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【中医協薬価専門部会 12月9日 令和5年度薬価改定について 支払側・診療側委員、専門委員の発言要旨】

公開日時 2022/12/12 05:55
【診療側・長島公之委員(日本医師会常任理事)】

中医協資料「薬-1」の⁠12ページの論点に沿って、今回新たに追加された論点を中心にコメントいたします。まず二つ目の論点の改定対象範囲についてです。これまで申し上げてきた通り、医療現場では、出荷停止、出荷調整によって、日常に使う医薬品がないため、患者さんに大変なご迷惑をおかけしている状況にあり、仮に処方できたとしても代替品に変更しなければならず、患者さんへの丁寧な説明が求められるなど、医療現場では追加的な負担が生じている現状があります。

医薬品による治療は保険診療の根幹をなすものですから、国民の命と健康を守るためには必要な医薬品を医療現場から患者さんへ、安心かつ安定して提供できる状態を保つことが強く求められます。さて、今回提示された資料の3ページによれば、前回並みの平均乖離率の0.625倍超を対象範囲にしたとしても、相当な経済的影響が出ることが見て取れますので、今申し上げた医療現場の状況を踏まえれば、改定対象範囲については国民負担軽減に加えて、国民の命を守るための医療提供体制の安定化についても十分に配慮した上で判断すべきと考えます。

続いて、4つ目と5つ目の論点についてまとめてコメントいたします。そもそも中間年改定は通常の薬価改定とは異なり、価格乖離の大きな品目の薬価を改定することを目的とするものであることからすれば、本来の目的を超えて対応することについては慎重に判断すべきであると考えております。

したがって実勢価格改定と連動しない算定ルールを適用することや、現行の算定ルールを超える対応を検討するのであれば、その根拠となる事情を厳格に判断した上で緊急的、特例的対応の必要性を検討すべきと考えます。そういった意味では、4つ目の論点である。安定供給上の問題については、全体の28.2%、後発品の41%が出荷停止、限定出荷になっている厳しい現状が見て取れます。ただし、前回、安藤委員も発言されましたが、今回の問題は企業の対応に端を発するものであり薬価上の対応をすることでこの問題が解決するとは思えませんので、産業構造やビジネスモデルに関わる課題への対応が同時にどのように行われるのか、よく見定めた上で議論を行う必要があると考えております。

また、論点の5つ目については、新薬に対する配慮についてどう考えるかという提案だと受け止めておりますが、中間年改定の目的が価格乖離の大きな品目の薬価を改定することってあることからすれば、特許期間中の新薬を改定対象から外すことは4大臣合意を超えることになると受け止めております。イノベーションの評価は重要な視点ではあるものの、前回も指摘申し上げた通り、例えば原価計算方式で算定される場合の原価の開示度が低いまま推移していることなど、問題も指摘される中では、前回の中間年改定である令和3年度改定を超える対応をするのは慎重に判断すべきと改めて申し上げます。

最後に6つ目の論点についてです。前回の中間年改定である令和3年度薬価改定では、医療機関、メーカー、卸といった全ての関係者が新型コロナウイルス感染症による影響を受けているとみなして、薬価の削減幅を一律0.8%緩和したと理解しております。

一方で、今回は安定供給に支障が生じている品目がある程度カテゴリー別に整理されている印象を受けております。こうしたことを踏まえますと、一律に緩和を行うことの必要性は認めないと言えます。影響が大きいカテゴリーに特化した対応を行う場合の方法について今後は繰り返しになりますが、産業構造やビジネスモデルに関わる課題への対応も踏まえ、検討すべきだと考えます。

【診療側・有澤賢二委員(日本薬剤師会理事)】

論点に沿って発言をさせていただきます。一つ目と二つ目の論点にあります、令和5年度の薬価改定についてどのように考えるか。そして、改定対象範囲についてですが、これまでの発言の繰り返しになりますが、新型コロナ感染症や物価高騰による影響など、想定を超える現在の状況を考慮すれば実施できる状況にはないと考えますが、もし仮に実施する場合であれば平成28年4大臣合意に基づき、定時改定とは異なり、価格乖離の大きな品目を対象に限定的に行うべきものと理解しています。

少なくとも前回を超える範囲での実施は行うべきではないと改めて主張させていただきます。三つ目の論点の適用する既収載品目の算定ルールにつきましては、中間年改定の趣旨に鑑みれば、実勢価格に基づき行い、実勢価格と連動し、その影響を補正するのみの実施とし、連動しないものについては当然適用すべきでないと考えます。

4つ目の論点である。医薬品の安定供給については、現場では患者さんに必要な医薬品を提供するため、多大な労力と時間を使い、何とか対応しているところですが、残念ながら、状況の改善が見られるどころか、日増しに悪化しているのが現状であります。例えば、抗生剤、抗菌薬、あるいは向精神薬、解熱鎮痛消炎剤などをはじめ、他にも供給に支障きたすと非常に困る医薬品は数多くありますが、現在の不安定な状況を考慮するならば、これ以上安定供給に支障をきたすような対応をすべきでないと指摘させていただきます。

少しでも安定供給の確保、もしくは改善に繋がるのであれば、今回は緊急的な措置として、不採算品となっているものについては、従来のルールにとらわれすぎず、現状を踏まえた柔軟な対応を行うなどの配慮が必要ではないでしょうか? 

5つ目の論点です。新薬の対応については、先日の業界ヒアリングでもご意見があった通り、日本の創薬環境を損なわない対応をとるべきと考えます。新薬の開発には多くの時間を要するものであり、臨床上の評価についても時間を要します。短期的な視点だけでは見極めたいことところもあると思われますので、慎重な判断が必要であると考えます。

最後に6つ目の論点です。安定供給や新薬のイノベーションの推進のためには、改定する薬価の引き下げを広く一律に緩和するという対応ではなく、影響が大きいカテゴリーに特化した対応などが必要ではないかと考えます。私からは以上です。

【診療側・林正純委員(日本歯科医師会常務理事)】

中医協資料「薬-1」の論点について意見を申し述べます。まず論点の2つ目の改定対象範囲につきましては、従来から申し述べておりますが、仮に改定を行う場合には、価格乖離の大きな品目を対象に限定的にすべきであると考えております。

論点の4つ目でございます。原材料等の高騰や為替による影響等により、医薬品の安定供給に支障が生じていることにつきましては、5ページ目の資料の通り多くの品目が物価高騰等の影響を受けて不採算となっており、こうした不採算品につきましては、価格の引き上げを含めた対応も必要であると考えております。

最後に論点の6つ目ですが、今回の改定におきましては、一律の対応というよりは、例えば不採算となっている品目により明確な形で対応を行うのが良いのではと要望いたします。歯科からは以上でございます。

【支払側・松本真人委員(健康保険組合連合会理事)】

最初に一昨日の業界ヒアリングの感想を含めまして、基本的な認識を述べさせていただきたいと思います。先日のヒアリングの場では私の方から、今回の薬価調査で、例年並みの乖離率になった理由をお尋ねしましたが、業界側のご説明は値引き競争によって乖離が生じるという一般論にとどまり、他の委員の皆様方が質問されたことへの回答も含めて、データの背景や今の状況について特段のご説明はなかったと受け止めております。そういうことを考えますと、令和5年の改定に向けて具体的な検討するために必要な踏み込んだご説明が、業界からは残念ながらいただけなかったというふうに感じております。

これは全体を流してみますと、少なくとも薬価制度として一律に対応しなければならない重大な変化が足元で起きているわけではないと理解せざるを得ません。ましてや改定を実施しないという選択肢は中医協の判断としてはあり得ないということは強く指摘させていただきます。

逆に、欠品や出荷調整については日薬連のアンケート結果から、ほとんどが法令違反を発端としたもので、製薬業界は別の事情によるものはごくわずかということがわかりました。安定供給については、今回薬価で何か対応するというよりは有識者検討会のご意見、あるいは先ほど2号側の委員からのご意見もありましたけども、産業構造を含めて業界のあり方を改善しなければ問題の解決には繋がらないと思います。ヒアリングの場で業界としてもこの件については真剣に取り組むという決意表明がございましたので期待をしております。

続きまして12ページの論点についてコメントいたします。まず一つ目と三つ目の論点につきましてまとめて発言をいたします。再三申し上げている通り、診療報酬改定の無い年、ある年に関わらず政策決定ルールについては原則同様に扱うというのが基本的な考え方です。その上で政策決定ルールを、実勢価改定に連動するもの、しないものに全部するとしても、新薬創出加算の累積額控除と長期収載品のG1、G2ルールについては適用する合理性があるということです。

次に二つ目、四つ目、六つ目の論点ですが、先ほどの薬価調査に関するところでも触れましたけども、全体として、前回から対象範囲を狭めるような理由は見当たりませんので、以前から申し上げている通り、0.625倍をベースとして、仮に今回に限った特別な配慮を行うということであれば、3ページにありますように範囲を0.5倍まで広げれば、影響額が100億円増加しますので、この財源の範囲で、例えば不採算で安定供給ができないものを個別に精査して救済するということは検討の余地があると考えております。

特定の分野を対象から外したり、令和3年度改定のコロナ特例のように一律に引き下げを緩和したりするのは不適切だと指摘させていただきます。

最後に五つ目の論点のドラッグ・ラグなどの再燃や研究開発費の増大の対応につきましては、新薬創出等加算こそが薬価の観点からは、令和5年度改定において取り得る措置だと考えております。その意味で資料の2ページ、3ページの下について、新薬創出加算の対象品目数と影響額をお示しいただきたいというのが要望になります。

最後にそれ以上の対応につきましては、業界ヒアリングの中で、長期的視野で考えるべきというご意見がございましたので、どのような対応がありうるのか。令和6年度の薬価制度改革に向けて、これは慎重に議論すべきだと考えます。先ほどもご意見がありましたが、まずは原価を開示していただくことが検討を踏まえ進める上では重要な要素になります。日本市場の予見性を高めるためにも海外企業にもご理解をいただきたいというふうに思います。

【支払側・安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)】

前回の業界ヒアリングでは、医薬品業界をリードしております欧米の製薬会社が日本における今回の薬価改定を注視しており、今後の日本におけるマーケットの関わり方をどのようにするのかを検討するというような旨のご発言がありました。非常に示唆に富むお話が多くありましたが、薬価改定において最も重要視すべき客観的データである薬価調査の結果を踏まえれば、薬価制度の抜本改革について骨子等で示されております対象品目の範囲については、国民負担の軽減の観点からできる限り広くすることが妥当である、との方針に沿った検討することが本来のあるべき姿ではないのかというふうに考えております。

そうした基本的考えのもと、資料12ページの論点につきましては、先ほどの松本委員のご意見と同様なのですが、安定供給の問題と薬価の問題とは別の問題であると認識して議論をしなければならず、乖離の状況を考慮に入れず、ある分野を一律に対象から外すようなことは慎むべきであるというふうに考えますが、安定供給に深刻な支障が生じている状況を鑑みまして、不採算となっているものにつきましては、改定対象には含めた上で一定程度の配慮を行うことも考慮に入れて議論をしてもいいのかなというふうに考えております。

【専門委員・赤名正臣氏(エーザイ)


これまで業界から意見ございましたけれども、直近原油価格の高騰もしくは円安の進行こういったものが医薬品の製造コスト、研究開発費上昇に繋がっているという意見がございました。これは中間年改定が決定された4大臣合意時点では全く想定されてなかった事態が起きているということだと思います。さらに、国内未承認薬は増加し医薬品の安定供給問題が発生している現状を鑑みますとですね、薬価を引き下げる状況にはないのではないか、というふうに考えております。

先ほどもございましたがPhRMAの代表からは5年連続改定で日本への投資優先度は下がっているというお話もございました。本日の資料22枚目にございますけれども、国内未承認薬の中には、対象となる患者数が非常に少ない、いわゆるファストトラックと言われる希少疾病用医薬品、もしくはブレークスルー・セラピーと言いまして、これ非常に重篤な疾患を対象として、既存治療よりも有効性がかなり期待できるというものを早期に承認するための制度でございますが、こういった制度に指定されている大変重要な医薬品が含まれているということでございます。こういった医薬品が日本に今入ってきてない状況ということでございます。中間年改定の実施ですけれども我が国においてこういった必要性の高い医薬品、新薬へのアクセスに支障をきたしてしまう恐れがあるのではないかということを考えます。

また後発品を中心とした安定供給問題ございますが、これについては卸それから医療機関様におきまして、十分な供給量がないという中で需要を途切れさせないため、大変なご努力をされていると理解しております。現在十分とは言えませんが、業務停止処分となった企業に代わりまして、いち早く通常出荷ができるように企業は増産体制に努めているという意見もございました。

そんな中でスライドにございますように、数多くの医薬品の薬価を引き下げるということは、安定供給の回復に努めている企業の取り組みを阻害することになりかねず避けるべきではないかというふうに考えます。

令和5年度の薬価改定につきましては、このような状況を十分に踏まえて慎重に検討すべきではないかというふうに考えております。また、改定の実施如何に関わらず、スライド5にございますような医療上必要性が高く物価高騰の影響により著しく採算性が悪化している品目ですね。こういったものについては薬価を引き上げる措置についても実施が必要ではないかというふうに考えます。

最後にスライド3に改定の影響額がございますけれども、この5年間毎年数千億にものぼる薬価引き下げ分が社会保障関係費の伸びの抑制に使われてきたという実態がございます。この結果として現在のドラッグ・ラグの再燃、さらに不採算品目の増加、こういった問題が顕在化しているというふうに考えます。

現在の制度では必然的に薬価差が発生し、改定を何度繰り返してもですね薬価差がなくなるということではないという制度にはなってございます。国民が革新的医薬品にアクセスが可能で、さらに必要な医薬品が安定供給されるための薬価制度のあり方につきましては、関係者でしっかり議論すべき段階にきているのではないというふうに考えます。

【専門委員・村井泰介氏(バイタルケーエスケー・ホールディングス代表取締役社長)】

先ほど松本委員から今回の薬価調査の結果、これまでとほとんど変わりがないというご質疑がございました。これについては私どもの認識をかなりかけ離れておりますので一つ申し上げたいと思います。去年よりも全体の平均乖離率でも0.6%、前回の中間年からは1%という圧縮が平均乖離率でもございました。1%といいますと、医療費ベースで1000億を超える額になりますので、これはかなり大きな変化というふうに思っております。

また内用薬、注射薬の全ての主要薬効で乖離率が減少しております。外用薬でごくわずか眼科用薬でほぼ横ばいですが、微増しているものがございますが、それ以外のものは薬効別に見ても全て圧縮になっております。そういう意味ではコロナ前の水準以上に平均乖離率で見ても薬価が圧縮されているということが見て取れるのではないかと私どもとしては考えております。
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