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新薬8成分10品目 8月14日収載へ PAH治療薬・エアウィンはピーク時予想544億円 中医協総会

公開日時 2025/08/07 08:30
中医協総会は8月6日、新薬8成分10品目の薬価収載を了承した。収載日は8月14日。MSDの肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬・エアウィン皮下注用(一般名:ソタテルセプト)は、10年後のピーク時売上を544億円と予想。同じくMSDの腎細胞がんおよびフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病関連腫瘍を効能・効果とする経口HIF-2α阻害剤・ウェリレグ錠(ベルズチファン)は、9年後のピーク時で404億円と予想した。ただ、エアウィンは有用性加算(I)(A=45%)と市場性加算(I)(A=15%)、ウェリレグは画期性加算(A=75%)と市場性加算(I)(A=15%)の補正加算が付いたが、いずれも原価開示度50%未満ということで加算ゼロとなった。

ピーク時売上が100億円以上と予想されたのは、エアウィン、ウェリレグを含めて4製品ある。ヤンセンファーマの発性骨髄腫治療薬・タービー皮下注(トアルクエタマブ(遺伝子組換え))は10年後のピーク時で256億円。ファイザーの潰瘍性大腸炎治療薬・ベルスピティ錠は(エトラシモド)は5年後のピーク時で143億円と予想された。

なお、6月24日付で承認された新有効成分含有医薬品のうち、ブリストル・マイヤーズ スクイブの骨髄線維症を効能・効果とするJAK2阻害薬・インレビックカプセル(フェドラチニブ塩酸塩水和物)は今回収載されない。

8月14日付で収載される製品は以下のとおり(カッコ内は成分名と薬価収載希望会社)。投与経路・薬効分類順。

ベルスピティ錠2mg(エトラシモド L-アルギニン、ファイザー)
薬効分類239 その他の消化器官用薬(内用薬)
効能・効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)
薬価:2mg1錠 4792.80円(1日薬価:4792.80円)
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数8.3千人、販売金額143億円

加算:なし
新薬創出等加算:該当しない
費用対効果評価:該当しない

経口スフィンゴシン 1-リン酸(S1P)受容体調節薬。リンパ球上のS1P受容体に作用することで、末梢リンパ組織内にリンパ球が保持され、循環血中のリンパ球数が減少することにより、自己免疫疾患である潰瘍性大腸炎(UC)に対し治療効果を示すことが期待されている。ベルスピティは、S1P受容体サブタイプ1、4、5に対して選択的に活性を示すよう設計されている。用法・用量は「通常、成人には2mgを1日1回経口投与する」。

国内では、経口S1P受容体調節薬として、ブリストル・マイヤーズスクイブのゼポジアが24年12月に同じ「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の効能・効果で承認されている。

リアルダ錠600mg(メサラジン、持田製薬)
薬効分類239 その他の消化器官用薬(内用薬)
効能・効果:潰瘍性大腸炎(重症を除く)
薬価:600mg1錠 96.10円(1日薬価:384.40円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数0.8千人、販売金額1.0億円

加算:小児加算(A=10%):「本剤は小児に係る用法・用量が明示されていること等から、加算の要件に該当する。小児適応を有する既収載品があるものの、国内臨床試験を実施していること等を踏まえると、加算率は10%が妥当である」

新薬創出等加算:該当する(主な理由:小児加算適用)
費用対効果評価:該当しない

5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤)。今回、小児用量が追加された。用法・用量は「通常、体重23kg超の小児には1日1回40mg/kgを食後経口投与するが、2400mgを上限とする。活動期は、通常、体重23kg超の小児には1日1回80mg/kgを食後経口投与するが、4800mgを上限とし、患者の状態により適宜減量する」。

ウェリレグ錠40mg(ベルズチファン、MSD)
薬効分類429 その他の腫瘍用薬(内用薬)
効能・効果:フォン・ヒッペル・リンドウ病関連腫瘍、がん化学療法後に増悪した根治切除不能又は転移性の腎細胞がん、
薬価:40mg1錠 2万1916.80円
市場予測(ピーク時9年後):投与患者数1.9千人、販売金額404億円

加算:
画期性加算(A=75%):「本剤はHIF-2α阻害作用を有する新規作用機序医薬品であり、臨床試験成績から臨床上の有用性が示されていること、フォン・ヒッペル・リンドウ病関連腫瘍の適応症で初めて承認された薬剤であり、初めて全身治療を提供するものであること等から、画期性加算(A=75%)を適用することが適当と判断した」。
市場性加算(I)(A=15%):「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。患者数が極めて少なく開発が難しいと想定される中で、フォン・ヒッペル・リンドウ病関連腫瘍の適応症で初めて承認された薬剤であること等を踏まえ、加算率15%が妥当である」
なお、製造原価開示度50%未満のため、加算係数はゼロ。

新薬創出等加算:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当する(H1)

ファーストインクラスの経口低酸素誘導因子2アルファ(HIF-2α)阻害剤。用法・用量は、2つの適応共通で「通常、成人には、1日1回120mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」。

がん細胞においてフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)蛋白質の機能が喪失している状態において、ベルズチファンは、HIF-2αとHIF-1βのヘテロ二量体形成を選択的に阻害する。その結果、血管新生・増殖および腫瘍代謝に関連する低酸素下で誘導される遺伝子の転写を阻害することで抗腫瘍効果を示す。VHL病は、VHL遺伝子変異によって腫瘍が引き起こされる難治性の希少疾患で、国内推定患者数は600~1000人。

腎細胞がん(RCC)は腎臓がんの約9割を占める。19年には約2万1000人が新たに腎臓がん(腎盂がん除く)と診断された。RCCでの承認申請は、PD-1またはPD-L1阻害剤とVEGFR-TKIを逐次または同時に用いた治療後に進行した患者を対象とした第3相LITESPARK-005試験に基づく。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)で、対照薬のmTOR阻害剤・アフィニトールに統計学的有意差を示した。

なお、国内では、RCCの1次治療として、キイトルーダやオプジーボ、バベンチオの併用療法などが承認されている。ウェリレグは2次治療以降での使用が想定されている。

アネレム静注用20mg(レミマゾラムベシル酸塩、ムンディファーマ)
薬効分類111 全身麻酔剤(注射薬)
効能・効果:全身麻酔の導入及び維持、消化器内視鏡診療時の鎮静
薬価:20mg1瓶 1540円
市場予測(ピーク時8年後):投与患者数272万人、販売金額44億円

加算:なし
新薬創出等加算:該当しない
費用対効果評価:該当しない

短時間作用型のベンゾジアゼピン系麻酔・鎮静薬。新効能であり、ベンゾジアゼピン系薬剤では国内初の適応となる消化器内視鏡診療時の鎮静の用法・用量は「通常、成人には、3mgを、15秒以上かけて静脈内投与する。効果が不十分な場合は、少なくとも2分以上の間隔を空けて、1mgずつ15秒以上かけて静脈内投与する。なお、患者の年齢、体重等を考慮し、適切な鎮静深度が得られるよう、投与量を適宜減量する」。

アネレムの50mg製剤は20年1月に「全身麻酔の導入及び維持」の効能・効果で承認された。その後、23年9月に、50mg製剤に「消化器内視鏡診療時の鎮静」の新効能を追加すること、さらに追加剤形の20mg製剤について、「全身麻酔の導入及び維持」及び「消化器内視鏡診療時の鎮静」の効能・効果で承認申請された。

エアウィン皮下注用45mg、同60mg(ソタテルセプト(遺伝子組換え)、MSD)
薬効分類219 その他の循環器官用薬(注射薬)
効能・効果:肺動脈性肺高血圧症
薬価:
45mg1瓶 108万2630円
60mg1瓶 144万1677円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数2.8千人、販売金額544億円

加算:
有用性加算(I)(A=45%):「本剤は、アクチビン受容体IIAのリガンドに結合することで肺血管リモデリングを抑制すると考えられる新規作用機序医薬品であること、本剤の対象疾患において約10年6か月間、新規の作用機序の新薬収載がないこと、既存の治療方法で効果が不十分な患者群に対し効果が認められたこと、国内ガイドライン等において従来の薬剤に追加して使用する標準療法として推奨されていることから、有用性加算(I)(A=45%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算(I)(A=15%):「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。国内第III相試験の速やかな実施等により欧米に大きく遅れることなく本邦での承認に至ったことを踏まえ、加算率は15%が妥当である」
なお、製造原価開示度50%未満のため、加算係数はゼロ。

新薬創出等加算:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当する(H1)

肺動脈性肺高血圧症(PAH)の根本原因を標的とするアクチビンシグナル伝達阻害薬。PAHの本態である肺血管リモデリングを標的とし、主にアクチビンAと結合し細胞増殖を促進するアクチビンシグナル伝達を阻害することで、シグナル伝達のバランスを改善し、肺血管平滑筋細胞の増殖を抑制し血行動態を改善する。

承認申請は、標準的なバックグラウンド療法を受けているPAHの成人患者(WHO機能分類クラスIIおよびIII)を対象とした第3相STELLAR試験等の結果に基づく。

用法・用量は「通常、成人には初回に0.3mg/kgを投与し、2回目以降は0.7mg/kgに増量し、3週間ごとに皮下投与する」。

ポムビリティ点滴静注用105mg(シパグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、アミカス・セラピューティクス)
薬効分類:395 酵素製剤(注射薬)
効能・効果:遅発型ポンペ病に対するミグルスタットとの併用療法
薬価:105mg1瓶 20万4251円(1日薬価:13万8946円)
市場予測(ピーク時6年後):投与患者数30人、販売金額16億円

オプフォルダカプセル65mg(ミグルスタット、アミカス・セラピューティクス)
薬効分類:399 他に分類されない代謝性医薬品(内用薬)
効能・効果:遅発型ポンペ病に対するシパグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)との併用療法」
薬価:65mg1カプセル 6038.20円(1日薬価:1725.20円)
市場予測(ピーク時6年後):投与患者数30人、販売金額0.19億円

両剤とも
加算なし
新薬創出等加算:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当しない

遅発型ポンペ病に対し、細胞への酵素の取り込みを向上させた酵素補充療法薬・ポムビリティと酵素安定化剤・オプフォルダを併用する。

ポンペ病(糖原病II型)は、リソソーム中のグリコーゲン分解酵素である酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子変異によって生じる常染色体劣性遺伝性疾患。病型は、臨床所見や発症年齢により乳児型、遅発型(小児型、成人型)に分類される。遅発型では近位筋筋力低下、呼吸筋筋力低下、高CK血症、翼状肩甲などが認められる。

タービー皮下注3mg、同皮下注40mg(トアルクエタマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ)
薬効分類429 その他の腫瘍用薬(注射薬)
効能・効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)
薬価:
3mg1.5mL1瓶 14万6284円
40mg1mL1瓶 187万9962円(1日薬価:13万4283円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数886人、販売金額256億円

加算:
有用性加算(I)(A=35%):「本剤は、GPRC5D受容体を標的とする初めての二重特異性抗体であり、BCMAを標的とするCAR-T又は二重特異性抗体の前治療歴を有する再発又は難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした臨床試験においても臨床的意義のある効果が認められていること等から、有用性加算(I)(A=35%)を適用することが適当と判断した」

新薬創出等加算:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当する(H1)

ファーストインクラスのGタンパク質共役型受容体ファミリーCグループ5メンバーD(GPRC5D)/CD3を標的とする二重特異性抗体。初回の導入期後は、週1回もしくは隔週に1回の皮下投与で用いる。承認申請は、第1/2相MonumenTAL-1試験等の結果に基づいており、第2相では、プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬、抗CD38抗体製剤を含む3つ以上の治療歴を有する患者が対象となった。

国内で再発/難治性の多発性骨髄腫(MM)に対して承認されている二重特異性抗体には、ファイザーのエルレフィオ皮下注と、ヤンセンファーマのテクベイリ皮下注があり、これらはB細胞成熟抗原(BCMA)とCD3を標的としている。また、国内で承認されている再発/難治性MMに対するCAR-T細胞療法(アベクマ、カービクティ)もBCMAを標的としている。タービーは、CD3とともに、BCMAとは異なる新規のGPRC5Dを標的とする。

【訂正】見出しの製品名の表記に誤りがありました。正しくは「エアウィン」です。訂正します。(8月7日20時00分)

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