住友ファーマの木村徹代表取締役社長は10月30日の2025年度第2四半期決算説明会で、北米基幹3製品の想定以上の伸びなどにより、25年度通期予想を上方修正したと発表した。売上収益は期初計画の3550億円を4290億円に、コア営業利益は同560億円を970億円に引き上げた。木村社長は業績予想の上方修正に、「我々の取組みが数字になって表れていることに非常に喜んでいる」と話す一方、「まだ再建途上」と気を引き締め、「規律のある経費の使い方をして更なる上を狙っていきたい」と述べた。
◎25年度上期 コア営業利益961億円、過去最大 アジア事業譲渡益490億円の計上も
25年度上期の連結業績は、売上収益は前年同期比25.7%増の2271億円、コア営業利益は961億円(前年同期はゼロ)、最終利益989億円(同322億円の赤字)――だった。コア営業利益は過去最大を記録。北米基幹3製品(オルゴビクス、マイフェンブリー、ジェムテサ)の伸長に加え、事業構造改革による販管費・研究開発費の減少が寄与した。さらに、▽オルゴビクスが売上5億ドルを超えたことによるファイザーからの販売マイルストン1億ドル(約149億円)の受領、▽アジア事業の一部持分を丸紅グループに譲渡したことによる譲渡益490億円の計上――といった特殊要因も利益を押し上げた。
一方、国内売上は11.3%減の469億円と厳しく、エクア及びエクメットの特許切れ・後発品参入の影響が大きかった。
◎オルゴビクスは94.7%増の691億円 ジェムテサは71.9%増の434億円
製品別にみると、北米基幹3製品の経口前立腺がん治療薬・オルゴビクスは94.7%増の691億円、過活動膀胱治療薬・ジェムテサは71.9%増の434億円と大きく伸長した。25年度期初計画に対する売上進捗率は、オルゴビクス67.1%、ジェムテサ52.3%――で、想定以上に売上げが伸びたことがわかる。子宮筋腫・子宮内膜症治療薬・マイフェンブリーは4.9%増の63億円だった。
オルゴビクスは前立腺がんに対する唯一の経口剤という特長が市場浸透した。また、IRA(インフレ抑制法)に基づき今年1月から、メディケアパートDの患者自己負担上限が3250ドルから2000ドルに引き下げられたことで販売数量が大きく増加し、結果、売上拡大につながった。
ジェムテサは価格重視に方針転換。さらに血圧上昇の警告がない、薬物相互作用が少ないといった臨床的価値が浸透したことで販売数量もおおむね維持でき、売上が伸びた。
マイフェンブリーは販売戦略の見直しと営業経費の削減を実施した上で増収を維持した。木村社長は「売上数字には表れていないが、単品での黒字化を達成した」と評価した。
◎25年度通期予想 オルゴビクスは1479億円 期初計画から449億円積み増し
25年度上期に北米基幹3製品が想定以上の伸びをみせ、下期も引き続き好調に推移すると見込み、通期業績予想を上方修正した。
修正後の売上収益は4290億円(期初計画比740億円増)、コア営業利益970億円(同410億円増)、営業利益980億円(同440億円増)、最終利益920億円(520億円増)――。製品売上予想は、オルゴビクスを1479億円(449億円増)、ジェムテサを853億円(24億円増)に上方修正する一方、マイフェンブリーは期初計画の123億円を据え置いた。販管費及び研究開発費は通期でほぼ期初予想並みとしたが、下期に大きな額が発生する。
◎下期のコア営業利益予想は9億円 「強い利益を出していく」ことに意欲
コア営業利益は、上期に961億円を計上したのに対し、通期予想は970億円のため、単純計算で下期分は9億円となる。下期は北米基幹3製品の売上拡大を見込むものの、販売費用の増加や円安による利益の圧迫が想定される。次の収益基盤として期待する急性骨髄性白血病を対象とした抗がん剤・enzomenibの日米での開発費も大きくなる見通しで、同剤は現在第2相段階にある。
木村社長は、「25年度はアジア事業の譲渡益など一時的要因がかなり入っている。下期の数字が我々の現状の実力を示していると思っている。コア営業利益は単純計算で下期9億円と寂しい数字になる」と述べた。その上で、コア営業利益の財務目標である”一時要因を除き安定的に250億円以上を計上(27年度以降)”を目指して、「強い利益を出していく」ことに改めて意欲を示した。
◎27年度目標の北米3製品合計売上2500億円 「確実に1年前倒しで達成」
同社は、北米でピーク時売上が2000億円強あった抗精神病薬・ラツーダの特許切れ対策が次々と失敗し、未曾有の経営危機に陥った。23年度には1330億円のコア営業損失、3150億円の最終赤字を計上した。23年度から24年度にかけて北米及び日本での人員削減や研究開発プログラムの絞り込みなど収益改善・事業構造改革に全社を挙げて取り組み、業績回復を託した北米基幹3製品の早期最大化に向けリソースを集中した。結果として、24年度は2ケタ増収と黒字化を達成した。
25年度から27年度の3年間は「力強い住友ファーマへの再始動」の期間と位置付け、活動方針「Reboot 2027」を策定した。Reboot 2027では、北米基幹3製品を中心とした既存製品の価値最大化と徹底したコスト管理による損益基盤の確立に取り組むこととし、がん及び再生・細胞領域の自社イノベーションの結実を必達目標とした。数値目標としては、▽27年度までに北米基幹3製品の合計売上を2500億円規模に拡大、▽コア営業利益は一時要因を除き安定的に250億円以上を計上(27年度以降)――などを掲げた。
木村社長は、25年度の修正後の北米基幹3製品の合計売上が2400億円を超える見込みであることから、「確実に来年度(=26年度)に2500億円を超える。(3年計画の)1年前倒しで達成ということになり、非常に喜んでいる」と述べた。
◎国内営業 10月から再び疾患領域担当に CNSや糖尿病領域の取扱製品の増加に対応
このほか木村社長は、国内営業体制について、10月から全製品担当から疾患領域担当に再び変更したと紹介した。
同社は24年度に事業構造改革の一環として日本で早期退職者を募集し、国内MR数が約4割減少した。このため24年12月からは、それまでの疾患領域担当制からエリア制(全製品担当)に変更していた。しかし、再び疾患領域を採用することにした。疾患領域担当は、▽CNS領域、▽糖尿病領域(肥満症含む)、▽希少疾病領域――となる
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体制変更の理由は、住友ファーマの取扱製品が一気に増えたため。具体的には、▽25年2月からヤンセンファーマの持効性抗精神病薬のゼプリオンとゼプリオンTRIのコ・プロ開始、▽7月からノボ ノルディスク ファーマの2型糖尿病薬・オゼンピックのコ・プロ開始、▽11月からノボの肥満症薬・ウゴービのコ・プロを開始予定――となる。
木村社長は、「今年に入ってから取扱製品がCNS領域で2製品、糖尿病領域で2製品増えた。それぞれの領域の専門MRが取り扱った方が、より戦略的・機動的に展開できる」と説明し、「今後はより強い専門性の高い営業力で、製品プロモーションを進めていく」と述べた。
【連結業績 (前年同期比) 25年度予想(前年同期比)】
売上収益 2271億2200万円(25.7%増) 4290億円(7.6%増)←修正前3550億円
コア営業利益 960億8400万円(-) 970億円(124.8%増)←修正前560億円
営業利益 961億5700万円(-) 980億円(240.2%増)←修正前540億円
親会社帰属純利益 988億6000万円(-) 920億円(289.3%増)←修正前400億円
【国内主要製品売上高(前年同期実績) 25年度予想、億円】
ラツーダ 69(67) 135
ツイミーグ 50(36) 112
メトグルコ 37(38) 76
エクア・エクメット 75(142) 70
ロナセンテープ 25(23) 52
オーソライズドジェネリック品 61(56) 116