26年度薬価改定 類似薬効比較方式Ⅱ「保険給付の必要性を含めた根本的議論」 市場拡大再算定の検討も
公開日時 2025/08/07 08:36
中医協薬価専門部会は8月6日、26年度薬価改定に向けた検討項目を了承した。財務省の財政制度等審議会での指摘を踏まえ、国民皆保険の持続可能性の観点から類似薬効比較方式Ⅱの見直しも含まれている。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「類似薬効比較方式Ⅱは、新規性に乏しい新薬を保険給付する必要性があるのかどうかを含めて根本に立ち返った議論をさせていただきたい」と強調した。このほか、「市場拡⼤再算定・改定時加算・新薬創出等加算の控除等の価格調整、報告品目及び後発医薬品の収載頻度」や「逆ザヤ」なども議論の俎上にのぼる。次回、製薬業界から再度意見聴取を行い、検討を深める方針。
類似薬効比較方式Ⅱをめぐっては、財務省が4月23日の財政制度等審議会財政制度分科会で、「類似薬効比較方式Ⅱについては、新規性に乏しい新薬をどのように保険収載すべきか、どのように薬価を算定すべきか、といった観点から、費用対効果評価の活用方策も含め、抜本的かつ具体的な検討を早急に進めるべき」と指摘されたことを踏まえて議論の俎上にのぼることになる。
また、薬価収載の頻度が年4回から7回に増えたことを踏まえ、「市場拡⼤再算定・改定時加算・新薬創出等加算の控除等の価格調整、報告品目及び後発医薬品の収載頻度」も議論の俎上に挙げる。なお、市場拡大再算定については、特例を含む再算定のあり⽅・類似品の取扱い、希少疾病や小児の効能追加をした場合の適用除外を論点とした。支払側の松本委員は、「いわゆる四半期再算定など新薬の薬価収載に合わせて対処したルールにつきましてはどのようなタイミングで実施すべきか、ぜひ議論したい」と意欲をみせた。また、「新薬の特許が切れたら速やかに後発品に市場を譲るということを前提とすると、後発品が薬価収載された時点で新薬創出等加算の累積額は控除するのが本来のあるべき姿だろう」と改めて主張した。
◎支払側・松本委員 調整弁のあり方議論に意欲 カテゴリー別の「額」踏まえた議論も
支払側の松本委員は、「これまで議論ができていない“調整幅”のあり方についてもぜひ議論させていただきたい」と強調。25年度薬価改定で、「医薬品のカテゴリー別に対応した実績や投与経路別の流通経費の違い、医薬品の高額化による影響等も踏まえ、どのような対応を考えられるのか、「率」だけでなく「額」も含め、実態を見ながら議論したい」と強調した。
◎「先発品・後発品の薬価逆転防止」も論点に 診療側・森委員「選定療養、調剤体制加算に大きな影響」
⻑期収載品、後発医薬品、バイオ後続品(バイオシミラー)の薬価としては、「先発品・後発医薬品の薬価逆転の防止」を論点にあげた。また、“逆ザヤ”についても項目に含めた。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、25年度改定で先発品と後発品の逆転が多くの品目で起きたとして、「その影響によって、長期収載品の選定療養や、後発医薬品の調剤体制加算等のカットオフ値要件が大きな影響を受けている」と指摘した。森委員は、「これまで選定療養の対象だった患者さんが薬価改定を経て選定療養の対象外となり、患者さんへの説明に関しても苦慮している。なぜ、これまで選定療養だったものが外れたのかを(患者に)説明してもなかなか一般の人は理解をしていただけない。非常に苦労している。さらに今回、選定療養から外れるのであれば、再度、先発品に戻すことを希望する患者さんもいて、現場はかなり苦慮する」と吐露。「薬価改定の度にこのようなことが起こると現場も大変だが、患者側も非常に大変だ。対応の必要がある」と訴えた。調剤体制加算のカットオフ値については、算出対象や根拠が変更路なることから、「改定前後で同じように後発品を一生懸命に積極的に使っていても、カットオフ値要件を満たせなくなってしまった薬局が出ている現状がある。こうしたことが起こらないような薬価制度にすべき」と強調した。
◎逆ザヤ問題 実態調査へ内部で検討 卸と医療機関、薬局との間の妥結状況も踏まえ
逆ザヤについても「できる限り早く対応いただきたい。そして次回改定にはきちんと解消できるようにしていくべき」と訴えた。
これに対し、安中健医薬産業振興・医療情報企画課長は、逆ザヤの実態把握に向けた調査について、「現在、業界関係者の意見を踏まえながら内部で検討している。卸と医療機関、薬局との間での取引価格の妥結状況なども踏まえる必要があると考えており、それらも踏まえて適切な時期に向けて検討してまいりたい」と応じた。
森委員は、「薬局、医療機関にとって非常に大きな問題なので、しっかり対応いただきたい。中間年改定を行うことによって逆ザヤの影響ということもあると思いますので、しっかり議論していくべき」との考えも示した。
◎規格間調整のみによる算定における新薬算定の補正加算 市場性加算Ⅰ、先駆・迅速導入加算も適用を
イノベーションの推進の観点からは、薬価算定組織の提案を踏まえ、薬価算定時の規格間調整のみによる算定における補正加算の見直し、薬価改定時の標準的治療法に関する改定時加算の評価、薬価算定時における市場性加算と小児加算を併加算などが論点に挙がっている。薬価算定組織は、規格間調整のみによる算定では、医療上の有用性に関する加算、特定用途加算、小児加算が適用されていると説明。加算対象外とされた市場性加算Ⅰ、先駆加算、迅速導入加算についても適用することを提案した。
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「この意見では、市場性加算Ⅱ以外の補正加算に対応することとなる。企業側としては既に開発ノウハウがあって、薬理作用や医薬品の特性としての新規性が高くないものもあると思う」と指摘。「しっかりと科学的な妥当性があるかどうか、必要性を十分検証して、またご検討いただければ」と述べた。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「規格間調整のみで薬価算定された医薬品について、開発そのものを否定するつもりはないが、具体的にどのような製品を想定しているのか、また、過去に加算を受けられなかったものや、さらには現在開発中のものなど、もう少し具体的な実例を示していただきながら議論する必要があるのではないか」との考えを示した。