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中医協 長期収載品の選定療養 制度周知で医療現場の混乱回避を 患者負担は予算編成過程で検討

公開日時 2023/12/18 04:52
厚労省保険局医療課は12月15日の中医協総会で、長期収載品を選定療養に位置付けた際の患者の追加負担について、中医協や社保審議医療保険部会での意見を踏まえ、予算編成過程で政府として検討を進める方針を示した。先発品を用いた場合の患者の追加負担をめぐっては、先発品と後発品の価格差の「1/2」、「1/3」、「1/4」とすることが論点に上がっており、患者負担増への懸念から診療側が「1/4」を主張する一方で、支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)が「1/2」を主張した。後発品の供給不安が続く中での制度導入に対して医療現場での混乱を避けるために、国として国民・患者への周知・広報を求める声が診療・支払各側からあがった。


長期収載品を選定療養に位置付けるにあたり、医療上の必要性がある場合や薬局の在庫がない場合は保険給付とする一方、患者の選択により長期収載品を使用する場合は一定の自己負担を求める選定療養の仕組みを導入することが提案されている。長期収載品を用いた際の患者の追加負担については、長期収載品と後発品の価格差の「少なくとも1/2以下」として、「1/2」、「1/3」、「1/4」の“一定の割合”とすることを提案。選定療養について負担を徴取しないことや、価格差の差額より低い額の徴収は認めない方向で検討が進められている。

◎長島委員、池端委員「4分の1が適当」 鳥潟委員「できる限り2分の1で」

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、1割負担の患者では3割負担よりも追加負担が大きくなっていること、先発品と後発品の価格差が大きい場合にも追加負担が大きくなると指摘。「変化額の大きさを踏まえると、最初は4分の1程度の額として、できるだけ患者さんへの影響が少なくなるようにした上で様子を見るべき」と主張した。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「一定の割合を求めることで、処方日数などによっては過度な患者負担を発生させる可能性がある。患者の負担増を最小限に留める割合にするべき」と述べた。診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)も、「選定療養の負担範囲は、できるだけ少ない方がいい。4分の1が適当ではないか」と述べた。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「患者の負担増に配慮しつつ、長期収載品と後発品の価格差の2分の1以下の範囲内で、患者が後発品を使用するインセンティブが働く水準とすべき」と述べた。支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、「各保険者の努力のみではもうすでに後発医薬品の使用率に関しては限界が見えてきている。後発品の供給不安をめぐる構造的課題の解決に向けて、関連制度を大胆に見直すことを前提に長期収載品の薬価と選定療養の場合における保険給付範囲の水準の差については、できる限り2分の1とする方向で検討を進めていただきたい」との考えを示した。

公益委員の飯塚敏晃委員(東京大大学院経済学研究科教授)は、「選定療養の導入は、医療資源を特許切れの医薬品から革新的な新薬に配分するための重要な政策だ。資源の再配分が十分達成できる範囲、水準で実施をしていただきたい」と述べた。

厚労省保険局医療課の荻原和宏保険医療企画調査室長は、社保審や中医協での意見を踏まえ、「予算編成過程の方で改めて政府としての検討を進めていきたい」と説明した。

◎森委員 「国が責任を持って国民への十分な周知をお願いしたい」

制度導入に際しては、医療現場での混乱を避けるため、国に制度の周知を求める声が診療・支払各側からあがった。診療側の森委員は、供給不安が改善されない中での制度導入について、「現場での混乱が増し、患者さんへの説明やご理解いただくために別途さらなる時間や労力などを要することになる」と懸念を露わにした。「同一の薬剤でも、人によって選定療養となるケース、ならないケース、そもそも選定療養の対象となる薬剤、ならない薬剤が混在しており、それらの説明に現場での負担は薬剤一部負担金が導入されたとき以上に大きなものとなるとこういうことが予想される」と指摘。「国が責任を持って国民への十分な周知をお願いしたい」と述べた。

また、施行時期については6月に診療報酬・介護報酬が同時改定されることから、「レセコンのシステム対応の時間や国民への十分な周知広報なども必要であり、これらについては時間的に余裕をもって対応すべき」と述べた。診療側の池端委員は現場の混乱を避けるために、薬局の現場の意見を踏まえる必要性を指摘し、「できるだけ国民が混乱しないような対応をしっかりとって周知の期間を一定程度とっていた上でやっていかなければ、大きな混乱を起こすのではないかということを危惧している」と述べた。

支払側の松本委員も、「保険者としても、加入者に制度の周知を行う必要があると考えている。厚労省には、患者の理解を得るための広報ツールの準備をお願いしたい」と述べた。

荻原保険医療企画調査室長は、「制度導入に当たり、医療現場もしくは患者国民の皆さんに負担、混乱が生じないよう、事前に制度の周知徹底をしていくということは非常に重要だと考えており、徹底してまいりたい」と応じた。

◎”医療上の必要性”理由はレセプトに明記を 処方箋で確認できるような仕組みを

選定療養導入の対象は、後発品上市後5年以上経過した品目に加え、上市後5年を経過していなくても、置換率が50%に達している場合は、「後発品の選択が一般的に可能な状態になっている」として選定療養の対象とすることを提案。医療上の必要性により医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)の場合など、医療上の必要性があると認められる場合については、選定療養とせず、引き続き保険給付の対象とする方針。医療上の必要性が確認されたかは、処方箋様式で明確にすることが検討されている。

支払側の松本委員は、長期収載品を選定療養に位置付けることで、「後発品のない新薬の使用が増加する可能性」を指摘。「医療保険制度の持続可能性の観点からは適切に薬剤が選択されるよう、丁寧に実態を把握することが必要」と述べた。

対象について、診療側の長島委員は、「上市後5年以上・置換率50%未満」の品目が選定療養に位置付けられることについて、「Z2ルールが適用されたとしても、まだ過半数は置き換えられていないという状況からすると、長期収載品を使用した場合の自己負担引き上げについては、慎重に対応することも考えられる」と述べた。

制度の導入に際し、“医療上の必要性”をいかに確認するかも重要になる。支払側の松本委員は、「例えば、患者が希望した場合であっても最終的には処方権を有する医師の判断が重要だ。具体的な理由をレセプトに明記するなど、保険給付の妥当性を保険者や審査支払機関が確認できることが必要となる」と指摘した。公益側の飯塚敏晃委員(東京大大学院経済学研究科教授)も、「選定療養としないと判断した理由がレセプトデータ上でしっかり識別できるように診療報酬の項目等での工夫等をお願いしたい。特に医療上の必要性であるのか、あるいは後発薬の在庫がないためか等について、院内処方についても含めて、データ収集の方策を考えていただきたい」と述べた。

診療側の森委員は、「医療上の必要性の確認が処方箋で行えるなど容易に確認できるような仕組みを運用することをお願いしたい」と要望した。

◎後発品の供給不安で選定療養「判断は薬剤師が行うべき」 準先発品への影響注視求める声も

後発品の供給不足が続く中で、薬局に後発品の在庫がない場合などは長期収載品が保険給付となる方向で検討が進められている。診療側の森委員は、「後発品を提供することが困難な場合については給付対象とすべきと考えますし、その判断は薬剤師が行うべき」と指摘した。診療側の長島委員は「現在の状況で、後発品の供給体制に過剰な負担をかけるべきではない」として、1967年以前に承認、薬価収載された準先発品を長期収載品も選定療養の対象に含まれることに触れ、「長期収載品と同列に扱うことによる影響もよく見ておく必要がある」と述べた。

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