厚生労働省は４月４日の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」に、価格代行業者との取引が全体の約１割（11.7％）を占めているとのデータを提示した。ベンチマークを用いた強行な値下げ交渉や、医薬品特性・地域特性を考慮しない交渉など、価格代行業者を通じた取引の「問題点」を指摘した。検討会では、ボリュームを無視して“値引き率”だけで交渉が行われていることを問題視する声があがり、薬価改定方式を含めた課題解決の必要性が指摘された。三浦俊彦構成員（中央大商学部教授）は、「価格交渉代行の問題点として値下げ圧力という話があるが、価格交渉代行業者限った話ではなく、大手調剤チェーンとか、調剤部門を持っている大手チェーンも全く同じことをやっている」と述べた。

価格代行としては、医療機関や薬局に代わり、医薬品卸と価格交渉を行う、ボランタリーチェーンやコンサルタント業者が価格交渉を行っている実態がある。この日の有識者検討会に厚労省は、価格交渉代行のメリットと問題点を提示。メリットとしては、医療機関や薬局は直接価格交渉を行う負担がなくなり、小規模の薬局は共同購入を行うことにより購入規模が大きくなり、その分、価格値下げ交渉が可能となると説明。医薬品卸にとっても、価格交渉の相手が限定されることから、契約手続の効率化が図れるとした。

◎香取構成員　ベンチマーク用いた交渉の常態化を指摘

一方、問題点としては、購入規模が大きくなるため、値下げの圧力が強まる。成功報酬を得
るため、ベンチマーク等を利用して強行に値下げ交渉を行う場合もあることや、医薬品の特性や地域的要素を考慮しない一律の価格となる場合があると指摘した。厚労省が書かう交渉代行業者に対し、２月に流通改善ガイドラインを周知している。

香取照幸構成員（兵庫県立大大学院社会科学研究科特任教授）は、「値引率だけで交渉して、契約上のボリュームを決めない交渉となっている」と述べ、ベンチマークを用いた交渉が常態化している実態を指摘。その結果、「例えば新薬のような割と大きめの薬価差を想定していた薬があまり使われないと、全体としてボリュームが出ないということになる。そもそもボリュームについて契約をしてないので、事後的にその価格を調整して、また価格を量的に変える。あるいは医薬品が使用されずに余ると、医薬品卸に引き取らせることもある」として、「きちんと実態を踏まえて詰める必要がある」と指摘した。価格代行を法的に縛ることが難しいことも指摘されるなかで、「おそらく禁止してもなくならないだろうし、代行とか共同購入自体は禁止できないので、そもそもの価格形成と、薬価制度そのものに起因する部分がかなりあって、やはり今の薬価の改定方式をきちんと根っこから見直さないと綺麗にならない」とも指摘した。

これに対し、安藤公一医薬産業振興・医療情報企画課長は、「値引率だけで価格交渉ができてしまっているケースがあると承知している。予定数量が当初予定したものから大きく乖離したことに伴って当初期待していた薬価差の薬価差率ですとか薬価差の額が必ずしも得られない場合、それを埋めるための単価の変更というものが再び行われるということも流通現場の実態としてあるやに、うかがっているところだ。この問題につきましては我々も課題としてしっかり受けとめさせていただいて、今後作成する報告書にも問題提起させていただきたいと思う」と受けた。

◎三浦構成員　価格交渉代行業者以外に「大手のチェーンもバイイングパワーでやっている」

三浦構成員は、「バイイングパワーに基づいて価格交渉し、言葉は悪いのですが安く買い叩くことをされている。そういった意味では価格交渉代行業者だけではなくて、あと医療機関のコンサルする会社あるわけですけれども、そういった会社だけではなくて、大手のチェーンも同じようにバイイングパワーでやっている」と述べた。そのうえで、「バイイングパワーでやるというのは全ての業界である話だが、問題点は薬価差や小売りマージンを取りすぎている」と指摘し、圧縮する必要性に言及した。さらに、「薬価差をたくさん取る、さらに大きくさしている単品総価交渉が問題点だ」との見解を表明。大手ボランタリーチェーンであるメディカルシステムネットワークの実名をあげ、「単品単価をやって流通近代化をやっているっていう意味では、たぶんいい会社だと思う」と指摘。大手調剤チェーンでも単品単価交渉を行っている企業もあるとして、単品単価交渉を行う企業には「インセンティブ」、そうでない企業には「ディスインセンティブ」をすることが必要との見解を示した。