【中医協薬価専門部会 12月4日 議事要旨 令和6年薬価調査・速報値 令和7年度薬価改定の論点整理】
公開日時 2024/12/05 04:50
中医協薬価専門部会が12月4日に開かれ、厚労省から令和6年薬価調査・速報値が報告された。その後の議論では、薬価調査結果を踏まえ、令和7年度薬価改定の論点整理について議論した。本誌は、診療・支払各側委員の質疑について発言内容を議事要旨として公開する。
(事務局説明 略)
安川部会長:はい、ありがとうございました。それでは議論の整理のため、まず資料「薬―1」(令和6年医薬品価格調査(薬価調査)の速報値)、「薬―2」(令和6年薬価調査結果について)についてのご意見、ご質問等ございましたらお願いいたします。長島委員お願いいたします。
長島委員:今回このような平均乖離率で出たということで、これを踏まえて現状に即した合理的な判断をしていく必要があるというふうに考えております。以上です。
安川部会長:ありがとうございます。林委員お願いいたします。
林委員:ありがとうございます。本日示されました薬価調査の速報値についてですが、数値の精査はこれからいたしますが、歯科用薬剤のうち、特に歯科用局所麻酔剤につきましては、平成27年から依然マイナス乖離いわゆる逆ザヤ状態が続いておりまして、過去2桁を超えた令和4年にも発言させていただき、厚労省におかれましては様々な対応を取っていただいているところと認識しております。
今回もマイナスということで、過去最大のマイナス12.5%ということでございます。歯科特有の薬価差偏在問題として、是正に向けて引き続き対応を検討していただくよう要望いたします。よろしくお願いいたします。
安川部会長:森委員、お願いいたします。
森委員:はい、ありがとうございます。長島委員からもありましたが、本日公表された薬価調査の結果を踏まえて検討していく必要があるというふうに考えます。以上です。
安川部会長:他にいかがでしょうか?では松本委員お願いいたします。
松本委員:はい、ありがとうございます。薬価調査の速報値についてコメントいたします。平均乖離率が着々と縮小し、今回全体平均が5.2%ということで、これはメーカー・卸のコスト上昇を踏まえまして、医療現場がより医薬品の価値を評価した結果だというふうに受け止めております。
ただし、まだ値引き販売が行われたことも事実であり、投与形態別、薬効群別で見ますと依然として乖離率が大きいものがあるというのが率直な印象でございます。また、お示しいただきました後発医薬品のシェアについては、数量・金額ともに着実に拡大し、特に金額シェアについては、新たな政策目標の65%に大きく近づく62.1%という結果となっております。
これが不採算品再算定を重視した影響だとすれば、金額目標を設定した意図とは若干異なることも考えられますけども、後発品がさらに浸透しているという実態がうかがえるというふうに感じております。私からは以上でございます。
安川部会長:はい、ありがとうございます。他にご意見ご質問等ありますでしょうか? 鳥潟委員お願いいたします。
鳥潟委員:はい、ありがとうございます。薬価調査の速報値が示されたことに関しましては平均乖離率等の数値は前回よりやや低い水準となっておりますが、極端な数字であるというふうには考えておりません。通常通りの薬価改定が可能なことがデータからも示されたのではないかと考えております。
4大臣合意がある以上国民負担の抑制や国民皆保険の持続可能性の観点から令和3年度、令和5年度の薬価改定の前例を踏まえつつ、平常のルールに基づき、令和7年度薬価改定に向けて議論を進めていくべきというふうに考えており、今後、新薬、長期収載品、後発品といったカテゴリー別のデータもしっかり見ていきたいというふうに考えております。以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございます。他によろしいでしょうか? それでは引き続き資料「薬―3」(令和7年度薬価改定について③~論点整理)の論点についてご意見、ご質問等お願いしたいと思います。では、長島委員お願いします。
長島委員:はい、ありがとうございます。令和6年度薬価改定においては、限りある医療財源の中から、特に昨今のドラッグ・ロス/ラグや、供給停止等の事情から、国民医療の維持向上のために医薬品のイノベーションの推進と安定供給確保を高く評価いたしました。
しかし、現状、医療の現場では、治療に必要な医薬品が届かない状況が続いており、非常に困っております。これまで繰り返し発言してまいりましたが、関係業界や企業は、令和6年度薬価改定で行った薬価上の評価が、ドラッグ・ロス/ラグや供給停止の解消にどのような効果があったのか、どのような取り組みをしてきたのか。具体的に説明していただきたいと考えています。
その説明報告の上で、これらの課題の完全な解消には時間が必要なことも理解しており、今回、仮に薬価改定を行う場合には、各論に関する論点については、これまでのイノベーションの推進と安定供給という方針を維持しつつ、メリハリをつけた改定を行うとともに、医療の質が下がることのないよう十分に配慮し、現状に即した合理的な判断を行うべきと考えます。
製薬企業におかれては、国民・患者が安心して最善の医療が受けられるよう、不断の努力を行うことを期待します。
最後に、もし今回改定を実施するなら、薬価財源は医療現場へ還元すべきであると考えます。私からは以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございます。では林委員お願いします。
林委員:はい、ありがとうございます・資料「薬―3」の10ページにあります総論、いわゆる令和7年度薬価改定について歯科の立場から発言させていただきます。
これまでも何度か意見しておりますが、日常的に処方をしていた汎用薬剤が手に入らないといった安定供給の問題は未だ解決されていないと認識しております。安全・安心な医療の提供を持続していく上で非常に重要な課題であると考えております。
安定供給が確保された上での薬価改定だとも考えておりますので、必要な解決策をお願いしたいと考えております。中間年薬価改定に関しましては、そのあたりのバランスをしっかりと考慮の上ご対応よろしくお願いいたします。私からは以上でございます。
安川部会長:ありがとうございます。森委員お願いします。
森委員:はい、ありがとうございます。資料「薬―3」の10ページ目の総論(診療報酬改定がない年の薬価改定(令和7年度薬価改定))に関してコメントをさせていただきます。診療報酬改定がない年の薬価改定、いわゆる中間年改定については従前から申し上げている通り、廃止または中止すべきとの考えでいます。
なお、具体的な意見や考え方などにつきましては、後ほど各論の議論の際にまとめて発言させていただければと思います。以上です。
安川部会長:では佐保委員お願いいたします。
佐保委員:はい、ありがとうございます。中間年改定については、特に令和7年度薬価改定を考えるにあたっては、現下の状況として賃金の引き上げを含めて、総合的な配慮が必要ではないかというふうに考えております。私から以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございます。では松本委員お願いいたします。
松本委員:資料「薬―3」10ページの総論(診療報酬改定がない年の薬価改定(令和7年度薬価改定))についてコメントいたします。薬価改定の実施の可否については、これは政府の判断ではありますけども、薬価差が生じている以上、国民負担の軽減に還元すべきというのが健保連の考え方でございます。
医療保険制度の持続可能性を前提としつつ、イノベーションの推進や安定供給の確保に向けた対応を行うためには、薬価制度全体のバランスが重要だと考えております。
以前から申し上げている通り、診療報酬改定がある年、ない年に関わらず、政策的なルールを含め、毎年粛々と薬価改定を実施すべきというのが我々の基本的なスタンスであり、これは変わっておりません。
薬価専門部会においては、令和7年度改定を実施する場合を想定し、議論を進めることが不可欠だと考えております。私からは以上でございます。
安川部会長:はい、ありがとうございます。奥田委員の手が挙がっております・奥田委員お願いします。
奥田委員:はい、ありがとうございます。従来より申し上げている通り、経団連として、国民皆保険の持続性はもちろんのこと、イノベーションの推進も重要であると考えております。
今回、令和7年度薬価改定の検討にあたっては、この国民皆保険の持続性とイノベーションの推進の双方を両立させていくことが重要であるというふうに考えておりますので、改めて申し上げておきたいと思います。私からは以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございます。鳥潟委員お願いします。
鳥潟委員:骨太方針にも記載がある通り、イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえる必要性については理解しているつもりでおります。しかしながら繰り返し申し上げております通り、ドラッグ・ラク/ロスや安定供給の問題は薬価のみで対応する問題ではなく、またこれまでにご提示いただいた資料などを踏まえると、令和7年度薬価改定の際に何らか特別な配慮をする必要性があるかについてはまだ十分に落ちていないところであります。
例えば不採算品再算定の特例対応については、供給状況改善の効果が出ているが、以前提示された資料を見て疑問に思ったところです。
通常改定の流れであれば次回以降、業界団体のヒアリングがあると思いますが、今回の薬価改定にあたって、特別に配慮すべき事情にあるかについて、具体的なエビデンスに基づき説明いただきたいというふうに考えております。
安川部会長:はい、ありがとうございます。総論に関しては皆さん一通りご意見いただいたかと思います。では、各論の方について如何でしょうか? 森委員お願いいたします.
森委員:ありがとうございます。資料「薬―3」の36ページ目(各論に関する論点)に示されております論点についてコメントさせていただきます。本日公表された薬価調査の結果から明らかなように薬価差は以前に比べて相当小さくなってきております。
市場実勢価格との乖離を適宜薬価に反映して、患者負担を軽減抑制するという考え方は理解いたしますが、平成28年度4大臣合意当時と現在とでは医療を取り巻く環境が大きく異なります。
先日もテレビ放送で、薬局における医薬品の供給不安が相変わらず続いている、改善の兆しが見えないことが報道されました。まず重要なことは、4大臣合意が行われた平成28年当時は当たり前であった安定供給の状態には全然戻っていないということです。また、今年10月から始まった長期収載品の選定療養の導入の影響により後発品を選択する患者さんが増加したことで、これまで後発品を継続して使用されてきた患者さんにまで影響が及んでしまっています。
令和5年度、令和6年度薬価改定において、安定供給確保に向けた薬価面での下支えが行われていますが、現場では深刻な供給不足の状況が続いています。そのような状況であることを考えれば、先ほど申し上げた通り、中間年改定については廃止もしくは現在の医薬品供給状況の改善のめどが立つまで少なくとも中止すべきであると考えます。
ただ、仮に患者負担の軽減、抑制の観点からやむを得ず中間年改定を実施するのであれば、その大前提として、イノベーションと安定供給確保、保険薬局、保険医療機関に与える影響に十分配慮する必要があります。
特に保険薬局の場合は調剤報酬に占める薬剤料の割合が約75%と大きいため、備蓄品目の資産額の目減りは昨今の高額医薬品が増えていることもあり、調剤に係る医薬品の廃棄・損耗にかかる費用の捻出を極めて困難にさせることになります。また、総売上収益の減少、資金繰りの悪化にも繋がります。
その上で、論点1つ目の改定範囲についてですが、これまでの中間年改定では、乖離率0.625倍を超える品目が改定の対象範囲とされてきましたが、もっと対象範囲は限定すべきです。
前々回の中間年改定に当たり実施された薬価調査の平均乖離率は8%で改定対象とされたのはその0.625倍である5%でした。今回の薬価調査の平均乖離率は5.2%であり、当時と比べて約4割弱縮小しているだけではなく、過去の対象範囲とされた8%の0.625倍、つまり5%とほぼ同等のレベルに達してしまっていると言えます。
乖離率が縮小し、令和3年度改定の対象乖離率である5%とほぼ同じ乖離率になっているにもかかわらず、同じ改定対象範囲で実施することは対象範囲をさらに拡大していることと同義と考えます。
次に論点の2つ目と3つ目についてです。適用する既収載品目の算定ルールに関しては、基本的に実勢価改定と連動するルールに限定すべきと考えます。
また、不採算品再算定については必要な対応と考えますが、今回どのような範囲で行うのかは、多数の品目が対象となった過去2年の薬価改定による不採算品再算定の適用による供給状況の改善等を考慮しつつ、効果的な範囲も含めて、業界ヒアリングを踏まえた検討が必要と考えます。
次に論点の4つ目についてです。資料「薬―3」の31ページ目(後発品を製造販売する企業の評価指標及び評価方法(詳細))の検討されている指標を企業評価に導入することに異論はありませんが、こうした評価は初めての試みであり、企業経営や安定供給などにどのような影響があるのか。また、この指標や方法が企業評価として妥当なのかなど検証しながら慎重に進めていくべきと考えます。
このあたりについても業界ヒアリングで業界の考え方を踏まえる必要があると思いますので、厚生労働省におかれましては関係者にお伝えいただければと思います。
最後の論点についてですが、頻回で過度な薬価改定によって医薬品のライフサイクルは壊されています。また、薬局機能の低下にも繋がっており、結果として医薬品提供体制にも大きな影響を及ぼしています。国民の医薬品へのアクセスが阻害されることは、医療提供の質を大きく下げることになります。薬価改定の影響によって医療の質を落としてはいけません。しっかりと国民が必要な医薬品にアクセスできるよう、医薬品提供体制の維持や確保のための配慮が必要です。私からは以上です。
安川部会長:ありがとうございました。他にいかがでしょうか? 松本委員お願いいたします。
松本委員:資料「薬―3」の論点に沿ってコメントいたします。まず1点目の対象範囲についてですが、まず資料14ページ(改定の対象範囲と対象品目等について(前回の薬価調査データに当てはめた場合))をご覧いただきたいと思います。これは事務局の方で前回のデータに基づくカテゴリー別の推計を出していただいたものでございますけども、例えば範囲を狭くするほど、新薬そのうち新薬創出等加算品目が対象から外れていき、逆に後発品や長期収載に偏った改定になることが高いということがわかります。
厚生労働省には今回のデータを使ってよりきめ細かい分析をお願いしたいと思いますが、令和6年度薬価制度改革でイノベーション評価の観点から、新薬創出等加算を充実し、特許期間中に薬価が維持されやすくなったことを踏まえますと、新薬を含めて値引き販売されているものを最大限に幅広く対象とすべきだと強く主張いたします。
続いて2点目の適用するルールについてです。令和5年度改定で収載後の外国平均価格調整の適用実績も踏まえ、政策的な対応を含めて原則全てのルールを適用すべきだということは改めて指摘させていただきます。
特に新薬創出等加算の累積額控除については、令和6年の改定に向けた業界ヒアリングの中でも、再三確認させていただいた通り、イノベーションの評価と一体ということで、製薬業界からもご理解をいただいたものと受け止めております。
また後発品の実勢価改定と連動する長期収載品のG1、G2ルールについても当然適用すべきです。さらに近年、高額医薬品による財政影響が大きくなっていることを踏まえれば、市場拡大再算定の適用も検討すべきです。
次に3点目の薬価の観点から対応すべきことについてですが、令和6年度の薬価制度改革において、イノベーションの評価を相当程度充実したこと、また原材料価格の高騰やインフレへの対応について、不採算品再算定の特例を2年連続で実施したにもかかわらず、一方で効果は限定的であったこと、さらに薬価差が縮小して、メーカーや卸のコスト増が実勢価格に反映されていることもあり、企業の実績が総じて好調であることを踏まえれば、不採算品に対する特例的な対応はこれ以上繰り返すべきではないということも強く主張いたします。
4点目にあります後発品産業の少量多品目構造については、政府の令和6年度補正予算で、産業構造改革や増産体制の確保に向けて、国の事業が充実されることも念頭に置き、薬価制度としては、企業指標をアップデートするとともに、可能な限り幅広い指標を適用することで、バランスのとれた評価になると考えております。事務局からご提案の通り、少量多品目構造の適正化に関する指標を追加することに異論はございません。新たな評価方法で企業の分布がどうなるのか、事務局にシミュレーションを行っていただきたいというふうに思います。
最後になりますが、実勢価改定の範囲が限定的になれば、不採算品再算定や最低薬価品に充当する財源も当然限定的になってまいります。資料の32ページの最後にありますが薬価改定を行わない場合でも、低薬価品にのみ薬価上で対応するということはなかなか困難であるというふうにコメントさせていただきます。私から以上でございます。
安川部会長:はい、ありがとうございます。他にご意見等ありますでしょうか? 平均乖離率の調整倍率のことでいくつかご意見いただきました。事務局から何かそれに関して、ここで補足することがもしありましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか?
事務局:薬剤管理官でございます。平均乖離率に関する倍数でございますがいろいろ様々なご意見をいただきました。先ほど松本委員からもおっしゃられた通り、シミュレーションについては、今回の薬価調査の結果に基づきまして、いろいろ出させていただきまして、またご議論を深めていただきたいと思っております。以上でございます。
安川部会長:はい、ありがとうございます。あと企業経営の問題等もご意見としてありました。業界ヒアリング等が計画されているようですが、もし専門委員の方で何か発言することがあればお願いします。石牟禮専門委員お願いします。
石牟禮専門委員:ありがとうございます。専門委員の石牟禮でございます。これまでもご指摘いただいておりますように、医薬品の安定供給に不安が生じているという状況については大変申し訳なく思っているところでございます。
前回、この場でも供給不安のへの取り組みと不採算品再算定のデータをお示しいただいたところでございます。通常出荷を継続しているものの中にも不採算のまま継続しておったという品目があり、不採算品再算定を適用された後も継続しているというデータをお示しいただきました。また悪化している例においては、不採算採算性というよりは、別の要因での悪化の要因があるということについても、私の方からご説明申し上げた次第でございます。次回以降に予定されていると聞いております意見陳述の機会におきまして、そのあたりについて委員の皆様方からのご理解を賜れるよう準備をさせていただきたいというふうに考えております。どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
安川部会長:はい、ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。ご意見ご質問などないようでしたら、本日の議題はここまでとさせていただきたいと思います。
次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。なお、次回は関係業界からの意見聴取を行う予定となっておりますので、これも改めましてよろしくお願いいたします。それでは、本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。