申し上げておきたい」と釘を刺した。
◎力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等を「確実に反映」を
医療機関経営が厳しさを増すなかで、骨太方針原案では、「医療・介護・保育・福祉等の人材確保に向けて、保険料負担の抑制努力を継続しつつ、公定価格の引上げを始めとする処遇改善を進める」と明記。26年度診療報酬改定が控えるなかで、「25年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等を踏まえながら、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う」とされている。
長坂厚生労働部会長は、他産業に負けない賃上げや、物価上昇への対応が確実に報酬改定に反映されることが必要と指摘。原案の“昨今の物価上昇による影響等を踏まえながら”との文言では「全く弱い。“影響等を確実に反映し”など、もっと強調した表現とすべき」とした。
◎費用対効果評価の文言修正求める声も 特許期間中の薬価維持明記を
このほか、費用対効果評価について修正を求める意見もあった。原案では、「イノベーションの推進や現役世代の保険料負担への配慮の観点から、費用対効果評価の更なる活用に向け、対象範囲の拡大や実施体制の強化、適切な評価手法の検討と併せ、薬価制度上の活用や診療上の活用等の方策を検討する」とされている。この記述について削除を求める声や、客観的に制度の検討を求める声があったと説明。また、「対象範囲の拡大でなく、対象範囲の検討と修正すべき」と述べた。このほか、「革新的医薬品の特許期間中の薬価維持という表現をどこかに盛り込むとともに、創薬エコシステムの発展や、ヘルスケア市場の拡大を追記すべき」ともした。