EMA 「年次報告書2024」を刊行 RWEへの取り組み加速
公開日時 2025/06/18 04:49
欧州医薬品庁(EMA)は6月10日、「年次報告書2024」(Annual Report 2024)を刊行した。同報告書は、第1章「2024年の主要実績」、第2章「2024年の統計」の2章に分かれ、第1章では、24年のヒト医薬品の審査・承認状況のほか、承認の迅速化やデータ収集の充実を図る目的でEUの他機関との協力推進事業にも言及した。また、「イノベーションを医薬品に具現化するためのより良いエビデンス」(Better evidence to translate innovation into medicines)と題する項目を設け、医薬品創出のためにエビデンス収集事業強化を図ったことを報告した。第2章では、2024年の業績などの統計を記述した。
審査・承認状況(ヒト医薬品)では、2024年は114剤について承認勧告し、うち46剤が新規有効成分だった。また、希少疾病薬など優先審査対象とする薬剤を指定するPRIME
(PRIority MEdicines)には、58剤の申請があり、56剤が指定された。EMAは、エビデンスをベースとした規制上の決定の向上を目的に、「EUにおける臨床試験加速化」(ACT EU)および「データ分析およびリアルワールド質問ネットワーク」(DARWIN EU)などのプロジェクトに投資を行った。
これらプロジェクトは、医薬品製造方法の進化や患者や公衆衛生上の便益のためにAI(人工知能)の活用を行う。併せて、欧州医薬品規制ネットワークとの協力も推進している。
リアルワールドエビデンス(RWE)創出事業では、EMAは、HMA(欧州医薬品規制当局首脳会議)と共にRWEデータの価値と活用方法の確立を目指し、共同ビジョンに向け取り組んだ。その一環として、EMAは、委員会や各国規制当局からRWD(リアルワールドデータ)を収集、報告書をまとめたが、それによると、2023年2月から2024年2月までに40本の終了した臨床試験が含まれ、そのうち13本は、ワクチンの安全性・有効性についての試験で、2本は抗生物質、1本はGLP-1受容体作動薬服用患者の自殺・自傷のリスクを試験したものだった。GLP-1 受容体作動薬の試験では、EMA安全性委員会が同剤に自殺などと因果関係がないと結論付けることに役立ったとしている。