【中医協薬価専門部会 12月13日 議事要旨 令和6年度薬価制度改革の骨子(たたき台)の質疑】
公開日時 2023/12/14 06:30
中医協薬価専門部会は12月13日、令和6年度薬価制度改革の骨子(たたき台)について事務局からの説明を受け、診療・支払各側で質疑を行った。本誌は診療・支払各側の発言について議事要旨として公開する
(※事務局説明は略)
安川部会長:はい、ありがとうございました。それではただいまのご説明についてご質問ご意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。では長島委員お願いします。
長島委員:ありがとうございます。全体としまして、今までの議論が整理されており、たたき台の取りまとめに尽力された事務局に感謝いたします。その中でいくつかの点についてコメントします。まず資料「薬―1」(令和6年度薬価制度改革の骨子・たたき台)1ページの「第1、基本的考え方」です。
2つ目の矢羽根にある安定供給については、これまでも申し上げてきた通り、産業構造の転換は後発医薬品企業だけが取り組む問題ではありません。医薬品業界全体で取り組むべき課題であり、3つ目の矢羽根に記載された内容も必要と考えます。
続いて、資料2ページの「新薬創出・適応外薬解消等促進加算の見直し」についてです。今回の新薬創出等加算の見直しに対する全般的なコメントとして、先日の業界ヒアリングでは、制度を見直してもすぐにその効果が表れてくるとは予想しがたいということでした。しかしながら、薬価改定の影響に関しては、今後の薬価制度改革における議論において必要なことであります。したがって今回の新薬創出等加算の見直しをはじめとする新薬に係る改正内容については、資料10ページの「第3 その他」の(1)にあるように、ドラッグ・ラグ/ロスの解消等の医薬品開発にどのような影響、特に効果が出ているかしっかり検証していただく必要があると思いますので、よろしくお願いいたします。
続いて、資料4ページの「(4)新薬の薬価改定時における評価」については、患者負担増への影響等を配慮して1.2倍を上限とすることについては、一つの指標としてありうるのではないかと思いますが、この影響については、今後も検証していただくことが必要と考えます。
資料5ページの「新規モダリティのイノベーションの評価」について、再生医療等製品は品目がまだ少ないことから、医薬品あるいは医療機器の算定方式に準じて検討がされているところであり、いずれは整理されていくべきものと考えます。
8月27日の薬価専門部会では、引き続き事例を集積し、再生医療等製品の特徴を踏まえた薬価算定のあり方について検討することに賛同しているところです。これとは別に、医薬品における新規モダリティに関しては、業界からの要望も踏まえ、議論を進めていくことで良いかと思います。ただ、医薬品と再生医療等製品については制度上、別の議論となりますので、現時点では混ぜて議論するべきではなく、医薬品は医薬品、再生医療等製品は再生医療等製品として明確に区別していただくことが必要と考えますが、事務局の見解を教えてください。
また、「① 原価計算方式における開示度向上」について引き続き検討を進めることに異論はありませんが、再生医療等製品については、現時点で国内開発品の方が多いのではないかと思います。それらについても開示度が低いのでしょうか、教えてください。
資料8ページ「(1)後発品の安定供給が確保できる企業の考え方」についてです。総論として安定供給を推進する観点から、今回の薬価制度上の対応に理解を示すところですが、そもそも行政指導、行政処分を受けている企業、品目については、GMP、GQP、GDPと言った運用基準に従い、品質が確保された製剤を市場に供給できるよう体制を早期に整えていただきたいと思います。
また、ジェネリック医薬品については、先発医薬品と治療学的に同等であるものとして、製造販売が承認されているという国による説明があるにもかかわらず、患者さんにとりましては、どの会社の後発品が調剤されるかによって自己負担が変わってくるような状況にもなっておりますので、品質や企業の体制によって、同じ成分でも薬価が異なることについて、国が国民患者に対して説明を果たすべきと考えます。
続いて、この部分の各論ですが、資料「薬―2」22ページ(試行的取扱い(案)に基づく対象品目(概数))を見ますと、企業評価がA区分の企業が製造販売する後発品について今回の対応案で示された要件案を適用した場合の対象品目の概数は、成分規格として約120件とのことです。これを現行の3価格帯とは別の取り扱いをするにしても、3価格帯に集約する制度設定時の趣旨を踏まえると、この価格数があまりに多くなるのは避けるべきだと考えます。いずれにしても、今回の試行による影響についてデータを収集してフォローしていくことが重要だと考えます。
ここで事務局へ質問します。後発品の数が約8600品目あるとされている一方で、いわゆる準先発品として扱われている品目、すなわち昭和42年以前に承認、薬価収載された医薬品であって、後発医薬品があるものについては現在約4400品目程度あるかと思います。今回の企業指標の導入にあっては、こうした準先発品についてはどのように扱われるのでしょうか?
最後に資料9ページ「② 不採算品再算定」についてです。不採算品再算定については、乖離率が大きい品目を適用対象から除外することは適切であると考えます。私からは以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございました。いま長島委員から大きく分けて2点、延べ3点のご質問があったかと思いますが、事務局からご質問に対する答えをお願いいたします。
事務局:薬剤管理官でございます。まず新規モダリティに関するご指摘でございます。まとめた便宜上(骨子・たたき台には)医薬品と再生医療等製品という形で書いておりますけども、実際にこういったことを検証する際に再生医療等製品につきましては、いまは医薬品と医療機器どちらかということになっておりますが、再生医療等製品でどう考えるかということで、そういった整理をしていくべきものだと思います。そういった指摘を業界からいただいておりますので、そういったことを検討していくものと認識をしているところでございます。
それに関連して再生医療等製品の開示度についてです。実際の品目数自体がまだまだ少ないので一概に申し上げることは難しいですけども、開示度が高いものもあれば、そうでないものもあるので、実際にはご指摘のような国内における取り扱いがあれば開示度が結果的に高くなっているとか、そういった要因はありうるものと思っております。そこも含めてどういったところが対応すべきものなのか今後整理が必要かなと思ってるところでございます。
あと後発品の関係でございます。準先発品は昔からの品目の話でございますが、今回の企業指標としての判断、安定供給に係る様々な考え方を実行する際はシミュレーションした内容について後発品のみならず、昔からの“その他品目”と言われているものも含めてどういった状況かを評価しているものでございます。
結果的にそれをどういうふうに薬価に反映するかというところの中では様々な対象範囲が出てくるので、そういったところの違いは出てくるかと思います。今回の後発品の価格帯であれば後発品の分類の中での整理になりますので、そういったところも含めて色々な判断要素があり得ると考えているところでございます。
もう一点、価格帯のところにつきましては、ご指摘の通り企業数が多くなってくると価格帯が多くなると、元々3価格帯に集約したこれまでの経緯もございますので、我々も最初の試行的段階の中で、まずはA区分のものを一つの価格帯にまとめた上で、どういう影響が出るかを見ていければと思っているところでございます。説明は以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございました。
長島委員:ありがとうございました。
安川部会長:他にご質問ご意見等ありますでしょうか。森委員お願いいたします。
森委員:はい、ありがとうございます。事務局におかれましては、これまでの議論などを踏まえ、令和6年度薬価制度改革の骨子を作成いただきありがとうございました。資料「薬―2」に示されている考え方や論点などについて概ね異論はございません。
資料「薬―2」の50ページ目(令和6年度薬価改定における不採算品再算定の考え方・論点)の不採算品再算定についてですが、先ほど長島委員から指摘がありましたけども、臨時特例的な措置として希望した全品目を適用することは理解できますが、令和5年度薬価改定において、臨時特例的に不採算品再算定を適用された品目において、乖離の大きい品目が一部に認められることには十分留意する必要があります。
せっかく不採算品再算定を適用したとしても、すぐに安売りされてしまうのであれば意味がありません。資料にあるように、9%を超えるような品目はさすがに行き過ぎではないかと思います。平均乖離率を大きく超えた品目については、不採算品再算定の対象から除外することに異論はございません。
いずれにしても今回の薬価改定において、不採算品再算定の対象となった品目については、その後の乖離状況等を注視し、今後の不採算品再算定のあり方を検討する必要があると考えます。また度々指摘させていただいておりますけども、総価取引などの流通上の課題も指摘されているところですので、その是正に向けた対応が必要と考えます。私からは以上です。
安川部会長:はい、ありがとうございました。他にご質問ご意見ありますでしょうか。松本委員お願いいたします。
松本委員:ありがとうございます。それでは令和6年度薬価制度改革の骨子・たたき台についてコメントいたします。最初に示された基本的な考え方につきましてでございますけども、当然財源には限りがございますので、記載はございませんけども、医療保険制度の持続可能性の確保が前提であることを改めて指摘させていただきます。
続きまして具体的な内容について、大きく4点にポイントを絞ってコメントします。まず資料「薬―1」2ページの一番上の「② 収載後の外国平均価格調整」につきましてでございます。以前申し上げました通り、外国価格が高いという理由だけで既に使われている医薬品の薬価を途中から引き上げることは、患者の理解が得られないという基本認識は変わっておりませんし、以前に他の委員からもご指摘があった通りでございます。しかし収載後に薬価を引き上げる仕組みがないために、企業の経営判断として薬価が高い他の国で先に上市した後に日本に導入する戦略をとれば、結果的に日本への導入が遅れ、かつ高い薬価がつくことになります。
そうした企業戦略を否定することもできません。仮に(薬価の)引き上げを適用するのであれば、単に上限を設定するだけではなく、実際に該当品目が発生した場合には、患者の理解を得られるように企業も努力をしていただくことが必要だと考えます。さらに引き上げの導入によって、企業の戦略がどのように変わるのか、マインドを含めて丁寧に検証することは不可欠だと考えます。
また、今回の改革で迅速導入加算の新設や有用性系加算の見直しが行われた場合、新規収載時の薬価が充実することになります。それでもなお日本の薬価が低いということであればどこに原因があるのか。例えばイノベーションがまだ評価できていないとか、あるいは為替の影響、あるいは保険償還率の違い等、そうした別の形の議論が必要だというふうに考えております。
次に資料「薬―1」2ページの下にございます新薬創出等加算の見直しについてです。企業指標を加算率の調整には使わず、対象企業要件として位置づけることで、業界からの提案に基づくものと理解をしております。最初の事務局案からは前進したと受け止めますが、先日のヒアリングでは、この指標を対象企業要件として活用する影響について、明確な回答は得られませんでした。
また、累積額の控除については、本日の資料3ページの中ほどで、医薬品開発への影響等を検証した上で、次期薬価改定は令和7年度と我々は受け止めておりますけども、そこで結論を出すということでやむを得ないと考えましたが、業界ヒアリングでは薬価改定は2年に1回が基本であり、新薬創出等加算の控除時期は他のルールとの整合性を踏まえ、慎重に検討されるべきとの資料が提出され、さらに薬価を維持することでポジティブな効果が出るまで10年程度かかるというご発言もございました。
正直申し上げますとイノベーションの推進につながるのか依然として不安があります。したがいまして企業指標に反映されない開発方針の変化等を早急に調査いただき、中医協の議論に活用できるよう、業界と事務局に強く要望するものであります。
続きまして骨子8ページからの後発品の安定供給が確保できる企業の考え方についてコメントいたします。資料「薬―2」18ページ(評価方法(案)に基づくシミュレーション結果)を見てみますと、最高得点から最低得点まで傾斜がかかり、比較的綺麗な分布になっているという印象を持ちました。また資料19ページ(【参考】シミュレーション結果の詳細の項目別点数)を見ますと、左の方に位置する企業は、他社品の増産、グラフ上は黄色く示されておりますけどもプラスに作用し、一方、中ほどの企業BからCの上位の企業はプラスとマイナスいずれも振れ幅が比較的小さく、右の方に行くとプラスが小さく、出荷停止、限定出荷これは赤とか緑で示されておりますけども、そうしたもののマイナスが大きいという傾向がわかります。
ただ、左側のプラスが大きい企業でもそれなりにマイナスが大きく、業界全体として安定供給が大丈夫なのか強い不安を覚えるものです。また資料19ページのA区分とB区分の境界を見てみますと、B区分に入っている数社は他社製品の増産をしておりますので、20%で線を引くのか議論の余地があるように思います。
またC区分の中ほどでも左の方と右の方ではかなり状況が違っておりますので、やはり企業指標の一部のみを先行的に適用することで弊害が生じないのか疑問を持つものです。
骨子の8ページ「②薬価制度における取り扱い」については一定程度理解できますので、仮に試行的に実施するとしても、安定供給に支障を来すことのないよう、企業区分の線引きについてはここでは判断を保留させていただきたいと思います。
最後に不採算品再算定については、同じく資料「薬―2」50ページ(令和6年度薬価改定における不採算品再算定の考え方・論点)に対応として考える方向性が示されておりますが、原則ルールを超えた対応はすべきではないというのが基本的な認識です。しかしながら現行ルールに限った運用では、安定供給にさらに支障が出ることが否定できないことや、資料「薬―2」51ページ(令和5年度薬価改定における不採算品再算定対象品目の実勢価格の乖離状況)を見てみますと、令和5年度に特例対応した品目の平均乖離率は3.3%と、全体平均のおおむね半分程度になっており、薬価差が縮小する中でも、特に手堅く販売をしているという実態を考慮することも一定程度は理解できます。
ただ、他の委員からもご指摘がありましたが、特例対応の中でかなり値引きをしているものも散見されております。仮に特例対応を再度実施する場合には、前回の特例対応のベースとなった令和4年度薬価調査の平均乖離率7%を超えるものについて除外することが妥当だというふうに考えます。
さらに、物価高の影響があるとしても、こうした特例対応を繰り返せば、最低薬価の問題と同様に、値引きをしても薬価が戻るという悪循環に陥る懸念がございます。そもそもの原因が一種の制度疲労にあるということなら、骨子の9ページにあります医薬品流通の課題や調整幅の取り扱いを含め、薬価改定ルールの根本的な見直しについて議論すべきと考えます。私からは以上でございます。
安川部会長:はい、ありがとうございます。他にご意見では鳥潟委員お願いいたします。
鳥潟委員:はい、ありがとうございます。お示しいただいた骨子についてはこれまでの議論を踏まえたものであり、総論としては賛成させていただきます。その上で後発医薬品の安定供給のためには、関連検討会のご意見も踏まえ、本改定のタイミングで抜本的な対応策を講じる必要があると考えております。
資料「薬―1」18ページ(評価方法(案)に基づくシミュレーション結果)に掲げられた企業指標の導入および評価と評価結果の薬価制度における取り扱いは、その第一歩と考えておりまして、早期の導入および着実な検証を通じて第2、第3の改善に繋げていただくよう改めてお願いいたします。以上になります。
安川部会長:ありがとうございました。他にご質問ご意見ありますでしょうか。先ほどらいイノベーション評価に関する企業指標の開示の問題や情報提供の問題であるとか、あるいは安定供給について、また不採算に関する問題といくつか重要な点が指摘されています。専門委員からもしご意見等ございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。では石牟禮専門委員お願いいたします。
石牟禮専門委員:はい、ありがとうございます。専門委員の石牟禮でございます。ただいま薬価制度改革の骨子につきまして各委員からのご意見を拝聴いたしました。私の方からもいくつかコメントさせていただきたくお願いいたします。
令和6年度薬価制度改革の骨子・たたき台に示されている内容は、先日の業界ヒアリングでも業界代表が申しました通り、現下の課題であるドラッグ・ラグ/ロスの解消と後発品を中心とした安定供給の確保に向けた活動を力強く後押しするものと認識しております。また、これは医薬品のカテゴリーに応じた薬価制度の構築、ビジネスモデル転換への大きな一歩と認識しておりまして、制度改革の影響の検証につきましては、いま委員からもご指摘ございました通り、業界も積極的に参画してまいる所存でございます。
その前提で4点コメントさせていただきたいと存じます。一つ目は別添1にございました企業指標に関するところでございます。今回それによって区分を設けるということを廃止する上で、この指標を活用して企業の開発について確認していただくという方向性になりました。この指標自体がそもそも適切なのかどうかという検討も必要というふうに考えておりまして、今後その企業の活動の変化を踏まえて検証に積極的に参画させていただきたいと考えております。特にそのリソースが少ない企業にとって、こういった指標がきちんと開発を行っていることの確認ができているかどうかということは、私どもが若干気になっているところでございますので、データの提出等につきましても積極的に参画してまいりたいと考えているところでございます。
続きまして早期導入に関する評価についてです。たたき台で言いますと資料1ページから2ページにかけてです。迅速導入した場合の要件の中で以前もご指摘しましたが、承認時期についての要件がございます。日本における新薬の承認時期というのは、薬価収載に合わせて3か月に1回という中で、薬価改定のある年につきましては、通例12月が1月にずれるといった対応もなされているところです。
審査当局の状況によって、やむを得ず審査期間が延長してしまうケースもあり得ることを考えますと、企業の努力だけで対応が困難な状況も生まれます。この要件だけ該当しない場合で加算が適用されないのは折角このようなルールを設けていただくことの趣旨を考えますと、柔軟な検討をお願いしたいと考えております。
それから、資料6ページの「③剤形追加等の取り扱い」についてです。二つ目の「〇」には、「5年を経過するなど大きく間を置いて希望書を提出された場合に対象としない」ということが記載されてございます。有用性の高い医薬品の開発を促進するという観点から申しますと対象疾患に合わせた特殊な製剤や開発要望があった場合など、個別品目によっては医療上の必要性が高いと判断されるものにつきましては、その下にございます「⑤ その他」の「1)新薬に係る薬価制度の見直しに伴う対応」に記載の薬価算定組織のご判断にて加算の適用が可能となるような運用をお願いしたいと考えております。
最後に不採算品再算定でございます。各委員からもご指摘ございましたように、現下の原材料等の高騰が続いているということを踏まえますと、薬価の下支えであります不採算品再算定につきまして確実に適用していただきたいと考えております。
令和5年改定における不採算品再算定対象品目の実勢価格の乖離状況をお示しいただいておりますが、メーカーの意図とも異なる取引が行われる事例もあると認識しておりまして、そのような状況も勘案いただきまして安定供給に尽力する企業の品目につきましては不採算品再算定が適用されるようご配慮いただきたくお願い申し上げます。以上でございます。
安川部会長:ありがとうございました。他にご質問ご意見等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。他にご質問等がないようでしたら、本件に関する質疑はこのあたりといたします。今後、事務局において本日いただきましたご意見等を踏まえご対応いただきますようよろしくお願いいたします。本日の議題は以上です。