MR認定センター・井廻新理事長 「医師にとってMRは必要な存在」 不要論を一蹴
公開日時 2022/07/14 04:52
MR認定センターの2代目の理事長に就任した井廻道夫氏(新百合ヶ丘総合病院消化器・肝臓病研究所所長)は7月13日、東京都内で就任会見にのぞみ、「髙久前理事長の遺志を引き継ぎ、MRが医薬情報担当者として医療関係者の期待に応えられるよう、MRの更なる資質向上と、その資質の認定に取り組む」と抱負を語った。自身の医師としての経験からもMR不要論を一蹴。「医師にとってMRは必要な存在」と強調し、一例として新薬の市販後の既知・未知の副作用に関する情報を収集して、信頼できるMRから迅速に情報提供されることは、「医療や患者のためになる」との認識を示した。
同センター創立当時から理事長を務めた髙久文麿氏が3月24日に死去し、後任として井廻氏が6月24日に理事長に就いた。井廻理事長は、髙久氏が東京大学第三内科の教授時代に医局長を勤めるなどしたほか、髙久氏が50歳から始めたテニスは「それを教えたのは、この私です」(井廻理事長)と、髙久氏とは公私にわたり50年以上の師弟関係にあったことを紹介した。同センターの理事長職は、入退院を繰り返していた髙久氏から21年11月に後継指名されたもの。「髙久先生からは何かあると頼まれることが多かった」と振り返った。
◎「医薬品の普及という行為は、立派な医療への貢献」
井廻理事長は、▽医薬品の普及活動▽安全性監視活動▽リスク最小化活動――の3つの活動がセットになってMRの役割になるとの認識を示した。
このうち普及活動については、「MRは医薬品を普及するという重要な役割を持っている」とした上で、「画期的な薬理作用を持つ新薬も、経済性や使用性に優れた後発薬も、それが医療従事者に認知され、使用方法を熟知されることで薬物療法に組み入れられる。最適と思われる患者に使用されなければ患者を助けることはできない。そういう意味で、『医薬品の普及』という行為は、立派な医療への貢献」との考えを示した。
処方された自社品に未知の有害事象が発見されていないか、重篤な有害事象が発生していないかに絶えず注意を払い、情報収集と注意喚起を徹底することも極めて重要な役割と指摘。「これがファーマコビジランスの意味するところであり、製造販売業者の責務。そして、それを実行するのがMRの役割・使命だ」と話した。また、「『売らんかな』との姿勢で自社に都合の良い情報のみを提供するような不適正な活動をするようなことがあってはならない」とも述べた。
◎認定試験制度改革検討委員会を設置 23年2月に結果公表へ
井廻理事長は、製薬企業の一部から、MRは不要とする見方があることにも言及した。「メディカル部門は客観的・中立的な情報を提供できる」とMR活動を否定するかのごとき議論がこれまでにあったことに触れ、「誠に遺憾」と述べた。そして、「企業内の各組織が連携して、企業全体として企業理念で掲げた姿を実現しようとするのが企業経営であるはず。(メディカルに係る)先の発言は、医師から見て製薬企業に対する不信感でしかない」と指摘し、企業理念に基づく健全な組織風土づくりや社内連携をいま一度確認してもらいたいと訴える場面もあった。
このほか、MRの社会的地位の向上のためには、「一番重要なことはきちんと認定され、認定の基盤となる研修が誰から見ても文句をいわれない内容であること」が重要との考えを示した。イメージとして認定医・専門医制度を挙げ、しっかりしたカリキュラム、研修、外部評価、認定により質が担保されているとした。21年にMR認定制度が改定され、残る課題のMR認定試験の見直しが進められている。井廻理事長は、帝京大学の栗原順一・名誉教授を委員長に「認定試験制度改革検討委員会」を設置して検討を始めたことを明らかにし、23年2月に検討結果を公表する予定と説明した。