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厚労省・城医薬局長 米バイオベンチャー誘致でドラッグ・ロス解消「まずは審査の誤解を解くところから」

公開日時 2023/11/16 07:00
厚生労働省の城克文医薬局長は11月15日、「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」で、米国のバイオベンチャーに日本へ目を向けてもらうために、「審査体制のやりにくさに対する誤解をまず解くところからやらないとダメだ」との認識を示した。ドラッグ・ラグ/ロスの原因として、創薬の担い手が米国のバイオベンチャーへとビジネスモデルが転換したことがある。特に、日本の薬事・薬価制度に対する誤解が日本市場を遠ざけているとの指摘がある中で、厚労省はPMDAの米国事務所を設置し、英語で薬事制度の情報発信や無料相談を行う事業に予算要求を行っている。城局長は、「まずはPMDAに実際にアメリカに出て行って直接話ができる、少なくともそこで日本の制度についてちゃんと間違いのない発信ができるというところから始めたい」と話した。

◎PMDA米国事務所設置 英語で情報発信、無料相談も対応

ドラッグ・ラグ/ロスの理由として、創薬の担い手が米国のバイオベンチャーへと移ったことが指摘されている。一方で、これまで厚労省やPMDAから海外のバイオベンチャーに対して、国内の開発を促すような積極的な活動は行われておらず、厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」では、「海外ベンチャー等に対し、日本の制度を伝達」する必要性が指摘されていた。

厚労省は、米国などにおいて、英語で、日本の薬事制度の情報発信、薬事の相談対応を無料で行う事業に予算要求を行った。特に、「未承認薬・適応外薬検討会議」で開発公募された品目を重点的に対象とし、日本での治験実施を含めた薬事相談に応じる。相談窓口の拠点として、PMDAの米国事務所を設置する。

◎「日本に対して目を向けていないバイオベンチャーに、どう目を向けてもらうか」

「日本に対して目を向けていないバイオベンチャーに、どう目を向けてもらうか。彼らにとってはアメリカ市場が一番で、アメリカで成功すればそれで成功だ。そしてその次に当然世界市場から見ればEUに持っていってそれで世界の大半が抑えられる。しかも、自前で全部そこまでやる気はなく、どこかと提携してやろうと思っている。この人たちに日本市場に最初から手をつけておくと後々“お得だよ”、“会社や製品が高く売れるよ”こういうふうに持ってもらうためにどうするか」-。城医薬局長は、こう問題意識を表明した。

課題解決の足がかりの一つとして、「審査のやりにくさに対する誤解がまずあるだろう。まずこの誤解を解くところからやらなければダメだという発想。まずは、PMDAに実際にアメリカに出て行って直接話ができる、少なくともそこで日本の制度についてちゃんと間違いのない発信ができるというところから始めたい」と話した。他の施策もあわせて、「しっかり実現できればと思っている」と強調した。

◎「新興バイオファーマに直接会って話を聞いたことがどれくらいあるのか」

構成員からは、海外ベンチャーへの積極的な情報発信に期待を寄せる声が相次いだ。芦田耕一構成員(INCJ 執行役員ベンチャー・グロース投資グループ共同グループ長)は、「アメリカで、ドラッグ・ロスの原因になっているようなベンチャー企業というか、新興バイオファーマ(EBP)の方々に、どんどん会って話を聞いていただきたい」と話した。「これまでEBPに直接会って、“なぜ日本に来ないのか”、話を聞いたことがどれくらいあるのか」と問題を投げかけた。構成員を務めた有識者検討会を振り返り、「製薬協、PhRMA、EFPIAなどから話をうかがったが、アメリカのEBPは、どの団体にも所属していない。だから直接EBPの話を聞いたということはないと思う」と指摘し、実際にアミカスセラピューティクスの日本法人からは「やはりメガ・ファーマの話と違うお話が聞けた」と話した。このために、現地に赴任するPMDAの「マインドセットの切り替え」の重要性を指摘した。

中村秀文構成員(国立成育医療研究センター開発企画主幹)は、日本に足場のないEBPが日本を理解する難しさを指摘し、「日本で開発に関わったアメリカ人で向こうに戻られた方は、どうしたら日本で開発が進むかわかっている。開発の人同士ではこういうことだよとか説明できるので、ぜひそういった方々とコンタクトを取ってほしい」と話した。

柳本岳史構成員(ボストンコンサルティンググループ マネージング・ディレクター&パートナー)は、「多くのベンチャーは、資金も人的なリソースも、グローバル展開のケイパビリティもない」として、「そこを補完する資金や、実際に導入も含めて担ってくれる製薬企業にも働きかける」必要性を指摘した。

◎リアルでのネットワークが重要 会議後のビールから生まれるチャンス

中島直樹構成員(九州大病院メディカル・インフォメーションセンターセンター長)は、海外学会に出席する中で、「会議が終わったらみんなでビールを飲んで話すことをしている。。そういうところから、情報発信も含めて色々なことが生まれてくると思う」と話した。特に中国が積極的な一方で、日本からは人が来ないことに不安感を吐露した。中村構成員も、「会議にPC(オンライン)じゃなく対面(リアル)で会って、その後のネットワーキングで“日本でもできるんだね”と、“じゃあ日本でもやろうか”という話が出てくる」と話し、リアルでのネットワークの重要性を強調した。

◎中医協の業界ヒアリングがそのまま海外に 海外からの誤解をひも解く必要性も

川上純一構成員(日本薬剤師会副会長)は、海外から薬価について尋ねられるとして、「業界側からの見方に凝り固まっている場合もある」と指摘。「“頑張って日本へ持っていっても結局類似薬と同じ値段しか初回収載時につきませんよね”とか、“その後、結局引き下げとか市場拡大再算定でどんどん下げていかれて、企業としての予見性がありませんよね”と言われる。中医協の薬価専門部会の業界ヒアリングの資料をそのまま英訳してそれをそのまま“日本の真実”だと思われているようなところがある」と指摘。「それは一つの見方かもしれないが、日本の薬事制度と薬価制度に関して誤解されている部分とをちゃんと紐解くような何か追加的な説明があってもいいのではないか」との見解を示した。「制度の紹介という情報発信の強化だけでなく、能動的な情報提供」の必要性を強調した。


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