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住友ファーマ・野村社長 国内の早期退職者募集「考えてない」 糖尿病領域のプレゼンス活かした提携模索

公開日時 2023/02/09 04:51
住友ファーマの野村博社長は2月8日、大阪で開いた記者会見で、厳しい業績が続く日本市場で早期退職者を募集するかについて、「今は考えていない」と明言した。同社MRはKOLと強い関係を築き、他社提携品もしっかり育薬してきたとの認識を示した上で、「当社の能力の高い販売体制は、当社のひとつの財産。何とか活かしていきたい」と強調した。これまでに培った糖尿病領域のプレゼンスを活かした新たな提携を模索しているとも述べた。

同社の国内医薬品事業の業績は、2020年度は売上収益1525億円、コアセグメント利益243億円、21年度は同1499億円、196億円、22年度予想は同1261億円、81億円――と右肩下がりに推移している。特にコアセグメント利益は20年度まで200億円以上をキープしていたが、22年度は100億円を切る厳しい見通しになっている。

22年度は、約8%台半ばの薬価改定影響に加え、ファブリー病治療薬・リプレガルは武田薬品に、2型糖尿病治療薬・トルリシティは日本イーライリリーにそれぞれ提携終了により販売移管したため、業績に大きな影響が出る。特にトルリシティは22年度の期初に310億円の売上計画を立てたが、22年12月末日で契約終了となった。結果、22年度の同剤の売上は248億円にとどまり、23年度は売上がなくなる。

◎精神神経領域事業 オムニチャネル型情報提供で顧客満足度向上、売上最大化へ


野村社長は、国内医薬品事業の立て直しについて、▽トレリーフ、ラツーダ、ロナセンテープなどを手掛ける精神神経領域における専任MR、オンラインMR、XRなどのデジタルツールを活用したオムニチャネル型情報提供活動の推進による顧客満足度の向上、▽24年度に上市予定のパーキンソン病を対象疾患とする他家iPS細胞由来製品、▽精神神経領域のフロンティア事業の新製品(MELTz手指運動リハビリテーションシステムなど)の貢献、▽糖尿病領域のプレゼンスを活かした新たな提携――などを通じて立て直していく構えをみせた。

田口卓也営業本部長は会見で、2型糖尿病治療薬・ツイミーグに触れ、「私の想定以上に伸びている。糖尿病領域の柱にしていけると思う」と述べ、ツイミーグの早期最大化も国内事業の立て直しの重要なミッションとの考えを示した。

◎新中期計画を4月に発表予定 自社創製品の開発・上市成功が柱の一つに

同社は4月に、23年度を初年度とする5カ年の新中期経営計画を発表する予定。ラツーダの米国特許が今月で満了することによる“ラツーダクリフ”の克服と、新たな成長への道筋をどのように描くかがポイントとなる。ラツーダは年間売上2000億円以上の同社の最主力品。

野村社長はこの日の会見で、米国ラツーダの特許満了後の新たな成長に向けて、前立腺がん治療薬・オルゴビクス、子宮筋腫及び子宮内膜症の治療薬・マイフェンブリー、過活動膀胱治療薬・ジェムテサ――の新製品3品目の早期最大化に取り組むほか、自社創製品の開発及び上市成功に注力する考えを示した。これらが新中期計画の柱のひとつになるとみられる。

◎自社品ulotaront 統合失調症で24年度に米国、26年度に日本で上市目指す

野村社長は、オルゴビクスなど新製品3品目について、「米国ラツーダの独占販売期間終了後の成長エンジンとする」とし、「3剤にはしばらく頑張ってもらわないと困る。(特許が残存する)30年代半ばまで収益の柱になってもらう」と話した。ラツーダクリフによる減収影響の最小化には、これら3品目の早期最大化が重要との認識を示した格好だ。

自社創製品の開発・上市に関しては、統合失調症、大うつ病補助療法、全般性不安障害を対象疾患に日米などで開発中のTAAR1アゴニスト「ulotaront」(開発コード:SEP-363856)に期待を寄せ、「グローバル展開による大型化に注力する」と述べた。まずは統合失調症で24年度に米国で、26年度に日本での上市を実現し、その後に適応拡大していく考え。他家iPS細胞由来製品(パーキンソン病など)の臨床開発も促進し、従来の医薬品では解決できない疾患に対するソリューションの提供を目指す。

◎「自社品で我々の成長を循環させる。それが我々のこれから5年間の使命」

初期開発品の開発促進も重要なテーマとする考えだ。野村社長は、「30年代半ば以降を支える自社創製品の成長ドライバーを創出する」と意欲を示し、「5年間の中期計画でやらないといけないのは初期開発品の成功確率を高くすること。第1相や前臨床の初期開発品をしっかり見極めて開発し、マーケティングやコマーシャルも成功させることが我々にとっての必達となる」と強調した。

自社創製品の開発・上市・マーケティングに注力するのは、提携品では契約終了・販売移管による業績へのリスクが大きく、また、導入したがん幹細胞性阻害薬・ナパブカシンの開発失敗、パーキンソン病治療薬・キンモビの営業不振――といった事例が相次いだため。野村社長は、「自社品を創製し、自社品で我々の成長を循環させる。それが我々のこれから5年間の使命だ」と述べた。
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