諮問会議で民間議員 診療報酬で「現場の確実な賃上げに」 薬剤自己負担見直しなど改革が「一層重要」
公開日時 2025/05/27 04:50
政府の経済財政諮問会議の民間議員は5月26日、骨太方針2025に向けて「医療・介護等について、DX 等による生産性向上をはかりつつ、診療報酬改定が現場の賃上げに確実につながるような対応が重要」と主張した。少子化対策の財源確保が求められるなかで、「実質的な負担が生じないよう、改革工程に基づく医療・介護の歳出改革を着実に重ねるべき」と指摘。医療・介護現場などでの賃上げを実現するために、所得資産に即した応能負担の強化、薬剤自己負担の見直しなど「改革を通じた保険料負担の抑制努力の継続が一層重要」と指摘した。
◎民間議員 経営情報見える化で「経営形態やサービス内容に応じたメリハリある措置を」
「骨太方針2025では、経済全体のパイを拡大する中で、力強い賃上げモメンタムを定着させ、全ての世代の現在及び将来の賃金・所得が継続的に増加する“賃上げを起点とした成長型経済”の実現に向けた取組の方向性を明らかにする」-。石破首相はこの日の諮問会議で関係閣僚にこう指示した。
医療・介護現場などでの賃上げをめぐり、民間議員は、「保険料負担の抑制努力を継続しつつ、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、また、医療・介護・保育等それぞれの現場の実態に即して働きに見合った対価が支払われるよう、きめ細かく対応する必要がある」と指摘。一方で、医療法人における職種別給与情報の開示義務化の検討や、運用が開始された介護事業者データベースに基づく分析結果の公表など、経営情報の更なる見える化を実行し、「経営形態やサービス内容等に応じたメリハリある措置を講ずべき」とも主張した。
◎民間議員 高額療養費とセットで薬剤自己負担の見直しなどの保険給付のあり方検討も
一方で、社会保障の持続性を維持するうえで、歳出改革を通じた保険料負担の抑制が重要として、「給付と負担のバランス確保と社会変化に即した保険制度の見直し」を求めた。「所得・資産に即した応能負担の強化が必要」とした。また、「高額負担のリスクへの備えである高額療養費制度の再検討が予定されているが、その際には例えば薬剤自己負担の見直し等、小さなリスクへの自助の考え方に基づく保険給付の在り方を併せて検討することも選択肢としながら、必要な改革効果を確保すべき」と主張した。改革工程では、「薬剤定額一部負担、薬剤の種類に応じた自己負担の設定、市販品(OTC)類似の医薬品の保険給付の在り方の見直しについて、引き続き検討を行うこと」とされている。
民間議員からは、「小さな健康リスクには、セルフメディケーションでの対応も必要。スイッチOTC化を進めるべきだが、この点も昔から提言しているが、実現していない。スイッチOTCは通常の薬と比べて効能が劣るとの誤解もある。正確な知識の周知普及が必要である。OTC類似薬の自己負担や保険外診療の併用も進めるべき。本気で取り組みを進めていただきたい」との発言もあったという。
このほか、高齢者医療制度のあり方を検討することも求めた。
◎福岡厚労相 報酬改定で「幅広い職種の賃上げ、確実に」 改革工程に沿った取組み進める
福岡資麿厚労相は、「本格的な少子高齢化、人口減少が進む中で、社会保障制度を持続可能なものとすることは重要な課題」と指摘。「負担能力に応じて皆が支え合う全世代型社会保障の構築に向けて、改革工程に基づき引き続き取り組みを進めていく」と述べた。
そのうえで、賃金・物価が上昇するなかで、「医療・介護分野では人材確保をはじめ、経営を取り巻く環境は大変厳しい状況となっている。次期報酬改定等においては、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、従来以上の対応を行うことが必要だ。合わせてそれまでの間においても、必要な対応を行っていく」と述べた。
◎加藤財務相 給付と負担のバランス確保は「大変重要な課題」 保険制度の不断見直しで
加藤勝信財務相は「社会保障分野においては、全世代型社会保障の構築に向け、引き続き改革工程に基づき取り組みを進めていかなければならない」と強調。「社会の変化に応じて必要なサービスが必要な方に提供され、保険料を抑制しつつ、公平な負担となるように保険制度を不断に見直し、給付と負担のバランスを確保していくことは大変重要な課題であり、関係省庁と議論を深めていきたい」と述べた。
◎民間議員「減税政策よりも賃上げを」
同日の諮問会議で民間議員は「財源の裏付けのない減税政策よりも、経済全体のパイを拡大する中で賃上げモメンタムを 定着させることが重要」とも主張。「消費税減税について財源なきままの減税は無責任。専門家と一般の国民の方の考えには差がある。財源なきままの減税がいかに無責任なのかという説明が足りていない」と指摘する声もあがった。有識者による社会保障制度改革国民会議での議論を踏まえ、社会保障・税一体改革が進められてきた経緯を振り返り、「この機会を逃さず、同じような官邸会議を立ち上げてはどうか」と提案する声もあった。
◎「我が国を世界有数の創薬エコシステムに」 28年度以内に10位以内の目標掲げる
このほか、同日の諮問会議では、「経済・財政新⽣計画 進捗管理・点検・評価表 2025」を決定した。医薬品関連では、政策目標達成を確認するための指標であるKGIに「我が国の都市が世界有数の創薬エコシステムとして評価されていること」と設定。「28年度以内に世界10位以内」との目標を掲げた。このため、国内に不足するバイオシミラーの製造所の整備などバイオシミラーの施策を進めるほか、アジア地域における臨床研究・治験ネットワークを活用した臨床研究・治験の実施を促すことを盛り込んだ。
後発医薬品の安定供給についても、KPIを設定した。KPI第2階層(施策の実施成果を測定するための指標)として、「頻繁な価格交渉の改善」とした。200床以上の病院、20店舗以上の調剤薬局チェーンにおける年間契約の割合(軒数ベース)を実績値(23年度)では200 床以上の病院 66.9%、20 店舗以上のチェーン薬局54.4%だったが、中間値(27年度)に200 床以上の病院70%、20 店舗以上のチェーン薬局 60%、目標値(29年度)として200 床以上の病院 75%、20 店舗以上のチェーン薬局 65%を掲げた。