日米欧製薬3団体 「中間年改定廃止」訴え 25年度薬価改定へ新創品累積額控除、市場拡大再算定を牽制
公開日時 2024/11/18 04:52
製薬協、PhRMA、EFPIAの日米欧製薬3団体は11月15日、石破政権の発足を踏まえ、「中間年改定の廃止、制度改革の後退をやめる」ことを改めて訴えた。声明では2024年度薬価制度改革を歓迎したうえで、「いまだ革新的医薬品の約半数が毎年の薬価引下げの対象となり得る状況が続いている」と指摘。25年度薬価制度改革に向けて、これまで中間年改定では適用されてこなかった新薬創出等加算の累積額控除や市場拡大再算定が議論の俎上にのぼる中で、「イノベーションを阻害する政策は、24年度薬価制度改革のポジティブな機運に逆行するものであり、決して行うべきではない」と強調した。
◎イノベーションと患者アクセスを促す薬価制度の必要性、改めて再確認すべき時
声明では、「これまで、ほぼ10年の間、度重なる薬価算定ルールの変更や特許期間中の新薬の毎年薬価改定により、日本の創薬イノベーション・エコシステムの環境が競争上不利な立場に置かれていることについて懸念を表明してきた」と説明。新薬創出等加算の見直しがなされた24年度薬価制度改革について、「これまで行われてきた政策のネガティブな流れを変える重要な第一歩」として歓迎。そのうえで、「国際的に競争力がある創薬イノベーション・エコシステムに転換していくためには、日本は改革の歩みを止めず、決して後退してはならない」と強調した。
そのうえで、中間年改定の廃止などを改めて訴えた。薬価制度については、「日本は、イノベーションと患者さんへのアクセスを促す薬価制度の必要性を改めて再確認すべき時」と強調した。
なお、財務省主計局は11月13日の財政制度等審議会財政制度分科会で、2025年度薬価改定について、「原則全ての医薬品を対象にして、実勢価格に合わせた改定を実施すべき」と主張。適用ルールについても、新薬創出等加算の累積額控除や市場拡大再算定など「既収載品の算定ルールについて、全て適用すべき」としており、今後年末の予算編成過程で議論が加速することになる。
◎官民協議会で省庁横断的な常設組織で国家戦略とKPI設定を
「省庁横断的な組織のもと、新たな革新的医薬品産業に関する国家戦略の策定」する必要性も強調した。「適切な政策とプランがあれば、日本は、ドラッグ・ロスを防ぎ、創薬分野における世界のリーダーシップを取り戻し、経済成長を促進させる国内外の革新的医薬品産業の研究開発投資を呼び込む可能性がある」と表明した。そのうえで、外資系企業の人材や外国資金の呼び込みに向け、外資系の製薬企業やベンチャーキャピタル(VC)をメンバーに含む「官民協議会」を25年にも開き、議論を重ねる方針であることにも触れた。「来年の官民協議会においては、省庁横断的な常設の組織のもと、国家戦略とKPIを策定し、また、国内外の革新医薬品企業との定期的かつ実りある議論を行う場を設置することを提言する」と強調。「私たちは、共通の目標を達成するため、日本政府のパートナーとして貢献していく所存」としている。
◎製薬協・木下理事長「薬価差が割れている状態での中間年改定の役割はもう終わった」
製薬協の木下賢志理事長は11月14日の理事会後の会見で、毎年薬価改定が16年末の4大臣合意で決定されたことに触れ、「その時点では、平均乖離率は8%を超えており、薬価差が生じていたことが問題視されていた」と振り返った。一方で、24年の薬価調査では平均乖離率が6.0%に圧縮されてきていることに触れ、「薬価差が非常に割れている状態での中間年改定の役割はもう終わったと思っている」と述べた。そのうえで、物価・賃金が上昇するなかで、「薬価は公定価格で物価や賃金の上昇分を吸収することはできない。そうすると、コストカットしかなくなり、生産体制や、安定供給など様々な問題が生じる。25年度の中間年改定について廃止をお願いしたいという考え方は変わっていない」と述べた。