厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の6回目の会合が12月9日に開催された。この日は、新薬の新規収載品の薬価算定の値付けの問題、新薬創出等加算、市場拡大再算定、さらには革新的医薬品の迅速な導入に向けたさらなるインセンティブ等のあり方をテーマに議論した。本誌は「議論その2」として、新薬創出加算、市場拡大再算定、さらには革新的医薬品の迅速な導入に向けたさらなるインセンティブ等のあり方に関するディスカッションの内容について発言要旨を公開する。
遠藤座長:それでは2番目のテーマに入る。ここでは上市後の評価として、新薬創出等加算と再算定の話に入る。資料で言えば21頁~37頁になる。これも、いろいろ課題のあるところだ。如何でしょうか。はい、芦田構成員お願いします。
芦田構成員:基本的には、先ほど申し上げたように革新的医薬品の迅速導入を図ることが大切だ。日本市場の魅力度を向上させるという観点に立てば、特許期間中の薬価を維持できる仕組みが必要だろうと考えている。その上で新薬創出等加算についてコメントしたい。
新薬創出等加算もそもそも、特許期間中に薬価を維持するということで導入されたものだが、最初に導入された2010年には、ドラッグ・ラグを解消する目的から、企業要件が設けられたと理解をしている。しかしその後、品目要件が設けられたことから、新薬そのものを品目ごとに評価すれば良いのではないかと言う風に考えるようになった。すなわち、企業要件や企業指標は必要ない。私はむしろ撤廃すべきだと考えている。
先ほど申し上げたが革新的新薬を開発しているのが現状、海外のエマージング・バイオファーマ(新興バイオ企業)だ。企業要件があることでエマージング・バイオファーマの新薬は新薬創出等加算の対象に恐らくならないのではないか。彼らにとってみれば、アメリカやヨーロッパで価格が維持できるのに、日本では上市後に価格は下がっていくという風に理解してしまう。だとすると企業要件を設けていること自体がむしろ今のドラッグ・ラグとかドラッグ・ロスを招いている一因と考えるのではないか。
従って企業要件というものについて、論点では見直すと書かれていたが、私はむしろ撤廃していいのではないかと考えている。以上です。
遠藤座長:ありがとうございます。一つ私から確認させて頂きたい。この企業要件をどう考えるかなんですが、国から開発要請があって、それに応じない場合(企業)は、この対象から外すというのが基本にある。それも外すということか? そこのところが新薬創出等加算の一番のポイントであったと思うのだが、それも外してしまうのか。むしろ芦田構成員が指摘しているのは企業指標のような個別の細かなところであって、(企業が)開発要請に応えなかったらば、その対象から外すという基本原則も外すのか? そこを確認させて欲しい。
芦田構成員:確かに開発を要請して応えかった場合というのは、日本で開発しないということですよね。
遠藤座長:(国が)頼んでも日本では開発しない、治験もしないというケースだと思う。
芦田構成員:例えば大手企業を最初に考えると、一つの薬剤の開発を要請したけれども、企業要件を満たさないからその会社は外しましょうというロジックかもしれないが、現状は多くの革新的新薬が、通常その一品と2品とか少ない数の開発をしている新興バイオファーマになっている。だとすると開発要請をしたけれども、それに応えないということは、その会社は日本でも開発しないってことだと思う。
遠藤座長:なるほど。わかりました。香取構成員どうぞ。
香取構成員:いまの遠藤先生の質問について私の考えといえば、それは他事考慮だと思う。これは、国が企業に開発を要請したときに、「うちはできません」と政府の言うことを聞かなかった企業が、別の新薬を持ってきたときに新薬創出等加算の対象にするかしないかという話だと思う。それは、ものの考え方としてどうかって気がします。これが一つ。
もう一つは芦田先生の発言されたことだが、新薬、特に画期的新薬を開発しているのは殆どエマージング・バイオファーマで、バイオファーマは何本も開発のパイプラインを持っているわけではない。1品、2品と研究開発をしている。それこそ魚屋さんに肉を扱ってくれと言われても、魚しか扱っていませんという世界になるので、開発要請をして、それに応じなければということになれば、「日本ではビジネスはしません」、あるいは「日本では研究開発はしません」ということになるだけのこと。そういう意味では、かつてそれなりにこれは意味があったのかもしれないが、今の研究開発の現状を考えると、この企業要件にあるように、政府との関係で要請を受けたか受けないかという基準を設けることの意味は殆どなくなったというような気がする。
同様に企業指標もそうだが、例えば過去に開発の実績があったとか、オーファンについて一定の研究をしているとか、複数のパイプラインを持って研究開発している企業ということであれば、それなりの実績となるが、いまは全く医薬と関係のない世界で研究開発をしている人たちがこの分野で薬を作り始めている。さらに言うと、最近は(新興バイオファーマが)自分たちで上市まで持っていくということも多い。ベンチャー側もそのことを前提に、最近は投資対象の数を絞って、一つあたりのロットを大きくして、かつ経営支援みたいなことも含めて出口まで持っていくことが増えている。まさにバイオベンチャー自身が自ら製薬企業の形になっていくというのが今の大きな流れ。そう考えると彼らもまた製薬企業だという頭で考えた方がいいので、この種の企業要件は、既存のメーカーを想定しているものでもあるし、既存のメーカーをある意味優遇する形になる。現状は、いろんなものが変わってきているので、それを前提に考えると、企業要件自体は、意味がない以上に「ない方が良い」という気がする。以上です。
遠藤座長:ありがとうございます。そうしますと芦田構成員、香取構成員ともに企業要件はもう完全になくして、あくまでも品目要件を何するかは別として、それぞれの品目について意味があるものについては価格を維持するという方が望ましいのではないかという主張だと理解しました。他にいかがでしょうか。菅野構成員どうぞ。
菅原構成員:一つ教えて頂きたい。先ほど提示された資料にあったように未承認薬が増えて深刻な問題になっているわけだ。その状況を見て国は当該企業に対し、この新薬が欲しいから開発要請をかけるってそういう考え方でよろしいのか。
遠藤座長:ちょっと待ってください。事務局どうぞ。
事務局:事務局から紹介する。参考資料2ページ目に制度の概要を記載させていただいた。厚生労働省内で医療上の必要性の高い未承認薬適応外薬検討会議というものを設けており、関係学会や患者団体などから開発の要望を頂き、その要望を踏まえて検討会議の中で、医療上の必要性を評価させていただいている。そこで医療上の必要性が高いと判断されたものについては、企業に開発の要請を行う。要請を行うのは、その海外で売っている製品のメーカーの日本法人など。逆にそれに該当する企業はない場合には、公募という形で実施する。
遠藤座長:ありがとうございます。菅原構成員どうぞ。
菅原構成員:ありがとうございます。よくわかりましたが、例えば、そういったお願いをしたけれども、この企業要件ではあまり評価されないっていう、そういうパターンは起こり得ないのだろうか? 実際に海外から持ってきて加算要件に照らし合わせたときに上位25%に入らないということが実際起こり得ないのかを確認させて欲しい。
事務局:ありがとうございます。ご指摘の通りです。開発補正に、応じる、応じない、はこの制度でいうところの企業要件に該当する。いま指摘のあった企業指標の方は別の評価軸になっているので、この開発要請に応じたからといって必ずしもこの企業指標の方が上位25%に入るというわけではない。ご指摘通り加算率が0.9、0.8になってしまうという企業が出てくるということになる。
遠藤座長:ありがとうございます。他に成川構成員、三浦構成員の順番でお願いします。
成川構成員:はい、ありがとうございます。いま議論となった新薬創出等加算について、意見を述べる。毎年大体40ぐらいの新しい有効成分が承認をされ、それ以外にも新しい剤形とか含めると50ぐらいの新薬が薬価収載されている。この事務局提案の中で特許期間中の薬価を維持できると書いてあるが、新薬全部を指しているのではないと理解しつつも、新薬と一口に言っても価値や画期性にかなり開きがある。そういう意味では画期的な品目の絞り込み要件は必要だろうと思う。これが一つ目。
それから企業要件だが、企業の過去の実績や努力に報いるべきなのか、あるいは新薬そのものの価値に重点を置くべきなのか、ということだと思う。私自身は最近の開発企業の(パイプラインの)シフトとかを考えると、医薬品そのものの価値に重点を置くようなやり方の方が良いのではないかと思う。つまり企業要件はない方がいいという意見だ。
もう一点、再算定の話に触れたい。市場拡大再算定について事務局から歴史を含めて説明頂いた。要するに最初に薬価をつけたときの前提条件が大きく変化し、かつ市場規模がかなり拡大したという品目に対して、薬価をつけたときの前提のズレを補正するという意味で生まれた制度だと認識している。そういう意味では一定の合理性があるのではないか。
ただ、いわゆる「共連れ」、「道連れ」と言うように、自分自身では市場規模はそんなに拡大してないといったものは、おそらく公平性とか競争性とかそういったものを重視をして拡大をしてきている経緯もある。確かに抗がん剤などは様々ながん種の適応を取得して承認されるのが主流となっているので、そういう意味で公平性と予見性のバランスという意味で考えると、少し拡大し過ぎているのではないかというのが私の率直な意見だ。その点については何か今後見直しをしてもいいのではないかと考えている。
遠藤座長:ありがとうございました。それでは三村構成員お願いいたします。
三村構成員:新薬創出等加算制度について整理して頂き、よくわかりました。私はまだ改定率が基準になっているのではないかと思い込んでいたところがあり、それが平成30年にそれがなくなって品目要件になった。これで恐らくこの制度の性格が明らかに変わったというか明確になったのではないかと思う。
つまりこれは革新性、有用性の高い薬に関してはそれについて評価を市場への上市後にもしっかりしていくということを前提として設置されているということあるので、このことを前提とすると、恐らくこれが最終的なってくると思うが、現状、この議論の整理においては、毎年薬価改定においては市場実勢価に基づいたというこの言葉は無くなっていくというふうに感じている。ですからそれを含めてという意味で、この品目要件は大変大事であるというふうに思う。
それと同時に企業要件でちょっと感じたことだが、最初にこの制度はドラッグ・ラグの解消ということを目的としたために、それに向けて頑張っている企業へのインセンティブという性格だった。それが残っていることが企業要件であると思う。ただ印象としては、恐らく国としても、こういった医薬品に対してきちんとした開発して欲しいと要請し、やはり協力してくれる企業に対してそれなりの対応をするべきであるということは当然あると思う。そのときに例えば品目要件の中に開発候補品とか出てくるが、ある意味別立てにしていく。つまり開発を要請してそれが出ていった後でその価格に対してきちんとそれなりの対応をし、それを市場に出ていった後できちんと対応しますという形をしていけばドラッグ・ラグの解消に向けて企業側がそれに協力していこうという話になるのではないか。
遠藤座長:はい、ありがとうございます。そういう意味で最初の企業要件というのは非常に強力なディスインセンティブだった。非常に魅力的な価格維持という権利を失いますよっていうところで最初導入したわけだ。それからいろいろ複雑なことがあって企業指標が入った。
坂巻構成員:遠藤先生が詳しいわけですが、いま話があったように元々これは価格を維持する仕組みだった。価格維持するところで当然企業の利益増えるから、そこは開発コストのかかるところと相殺させるっていうことで価格を維持する仕組みだったというふうに私は記憶している。そうすると今まで議論してきたように、私自身も企業要件を外すことについては賛成です。ただ、そうすると新薬創出っていう部分が全部なくなっちゃう気がする。そこはどうするのかなっていうところ。ちょっと論点に入ってないので、検討する必要があるかなと考えている。
遠藤座長:ありがとうございます。品目要件だけで引っ張るということになるわけですね。元々がドラッグ・ラグ解消というところから出てきたので、そもそもこんな方法でなく、別の加算でドラッグ・ラグ解消はできるじゃないかと、そういう言い方もあるわけです。それらも含めながらいろいろご意見は、できるだけいただければというふうに思っているわけです。
再算定の方でも結構でございます。何かご意見ございますか。それでは三浦構成員お願いします。
三浦構成員:資料ありがとうございました。ちょっと違う観点かもしれないのですが、皆さんが指摘するように特許期間中の薬価を維持することを目指していただきたい。成川構成員が言うように、いろんな医薬品があるかもしれないが、大きな方向性としては薬価を維持するっていうことをメーカーの視点で考えると、やっぱり自分たちが丹精込めて作った製品の薬価が毎年下がるっていうのはちょっと異常な感じがする。世界中どこを見渡しても日本の医薬品業界だけが毎年薬価下がっていく。特許期間が切れて薬価が下がるのは分かるのだが、特許期間中に薬価が下がるっていうのはちょっとおかしいなという感じがある。
普通の流れから考えると、そういうことがあったら誰も投資しなくなるわけで、やはり特許期間中は薬価を下げないっていうのは大前提にすべき。ただ、品種の違いなどもあり、そこはもちろん調整しないと駄目だと思うが、大きな方向性としては一度決めた価格をずっと維持するOTCでも普通の製品でも一般的には一度最初に決めた価格を維持することは基本だ。
医薬品流通でもいろいろ問題点がいろいろある。例えば一次売差マイナスの話があるが、メーカーの仕切価よりも卸が薬局に売る納入価の方が安い「逆ザヤ」というありえない稀有な例がある。メーカー視点で考えると、仕切価を下げると、毎年薬価が下がる。従ってメーカーとしては仕切価を高めに設定し、後でリベートとかアローアンスで形作る。仕切価を下げないということになってくる。企業としてみれば毎年薬価が下がってしまうという恐怖感かどうか分からないが、結果的に仕切価を維持せざるを得なくなる。最近は1社流通品も問題になっている。メーカーは価格を下げたくないので、卸を1社に絞るとか、そういったことに批判があったりもする。何か医薬品流通が非常に何か歪になってきている。
それを考えると、一番の課題は毎年薬価が下がるみたいな感じがあり、大きな方針としては一度決めた医薬品の薬価について特許期間中は下げないみたいなところでやっていくことになれば、医薬品開発が良くなるだけではなく、医薬品流通も非常に楽になる。そう考えると何か大きな方向性としてはもちろん簡単でないことは分かっているが、医薬品開発と同時に何か医薬品流通を改善していくという方向性では特許期間中は薬価が下げないみたいな方向でご検討いただければと思う。
遠藤座長:ありがとうございます。いろいろなご意見がある。現在薬価を下げない方法は新薬創出等加算だけです。その中で新薬創出等加算は現在では品目要件と企業要件がある。企業要件というのは開発の依頼に応じない場合に価格は下げられるということ。さらにはその下げ幅も企業指標というもので、少し段階的に下げているという話。この新薬創出等加算の議論をするとなるとまず企業指標をなくすけれども、企業要件と品目要件は残すという考え方と、企業要件もなくすということは当然企業指標もなくすわけです。その話は先ほどの芦田構成員、香取構成員の発言に近いわけでありまして、さらには品目要件もなくして特許期間中であれば価格を維持するというのが、三浦構成員の発言内容だという理解でよろしいですね?
三浦構成員:そうですね。大きな方向性としてはやはり一番そこは最適だと思う。なかなか難しいところがあるかと思いますが、そういった方向性を何か考えていくべきだ。
遠藤座長:ありがとうございます。確認させていただきました。他にいかがでしょう。菅原構成員どうぞ。
菅原構成員:市場拡大再算定について少し話をしたい。今日の資料の中で薬価制度改革の影響の7枚目のスライドの中に綺麗に書かれている。製薬企業にとって投資コストの回収期間がきちっと守られて、その間にきちっと投資を回収できるのは非常に大事なことだと思う。そういった意味で7枚目の右側の投資コストの回収期間の図に赤い矢印が入っているが、様々な制度上の予見性の変化みたいなものがあると、これが投資回収コスト伸ばしてしまうというようなことがあると思う。そういった意味ではこの市場拡大再算定っていうのはこの予見性を低めるという形で、企業側にとって非常に大きな要因になっているというふうに私自身は理解をしている。
以前、私どもの資料に入れたキイトルーダの例だったと思うが、バイアル数は国内で伸びているにも関わらず市場拡大再算定の影響で売り上げがどんどん落ちていくというような状況が分かった。やはり企業努力に伴う売上やマーケティング努力を全てふいにするような薬価算定のあり方というのはいかがかと思う。先ほど「共連れ」という話もありましたけれども、まさしく他社の売上げの動向や販売動向が自社の売上まで大きく影響を受けてしまうというのは、やはりこの投資コストの回収のリスク以外には何も出ないというふうに思う。
市場拡大再算定が保険財政上の措置という意味では非常に大きな意味があったということは私も十分理解している。しかし、薬価制度をこれから先のイノベーションを評価するという意味においてはあまり適切ではない。既に話があった通り、現下のバイオ医薬品の開発状況を見ると複数薬効、効能を持つものが出ている。上市後にそういったものが分かってきたり再評価の段階でわかってくるというものがある。従って薬理作用の類似薬として再算定の対象リスクが非常に高まるというのも本当にこれから先起こってくると思うので、リーズナブルな効能とか用法用量の追加、この辺りの再算定は当然残すべきだというふうに思うが、それ以外の市場拡大再算定についてはやはり大幅な見直しが必要ではないかと考えている。
遠藤座長:ありがとうございました。小黒構成員の手が挙がっています。
小黒構成員:菅原構成員と同じようなことを申し上げようと思っていた。市場拡大再算定は見直しが必要だと思う。キイトルーダの例であれば、売り上げ自体の規模も下がっていってしまったりする。さすがにちょっとやり過ぎ。最低でも売り上げに規模が維持できるような形で見直しをする必要があるのではないかというふうに思う。
それからもう一つ、論点としては出てなかった話。川原構成員から為替レートの話があったが、円安影響や資源価格の高騰によって、相当原価のコストが上がっている。そういったものをイノベーションの評価という形で医薬品のところで上市後にも話をしているが、その時に消費税を増税したときに一定程度、改定で見直すが、円安など為替変動や国内物価の上昇などに対応するルールが存在しない。我々はGDPデフレーターに連動する形である程度マクロ的にコントロールするとしているが、何らかのルールみたいなものを考えていくということをしないと今後物価が上昇していったときに、相当難しいような状況になっていくのではないかと思う。可能であればその辺も議論いただければと思う。
遠藤座長:ありがとうございました。診療報酬全体、改定率そのものはマクロデータも加味しながら議論はされている。個別のところはなかなか微妙なものがあり、例えば歯科材料みたいなものは市況動向が一定水準を超えると、期中でも価格を変えるみたいなことはやっているが、きめ細かくその為替変動その他物価水準の変動にその期中変動を細かく決めているってことは特段ない。その辺も加味してほしいというそういうようなご意見だったというふうに思う。堀構成員が手を挙げておられますので、よろしくお願いいたします
堀構成員:薬価の特許期間中に配慮が必要だというのはその通りだと思う。ただ、新薬といっても全て同じものではない。そこのところは全てのものとしない方が良い。先ほどから議論になってきた企業要件等については改めて検討が必要だと思う。それから市場拡大再算定ですが資料30ページに書いてあるように、国民皆保険の維持というところでは、財政的な予見可能性を高めるには価値もあったと思う。ただ、「共連れ」など予想していない問題も起きているので解消は必要だと思う。
ただ、これ(市場拡大再算定)を完全に廃止するとか変更するならば、それなりに代わりとなるような財源確保の方法とか国民皆保険の両立をできるような仕組みを同時に考えないといけない。議論は今回ではないのかもしれないが、そこは考える必要がある。要は、市場拡大再算定をもし仮に全くなかったとしたら、医療保険だけどういうインパクトがあったか、先ほど菅原先生も発言していたが、やはりあるにはあったはずなので、それをなくすあるいは変えるならばその代わりに何をするのかっていうのを議論しないといけないと思う。以上です。
遠藤座長:ありがとうございます。市場拡大再算定をどう考えるかですね。現実問題としてここ数年非常に高額な医薬品が上市されたが、そのときの薬剤費の急速な膨張を抑制にこの再算定を使ったわけだ。だからそういうことを考えると、今後どう考えるべきなのかということですね。その辺も議論が必要ということだと思う。他にございますか。はい三村構成員どうぞ。
三村構成員:遠藤座長が先ほど整理していただいた企業要件ですけど、おそらく私の意見はディスインセンティブでなくインセンティブ型企業要件という形で終わっていいかなという意見に近い。企業要件を完全になくすか、企業要件の性格を変えるのか、というような形で事務局に整理していただいて、その点について検討するというのがよろしいんじゃないでしょうか。
遠藤座長:ありがとうございました。はいそれではお待たせをいたしました。成川構成員を挙げておりますね。
成川構成員:市場拡大再算定について一言だけ。先ほど投資コストの回収という議論が出ました。今のルールは企業が自社製品の市場規模予測というものを出します。市場拡大再算定が適用される条件というのはそれを何倍か超えたときに適用される。理論的には投資回収は少し早めに終わっているものもある。これを付言させて頂きたい。やはりそれで下げ過ぎちゃったからと当初の予想よりか下回ってしまったというのは確かに問題だ。あとは全然関係ない企業の製品が売れたから自分の製品もというのも確かに気の毒に思うので、その後やはり見直す必要あるのかなというふうには思っている。以上です。
遠藤座長:どうもありがとうございました。他にいかがでございましょう。ええ。よろしいですか。
では、3番目のテーマに入る。先ほど事務局から説明があったように、これまでの制度のインクリメントなイノベーションでなく、何か抜本的に変えるような議論を頂きたい。製薬団体からの意見を受けてどう考えるかでも結構だ。では、菅原構成員お願いします。
菅原構成員:資料48枚目で、新たなインセンティブのあり方に関する論点をまとめていただいた。一部の発言にあったが、これから高額な薬剤が出てきた時に、社会的には保険に取り込みたいけど、それをどう返していくかが非常に大きな問題になると思う。
そういった意味で保険者にとって単年度の支払いで大きな額を一気に拠出するというのは難しいと思う。償還方法を単年度の支払いではなく、ある程度の期間の中で返していくことができれば良い。C型肝炎治療薬もそうだったが、単年度のインパクトは非常に大きいが、中長期的に言えば、社会的なコストベネフィットは高い。なので、それを取り込むための償還制度のあり方も新たなインセンティブとしてあれば、高額な薬剤を(海外から日本に)持ってこられるのではないかと考える。
遠藤座長:ありがとうございました。坂巻構成員お願いします。
坂巻構成員:今までの議論であったが、従来の方式ではなかなか薬価算定が難しいと言う中で、製薬企業に自分たちで価格を決めさせるというやり方はチャレンジしてみる価値がある。恐らく、その時にどういったものを対象にするのかというのが論点だと思う。事務局案では希少疾患や小児難病の治療薬に限定されているが、新しいモダリティを含めて、もう少し広めに考えてもいいのではないか。
それから製薬企業が価格を自由に付けるといっても何らかの根拠が必要だ。例えばQALYとか社会的な生産性とかだが、価値を製薬企業がこの値段つけたといっても、それをそのまま維持するのかっていうことだ。この資料にもあるが、やはりどこかで見直しをしなきゃいけない。そうすると、市販後にその薬は本当に価値があったかどうかっていうことを評価する仕組みを作る必要がある。リアルワールドデータ(RWD)とかリアルワールドエビデンス(RWE)という言葉もあるが、そういったものと組み合わせることを明示しておく必要がある。
それから、実際にこれを運用するときに、きちんと高い価格がつく仕組みを保証してあげることが必要だ。実際に価格を決めるのは中医協マターになるが、例えば費用対効果評価なんか見てもわかるように、どうしてもその値段を下げる仕組みしか使えないことが往々にしてある。企業が値段をつけるときにも、きちんと評価して、価格を維持する仕組みにするということを是非、事務局案にそのことも含めて記述していただきたい。以上です。
遠藤座長:はい、ありがとうございます。それでは成川構成員どうぞ。
成川構成員:坂巻構成員先生の発言に関連して述べる。薬事制度の話とも絡むが、私自身は条件付き早期承認制度とか先駆的医薬品指定制度に当てはまる医薬品の数が増えて欲しいと思っている。承認まで薬の価値が十分には明らかになってない段階で、多少無理をして薬価をつけて保険が利くようにすること自体は良いことだと思っている。ただ、それを事後に見直す仕組みは必要だ。
ただ、早期承認であっても企業は承認取って上市すると安心して、有効性のエビデンスの蓄積にあまり力を入れないこともある。そういう意味では、薬事的な面からいっても仮承認的な薬について事後にデータを集めてもらうことが必要だ。ですからそこに薬価の引き上げみたいなことも絡めて、うまく回っていくようになれば企業にとってもインセンティブにもなるし、エビデンスの構築にもなる。その辺をぜひ、具体的な対応案を今後また議論させて頂きたい。
遠藤座長:ありがとうございます。具体的な制度設計が非常に難しいけれども新しい試みであるということだと思います。他にいかがでしょうか?
小黒構成員:今まで出た提案は非常に全部重要なものだ。なので、できるだけ検討頂きたい。先ほど堀構成員が指摘されたように医療保険上の財源をどうコントロールするかが必要になってくる。保険財政全体を見ている厚労省の視点としても、その辺の全体のコントロールみたいなのをどうしていくのかっていうことを追記していただければと思う。
遠藤座長:財源の話というのはまた別途行われる。他にございますか。香取構成員どうぞ。
香取構成員:実はここにも書いてあるのだが、いま薬価は年4回収載ですよね。薬事承認したものは必ず全部収載するかっていう話もあるわけだ。いまは制度の前提として来たものは基本的に収載する。もちろん価格が折り合わなくて収載が遅れるものもたまにはある。
ただ、現実に起こっていることは上市しないっていう人(企業)が出てきている。さらに言えば承認を取らないって人(企業)が出てきている。そういう中できちんとそういうものを導入していくためにどうするかという議論になっている。諸外国の例を見てもそうなんですけど、こういう単に薬効だけでなく、モダリティや社会的価値、医療に対する貢献であるとかをきちんと入れて評価するとなると、基準をどうするかっていうこともあるが、それ相応の審査というか保険収載するための審査体制や手続きがいるってことになる。基準もちろん作らなきゃいけない。恐らくそうなると携わる専門職も薬事専門家だけでは済まなくなる。PMDAの体制も考えないといけない。
根本的に考え直せと散々言っておいてどうかと思うが、やはり現実に動かす体制をどうするかを考えないといけない。しかもそんなに時間がなく、どんどん世界標準から立ち遅れている状態の中で、そこは考えないといけない。
それから財源の話だが、平たく言ってしまうと、いま何が起こっているかというと、予算編成や医療費適正化のための、大変言葉悪いが、「財源出しの道具」になっているのが今の薬価制度だ。「それはやめてください」と言わないといけない。まず基本的に僕は言わないといけないと思っていて、その上で仮にきちんとした評価制度を作るってことになると、一般的に言われている医療の技術革新や高度化が医療費の増大の要因になっていて、GDPの中に収まらないで医療費が伸びている。世界中でそうなっている。
今度はそういう意味での技術革新のコンテクストの中で、どうコストコントロールするのか、経済評価をするのかっていう問題になる。やはり財源との関係は考えないといけない。その意味では、小黒構成員の言う通りだろうと思う。
遠藤構成員:ありがとうございます。まさにその新しい制度を入れるとどうしても体制の整備、マンパワーの育成が必要だっていうのは費用対効果を導入することによって一つの例を把握したということだと思う。非常に難しい問題も、現実的には絡んでいるということは間違いないわけですね。ありがとうございました。それでは堀構成員が手を挙げておられます。
堀構成員:いま香取構成員が発言された財源の話、それから収載の話は非常に重要だと思う。改めて議論ができればと思っている。もう一つ資料48ページに書かれている論点も基本的に賛同しているが、この評価方法と評価機関の体制強化というところで他の国ではどう評価しているのか。何かデータがあれば示して欲しい。例えばイギリスのNICEもあると思う。体制評価の機関などを示して欲しい。
また、日本の薬価制度との関係でのインセンティブのあり方の話であると思うが、例えば日本の製薬メーカーが海外市場で日本製品を売っていくやり方もあると思う。要は日本の薬価制度の中で日本の市場をどう魅力的にして、かつ保険と両立するかという話だと思うが、日本で革新的な新薬を作れる製薬企業やベンチャーが海外市場で新薬を売っていくというやり方もあると思うが、そういう議論は有識者検討会で次回以降あるのか?
遠藤座長:堀構成員のいまの質問は、国内のマーケットに企業が医薬品を潤沢に出してもらうことで安定供給に資するという点ではあるわけですが、さらに海外市場での競争力までやるという視点で議論するのかという質問ですね?
安藤課長:この検討会の目的としてはタイトルにもありますように、国内市場にいかに迅速に革新的医薬品を上市するかということを最大の目的としているということはご案内の通りです。いま堀構成員が発言されたように、国産企業の開発力を強化することも当然資するものであると思いますが、そういう意味で今日の議論も関係はしているというふうに思います。
他方で国産企業が海外で実際にどうしていくか、国産産業をどう強化するかという視点については次回以降に産業構造についての議論をする中で多少関係はしてくると思う。堀構成員の御指摘も踏まえてどこまでできるかっていうところについては考える。ただ、直感としては国内市場に迅速導入するというところを最大の目的としていることからすると、若干ちょっと論点としては逸れるかなと感じている。
堀構成員:よくわかりました。単純に財源がという話のときに海外で沢山稼ぐっていう方法もあるのかなというふうに思っただけです。今回の議論の範疇とは直接ずれるということで理解しました。
遠藤座長:はい、ありがとうございました。他にいかがでしょうか? よろしいでしょうか。ありがとうございました。本日は事務局からこれまでのいろいろな質問に対する質問回答および事務局としての現段階での考え方が若干整理されましたので、それに応じて我々もいろいろな視点から意見を申し述べたということです。それでは本日は大体ご意見出尽くしたかと思いますので、議論はこのぐらいにさせて頂きます。
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