
Meiji Seika ファルマは7月10日、同社とダイトが中心となって進める“新・コンソーシアム構想”に向けた協議に辰巳化学が参画したことを明らかにした。さらに2社が参加を表明し、品目統合に向けた協議を進めているという。小林大吉郎代表取締役会長は同日開いた記者説明会で、「具体的な品目統合の中でメリットを実感してもらうということが先だと思っている」と説明。「最終的には機能統合法人を設立できればいいと思っているが、最終系を我々が主導するのではなく、現在の経営資源を有効活用しながら賛同する会社を増やすのが一番だ」と述べ、参加企業の合意形成の重要性を強調した。
◎生産効率、品質管理レベル向上視野 人材育成も 多品目少量生産解消へ
同社の提唱する新・コンソーシアム構想は、各社の既存アセットを有効活用して生産拠点を整理し、生産の効率性を向上させることで、安定供給に寄与することが主眼となっている。第一段階として、品目単位の製造所集約を進め、第二段階には品目承継による売上拡大/屋号の統一、参加企業の拡大、最終形としては参加企業の合意形成を前提に、最適化を図るとしている。生産効率を高めるだけでなく、品質管理レベル向上も視野に入れるのが特徴。教育体制を確立し、GMP人材の育成なども手がけたい考えだ。こうした取組みを通じ、現行の供給不安の一因とも指摘されている“多品目少量生産”を解消し、安定供給体制構築を目指す。体制整備に際しては、後発医薬品製造基盤整備基金など政府の支援を活用することも視野に入れる。
◎「それぞれ持っているアセットを効率よく統合できれば十分供給できる」
今年6月4日には、ダイトと新・コンソーシアム構想実現に向けた協議を開始したと発表した。今回辰巳化学の参画も発表され、複数企業間で品目を選定し、製造所の集約に向けた協議を進めている。
新・コンソーシアム構想では、既存のアセットを活用するのが特徴。2018年度から薬価毎年改定が導入される中で、薬価引下げが続くなかで、「多品目少量生産という構造的課題を放置するわけにはいかない。生産キャパ自体は供給できないということはない。それぞれ持っているアセットを効率よく統合できれば十分供給できる」と強調した。品目統合に際しては、各社の契約条件などがハードルになっており、こうした課題を協議により解決を図りたい考え。
◎経済合理性から最終的には機能統合法人も選択肢に
一方で、コンソーシアム構想を提唱した当初は設立を目指していた機能統合法人について、新・コンソーシアム構想では、「必ずしも機能統合法人を設立することを目的とはしない」ことを明確にしている。小林会長は、ダイトの松森浩士代表取締役社長兼CEOと対話するなかで、機能統合法人を設立することのハードルの高さが議論になったと明かした。企業に参加を呼びかける中で、「構想はいいけれども、今のビジネスに影響あるんじゃないかとか、踏み切れないなどの声もあり、実際に参加企業も集まらなかった」と振り返った。
そのうえで、「品目統合を第一段階としてエントランスを低くして参加メーカーを募り、実際に話し合って、品目統合を成功させてから次のプラン、と納得して進めていけば最終的に経済合理性からそういう形(機能統合法人)になるのではないか」と見通した。
◎後発品市場は「政策誘導で成り立った」 「個社の利益超えてお返しすべきとき」
新・コンソーシアム構想について、「具体的な品目統合の中でメリットを実感してもらうということが先」と話す小林社長だが、新・コンソーシアム構想のメリットについては、「会社が度を外れて儲かるとかそういう話ではない」と説明。政府の後発品使用策により、後発品市場が1兆円規模まで成長したとして、「政策誘導で成り立った業界。個社の利益を超えて、今度はお返しするときだ。コスト負担を一定程度しなければならないということ」と述べ、安定供給体制構築に向けて、いまが決断の時との考えを示した。
◎最低薬価などの要望「その前に生産効率を高めなければ相談にも乗ってもらえない」
小林社長は、後発品の安定供給に向けて、「(最低薬価の引上げなど)コストの手当てが必要であれば政府に言わなければならないが、その前に我々が生産効率を高めないと、相談にも乗っていただけない」と話し、まずは製薬企業が課題解決に向けて主体的に動くことが必要との考えも示した。
今後の再編の方向性については、製薬メーカーや医薬品卸の統合が進んできたことに触れ、「ここ2、3年で品目統合が一定程度進むと思う」と見通した。
◎永里社長 26年度営業利益400億円達成に意欲 不眠症薬、血液製剤、「大型品のAG」で引上げ

同社の代表取締役社長に今年6月に就任した永里敏秋氏は「2026中期経営計画の最終年度は何とか営業利益400億円に近づけるよう、Meiji Seika ファルマ、KMバイオロジクス一体となって取り組んでいる」と意気込んだ。25年度に掲げる売上高2547億円、営業利益260億円の目標達成に手応えをみせたうえで、さらなる成長に注力する考え。
具体的には、大正製薬と販売提携契約を締結した不眠症治療薬候補・ボルノレキサント水和物の上市や血漿分画製剤の販売、オーソライズドジェネリック(AG)の販売などで成長を押し上げたい考えだ。
血漿分画製剤については、KMバイオロジクスが製造するボルヒール組織接着用、アルブミン25%静注25g/100mLの2剤を25年4月からMeiji Seika ファルマが販売。600人いるMRを活かし、製造から販売までを明治グループ内で一貫した体制を整備し、サプライチェーン全体でのサービス向上や競争力の強化につなげたい考え。26年からさらに1剤を追加する方針。AGについては、「まだモノも相手も言えないが、大型の製品」であることは明言した。
◎グローバル研究開発型企業へ アジア市場中心に既存品の拡大加速も
「グローバル研究開発型企業」を目指すことも明言。「研究開発力、技術力で勝てなければ世界では生き残れない」と述べ、米ボストンオフィスなどを通じて創薬基盤を強化する考えも示した。既存品についてもアジアを中心に展開を加速させる考えも示した。
なお、永里社長は、明治ホールディングス取締役執行役員COO(医薬品セグメント)、KMバイオロジクス代表取締役会長を兼務している。