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アッヴィ・フェリシアーノ社長 「30年までに売上倍増、2000億円目指す」 CRA内製化で開発迅速化

公開日時 2023/05/31 04:51
アッヴィ合同会社のジェームス・フェリシアーノ社長は5月30日、会見に臨み、「2030年までに売上高倍増、2000億円を目指す」と表明した。22年売上は1001億円(前年比1.1%増)だった。今後、ヒュミラで培ったイミュノロジー(免疫疾患)領域での強みをリンヴォックとスキリージで受け継ぎ、両剤を新成長エンジンに育成。加えて、がん領域や精神・神経疾患領域の活動を強化し、売上目標を達成する考えを示した。また、CRA(臨床開発モニター)内製化の取り組みが新薬開発の迅速化などにつながっているといい、これも成長への自信を深める根拠となっている。

同社は13年に事業を開始し、23年に10周年を迎える。13年をベースとすると、22年の売上は1.67倍、従業員数は2.43倍と急成長した。臨床試験数は13年の14試験が22年に82試験へと拡大し、23年は90試験を予定。臨床試験の9割以上は国際共同治験で実施している。

フェリシアーノ社長は、「この10年で築いた成長基盤をもとに、既存製品の最大化と多様で豊富なパイプラインの開発を加速することで、30年までに売上倍増を目指す」と述べた。

◎ヒュミラ、シナジスの2本柱でスタート 10年間に新薬相次ぎ投入

この10年間の事業の急拡大は、新薬を相次ぎ上市できたことが主因となる。当初はヒュミラとシナジスを2本柱とする企業だったが、その後、経口JAK阻害薬・リンヴォックやヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤・スキリージ、C型肝炎治療薬・マヴィレット、血液がん領域の経口BCL-2阻害薬・ベネクレクスタなどを上市。さらにパーキンソン病を対象疾患とするレボドパ含有製剤として初の皮下投与製剤となるヴィアレブは現在、発売準備中となっている。

日本法人の売上はヒュミラやマヴィレットといった大型品により、18年に初めて1000億円の大台を突破した。19年、20年も1000億円台をキープ。21年はシナジスのアストラゼネカへの販売移管や薬価改定影響により989億円となったが、22年に再び1000億円の大台にのった。22年の主な成長ドライバーは適応追加もあったリンヴォックとスキリージだが、製品別売上は開示していない。

◎ヒュミラ、リンヴォック、スキリージで「イミュノロジー領域でのリーダーシップを高める」

フェリシアーノ社長は、21年を業績の底として右肩上がりの成長を目指す姿勢を見せ、23年以降の持続成長に向けてイミュノロジー、肝疾患、がん、精神・神経疾患の各領域で戦略を語った。

イミュノロジーでは、「ヒュミラで築いてきたヘリテージを大切にしながら、ヒュミラ、リンヴォック、スキリージの3製品の提供を通じてイミュノロジー領域でのリーダーシップを高める」と強調した。既にバイオシミラーが参入しているヒュミラは、6月からの単独展開により利益を確保。現在6つの適応を持つリンヴォックは8つの適応追加の開発を進め、6つの適応を持つスキリージは潰瘍性大腸炎の適応追加や乾癬の小児適応の開発を進める。これらにより両剤の価値最大化を図り、新たな成長エンジンとする。

◎固形がんにも参入へ 卵巣がん、非小細胞肺がんの新薬候補が第3相試験実施中

肝疾患領域では「マーケットリーダーとしてC型肝炎の撲滅に尽力する」とし、「一人でも多くの患者の治療につなげる」と話した。

がん領域では、ベネクレクスタで血液がん領域の5つの適応追加の開発を進めるほか、「固形がんにも注力していく」と表明した。固形がんを対象とする開発後期品には、PARP阻害薬・ベリパリブ(対象疾患:卵巣がん、開発ステージ:P3)やc-Metを標的とするADCのtelisotuzumab vedotin(同:非小細胞肺がん、P3)があり、telisotuzumab vedotinは厚労省から先駆的医薬品に指定されている。栁川政美開発本部長はtelisotuzumab vedotinについて、「欧米に先駆けて日本で最初の申請・承認を目指す。現在全速力で開発を進めている」と述べた。

◎精神・神経疾患領域が「今後の成長を支える重要なフォーカスになる」

精神・神経疾患領域では、「ヴィアレブの上市成功に取り組む」(フェリシアーノ社長)ほか、片頭痛予防や統合失調症の新薬開発も加速させる方針。フェリシアーノ社長は、「精神・神経疾患領域のフランチャイズ拡大に向けて取り組みを進める。この領域が今後の成長を支える重要なフォーカスになる」と述べ、同領域への期待の高さをうかがわせた。

なお、同社は注力領域について、これまで▽C型肝炎、▽神経変性疾患、▽免疫疾患、▽血液がん――の4つとしていた。23年以降はこれらに加え、23年第3四半期に予定しているアラガン社の統合によってエステティック(美容医療)及び医療用眼科領域のほか、精神領域、固形がんも注力領域に加える。

◎CRA内製化は8年前から サポートスタッフ含め200人超の体制に

栁川開発本部長は会見で、開発本部の人財戦略を紹介し、8年前からCRAの内製化に取り組んできたことを明らかにした。CRA業務はCROに委託するケースが多いが、CROでの人材確保に加え、契約締結・教育と時間がかかることも少なくない。このような背景もあって同社はCRAの内製化を進めた。現在CRAと、文書作成などをサポートするスタッフを含め200人超の体制となっている。

◎若手のモチベーション向上、優秀人財の応募も

栁川本部長は、「社内CRAによる柔軟な人財活用により、(医薬品開発の)迅速な対応と、非常に高いモチベーション、高品質な臨床試験につながっている」と述べ、臨床試験数が安定して増え続けた要因のひとつがCRAの内製化だとの認識を示した。

CRA内製化の効果は少なくなく、臨床試験での個人の経験・知識が組織の「組織知」として蓄積されるメリットもあるとした。さらに「一番重要な点」として、経験を積んだ社内CRAが関係部署やより重要なポジションに異動して活躍し、その活躍している姿を若手が見てモチベーションをさらに高める好循環が生まれていることを挙げた。優秀な人財の応募にもつながっていると言い、「CRAの内製化はアッヴィ開発本部の最大の特長。製薬企業で正社員を目指す優秀な人財が集まる」と述べた。

新規領域の開発プロジェクトが増えているため社内CRAの体制を強化しており、「例えば統合失調症の開発が始まっているが、領域に特殊性がある。この領域の臨床試験を経験した方を社外から積極的に採用している」とも語った。
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