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中医協 ゾコーバに留意事項通知、市場拡大再算定で市場急拡大対応へ 再算定の引き下げ率拡大も

公開日時 2023/02/02 04:51
中医協薬価専門部会は2月1日、新型コロナ治療薬・ゾコーバについて年間1500億円超の市場規模になる可能性が否定できないことから、薬価収載に向けて「特例的な対応」の方向性について議論し、診療・支払各側が大筋で了承した。収載時に、留意事項通知を発出し、必要な患者に投与を限り、さらに市場が急拡大した際には市場拡大再算定を活用して迅速な対応を行う。現行制度では、市場拡大再算定の引き下げ率に上限が設定されているが、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)が「引き下げ率の上限を引き上げ、現行ルールよりもさらに大きな引き上げを可能にすることを検討してもよい」と述べるなど、診療・支払各側から引下げ拡大を支持する声があがった。業界ヒアリングを踏まえて、議論を進める方針。

◎安川薬剤管理官「予見可能性の観点から新たなルールを設けないことも重要な視点」

ゾコーバをめぐっては、新型コロナの感染動向の予測が困難な感染症治療薬で、急激な感染拡大などで高額薬剤になる可能性があるとして、同剤に限った特例的な対応を議論した(関連記事)

厚労省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「市場規模が急激に拡大した場合に高額薬剤となる可能性があり、それによって保険医療財政への影響が懸念される。特に対応が必要になる点について限定して特例を設けるべきと考えている」と説明。「薬価制度は国民皆保険の持続可能性とイノベーションの推進を両立させることが重要であり、予見可能性の観点から、必要以上に現行ルールとは異なる新しいルールを設けないことも重要な視点と考えられる。範囲を限定して適用したらどうかということでまとめている」と説明した。

◎類似薬効比較方式での算定「複数の比較薬に基づくなど柔軟な対応も」

厚労省は、この日中医協に前回の議論を踏まえて、具体案を提示した。薬価収載時には留意事項通知を発出し、必要な患者に投与を絞り込むとともに、急速な市場拡大時には市場拡大再算定を用いて適正化を図る。同剤が緊急承認の薬剤であることから、本承認後に審査結果などを踏まえて、改めて薬価を検討する。

薬価収載時の対応としては、類似薬効比較方式での算定に際し、現行制度では、比較薬を1剤選定するのが基本だが、「複数の比較薬に基づき薬価を算定するなどの柔軟な運用を可能とする」とした。類似薬として、対象疾患の類似性から新型コロナ治療薬、対象患者の類似性から抗インフルエンザ薬が想定されるが、いずれを優先するかで算定価格が大きく変動する特殊性があるため。議論の進め方として、比較薬の選定を含め、通常は薬価算定組織での審議を踏まえ、中医協で了承を得る、通常のスキームで臨む方針も了承された。

◎症状、禁忌を踏まえて必要な患者に投与されるよう留意事項通知で周知へ

急激な市場拡大を見据え、薬価収載時に留意事項通知の発出と、市場拡大再算定についての取り扱いについても中医協で議論し、決める方針。

投与に当たっての留意事項として、投与対象患者について「COVID 19 に対する薬物治療の考え方」で、「一般に、重症化リスク因子のない軽症例の多くは自然に改善することを念頭に、対象療法で経過を見ることができる」、「高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討すること」とされていることを踏まえ、「必要な患者に限って投与されるよう、これらの内容を留意事項通知において明示する」とした。また、同剤が禁忌とされる妊婦に対しての投与が確認されたことから、安全性についての指摘があがったことを踏まえ、「併用薬剤や妊娠の有無等の禁忌事項についても確認が行われ、本剤の投与が適切な患者に限って投与されるよう、留意事項通知において明示する」ことを示した。

◎特例拡大再算定 判断に「推計値」を活用 感染状況、投与割合、出荷量で

薬価収載後の急激な市場拡大については、市場拡大再算定で対応する方針。新型コロナ患者の急増は従来の薬価調査やNDBでは迅速な対応が難しい。このため、年間1000億円、1500億円超など年間販売額が巨額になる場合(市場拡大再算定の特例)について、新型コロナの感染状況、本剤の投与割合、出荷量などの情報により算出した、市場規模(販売額)の「推計値」を用いる方針を示した。この推計値は、いわゆる市場拡大再算定の特例にのみ用いる。それ以外の市場拡大再算定は通常通り、NDBや薬価調査データを用いるが、感染動向を踏まえることが難しいため、「直近3か月の市場規模を基本に年間販売額を推計する」ことも提案した。再算定の新薬価の適用については、医療機関や薬局での在庫などの状況を踏まえ、改定薬価の告示から適用まで2~3か月程度の猶予期間を設ける方針も示した。

安川薬剤管理官は、「実際に市場が拡大してから4ヶ月ぐらいの期間で価格の引き下げが適用できるのではないか。現行の再算定の手続きよりも迅速な対応が可能になると考えている」と説明。2~3か月間の猶予期間については、地域や医療機関などにより患者数にバラつきがあることを指摘。在庫を確保して供給を維持したうえで、価格引下げの影響を最小限にするには必要な期間だとした。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も、「猶予期間のなかで、在庫調整できるもの、在庫調整できることの方が稀。拡大再算定等による引き下げは特に高額な薬剤が対象となっていることもあり、薬局・医療機関に大きな影響を及ぼしている」として、猶予期間の必要性に理解を求めた。

◎特例再算定の下げ止め 支払側・松本委員「適用しないことも含めて特例的に厳しく対応を」

市場拡大再算定の特例での引下げ率は「年間販売額が1000~1500億円で、予測販売額比が 1.5 倍以上となる場合」は25%まで、「年間販売額が1500億円超で、予測販売額比が1.3 倍以上となる場合」は50%までと決められている。

診療側の長島委員は、「3か月間のデータからの推計を超えて、さらに市場拡大する可能性も否定できないことや、一度市場拡大再算定を受けた品目は再度の再算定を受けるまで一定期間を要することなどを踏まえれば、本剤のルール設定において特例的な対応として、引き下げ率の上限を引き上げ、現行ルールよりもさらに大きな引き上げを可能にすることを検討してもよい」と述べた。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「保険財政が極めて大厳しい状況にあり、迅速かつ適切に薬価を見直す観点から下げ止めを適用しないことも含めて下げ率や下げ止めを特例的に厳しく対応すべき」と強調した。

再算定の判断に際し、基準額となる収載時の市場規模予測に左右されることになるが、新型コロナ感染症の感染動向などを見込むのは困難であり、設定も難しい。診療側の長島委員は、「現時点の流通条件下で約0.2%の陽性者に投与されていると推定されていることや、安全対策の徹底を含む今後の動向等を踏まえた上で設定すべき」と指摘。「流行型感染症については急拡大だけでなく、旧縮小も想定されると思うが、薬価算定組織においては、薬価収載時の企業規模予測の妥当性をよく吟味していただきたい」と述べた。

◎支払側松本委員 本承認時の薬価は「市場実勢価も参考に」 診療側・長島委員「次期改定の論点に」

本承認時の薬価について支払側の松本委員は、「医療現場の評価にあたります市場実勢価格も参考にして慎重に判断させていただきたい」との考えも示した。

このほか、支払側の長島委員は、「今後、緊急承認された医薬品の本承認における薬価の再算定方法や、パンデミックを来す感染症のような患者数推計が困難な疾患に関する薬価算定方法等について、次期改定に向けた検討課題としての対応をお願いしたい」と述べた。
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