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中医協 条件・期限付き承認のエレビジス 米国で約4億8000万円も診療・支払各側「価格の妥当性」を

公開日時 2025/05/15 05:30
中医協総会は5月14日、条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品・エレビジス点滴静注の保険適用に向けて議論を開始した。同剤は、米国価格が約4億8000万円と高額。国内の過去最高薬価となる可能性があり、保険財政への影響も懸念される。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)が「価格の妥当性についても、きちんとした説明が今まで以上に必要になる」と述べるなど、診療・支払各側から“価格の妥当性”を求める声があがった。条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品2製品が有効性を示せずに本承認に至っておらず、保険収載に向けて本承認できるよう有効性の“確度”の高さを求める声もあがった。

条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品の保険適用は次期制度改革に向けて焦点となっている。条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品をめぐっては、昨年コラテジェン筋注用4mgとハートシートの再生医療等製品2品目について薬価基準又は材料価格基準から削除された経緯がある。

政府の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024 年改訂版(令和6年6月21 日)」でも、「国民皆保険の堅持とイノベーションの推進を両立させつつ、希望する患者が保険診療の対象となるまで待つことなく利用できるよう、保険診療と保険外診療の併用を認める保険外併用療養費制度の対象範囲を拡大すること、また、患者の負担軽減・円滑なアクセスの観点から、民間保険の活用も考慮すること」とされている。

◎国内でも「相当な金額」に 米国価格は4億8000万円、ピーク時は100人/年

エレビジス点滴静注をめぐっては、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを適応症として、5月13 日に条件・期限付き承認された。国際共同第3相臨床試験では、主要評価項目に統計学的有意差は認められなかった一方で、複数の副次評価項目で有用性が示されている。米国価格は320 万米国ドル(WAC、約4億8000万円)推定患者数は上市後2年度(ピーク時)は100人/年程度としている。厚労省保険局医療課は、「米国の価格を参考に見ると、国内での価格が相当な金額になることが想定される」とした。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「米国での価格を踏まえると、日本国内での価格が相当高くなると見込まれる。仮に保険適用にあたり相当に高い価格で算定された場合は、当然ながらその価格の妥当性についても、きちんとした説明が今まで以上に必要になると考える。事務局におかれては、しっかりとした検討が可能となるような適切な対応をお願いする」と述べた。

◎支払側・松本委員「仮免許の製品の保険の取り扱いが本承認と同じということは疑問」

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「患者さんに新しい治療選択肢をなるべく早く届けるという、条件付き期限付き承認制度の意義を否定するつもりは毛頭ない」と述べたうえで、「有効性が推定された段階のいわば仮免許の製品について、保険適用上の取り扱いが本承認されたものと同じということは疑問があり、現行ルールに基づく限り、市場規模が1500億円を超える可能性がある医薬品の場合には、特例的な取り扱いになると理解している」と述べた。

「仮に日本で保険適用する場合、過去最高額を超えるようなかなりの高額になり、保険財政に相当大きな影響があるということも予測される」としたうえで、「保険適用について検討する場合には、有効性が確認されて、本承認に至る確度が相当高いことを示していただく必要があるし、価格の妥当性についても極めて慎重に検討していただき、その結果をできる限り示していただきたい」と述べた。

◎支払側・伊藤委員「国保運営の立場からは慎重に判断せざるを得ない」

支払側の伊藤徳宇委員(三重県桑名市長)は、「自治体の長として市民の生命を守る立場から申し上げると、難病に直面する患者さんやご家族に対して、医薬品が希望の光となるのであれば反対の理由は見当たらない。その反面、国保運営の立場としては、かなり高額であるというところは慎重に判断せざるを得ないというところもある」との見解を示した。

◎2製品が本承認に至らず「見極めが甘かったと言わざるを得ないのでは」 

条件・期限付き承認の2製品が本承認に至らなかったことから、さらなる有効性の検証の必要性を指摘する声もあがった。診療側の長島委員は、「有効性の検証は難しいものであるとはいえ、2品目の見極めが甘かったと言わざるを得ないのではないか」と指摘。「医療保険で患者さんに使用している以上、最終的に有効性が確認されずに保険適用から除外されるようなケースは、可能な限り避けるべき事態」と述べた。そのうえで、「将来のことを確約することは難しいものの、この事例を踏まえて有効性など、本剤の本承認に至る見通しが、一定程度高いということを示していただく必要がある。同じ失敗を繰り返すことがないよう、また医療保険の持続性の観点から適切な対応となるよう、コラテジェンおよびハートシートで判明した課題を踏まえて、丁寧で慎重な検討が必要と考える」と述べた。

厚労省医薬局医療機器審査管理課は、24年3月に「再生医療等製品に係る条件及び期限付承認並びに その後の有効性評価計画策定に関するガイダンス」を事務連絡として発出。高江慎一医療機器審査管理課長は、「条件・期限付き承認を与える際に、検証的試験をどのような形で行うか、本承認に値する有効性の評価ができるか、企業とPMDAの方で事前に入念に議論の方をさせていただくことを徹底しているところ」と説明した。

◎条件・期限付き承認の一般的な保険適用のあり方、今秋以降に議論 支払側・松本委員「限りある医療資源配分の観点を」

条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品の保険適用の一般的なあり方については、次期制度改革の検討において今秋以降に検討することも了承された。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「過去に条件及び期限付き承認された品目が薬価削除となった事例があるので、有効性・安全性が確認できない場合は、速やかに薬価削除を行うような対応が必要」、「以前発生した問題点なども整理をしていただき、再生医療等製品の特性などを踏まえた議論が今後必要」との見解を示した。

支払側の松本委員は、「一般的な条件および期限付き承認、製品の保険適用のあり方については、限りある医療資源を適切に配分する観点を踏まえて、ぜひ議論をさせていただきたい」と述べた。
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