オンコリス・浦田社長 腫瘍溶解ウイルス・テロメライシン注の「通常承認」報告 初期採用80施設目指す
公開日時 2026/06/09 04:52

オンコリスバイオファーマの浦田泰生代表取締役社長は6月8日、東京都内で記者会見に臨み、腫瘍溶解ウイルス・テロメライシン注(一般名・スラタデノツレブ:OBP-301)について食道がん局所治療薬として厚労省から製造販売承認を取得したと発表した。取得効能は「根治切除または化学放射線療法の適応とならない食道がん」。同領域で世界初の腫瘍溶解アデノウイルス製剤となる。浦田社長は、条件及び期限付き承認に同剤は該当せず、「通常承認」だったと強調した。今後は薬価収載を経て、「夏頃に販売開始したい」と期待感を滲ませた。販売委託先は富士フィルム富山化学。発売初期は大学病院、基幹病院、がんセンターなど約80施設、1年後約300施設の採用目指す。同社はマイルストーン収入を26年12月期売上収益に計上する。
◎ウイルス創薬のコンセプト「がん細胞にだけスイッチが入る遺伝子を搭載」
浦田社長は会見で、ウイルス創薬のコンセプトを語った。「テロメライシンは、テロメラーゼプロモーターという、がん細胞にだけスイッチが入る遺伝子を搭載しており、がん細胞だけを特異的に殺すことができる。当社は創業以来これに取り組んできた」と振り返る。その上で、開発ターゲットについては、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんなど、「大企業が狙うところでなく、ニーズがいまだ満たされない消化管の中で“食べ物の入り口から出口まで”をターゲットに据えることにした」と明かしてくれた。
食道がんの局所治療を選択した理由について浦田社長は、「長時間の手術は術後合併症のリスクが高い。一方、化学療法は吐き気や手足のしびれがある。免疫チェックポイント阻害薬も局所治療にはあまり効かない」と現治療法の抱える課題を指摘する。加えて国内のがん種別5年生存率も食道がんは他のがん種に比べて低率であるなど、「開発する価値がある」と判断したと語っている。
◎岡山大学で臨床研究 食道がん(Stage II–III)、根治切除や化学放射線が適用困難な患者
一方で、「様々な問題があった」と振り返る。高齢者や心臓病を抱える患者に長時間の手術は耐えられない。肝臓・腎臓の機能低下により化学療法が困難な患者もいる。そうした中で、食道がん患者(Stage2~3)のうち、根治的食道切除や化学放射線療法が適応困難な患者を対象に、放射線治療(平日毎日×6週間)、テロメライシンを2週間おきに内視鏡下局所投与を3回行う臨床研究を2013年から岡山大学で着手する。ここでの研究の積み重ねが、後の製造販売承認申請の資料として評価されることになる。
◎「テロメライシン+放射線療法」 局所完全奏効率24週で41.7%、18か月で50.0%
テロメライシンの内視鏡的腫瘍内投与と放射線治療を併用する臨床研究(岡山大学学術研究院医歯薬学域 消化器外科学分野・藤原俊義教授、黒田新士准教授ら)は、2020年から岡山大学病院を含む食道がん治療のハイボリュームセンター全国17施設での多施設共同で第2相臨床試験が実施された。その結果、「テロメライシン+放射線療法」の局所完全奏効率は24週で41.7%、18か月で50.0%、局所完全奏効率+局所著効は、24週で58.3%、18か月で63.9%となり、臨床研究での放射線単独療法の局所完全奏効率22%を大きく上回った。会見で浦田社長は、「実証研究を始めてから13年かかった。まあ、長い道のりでした」と感慨を込めて振り返った。
◎自社MR未整備で富士フィルム富山化学に販売委託 薬価交渉「過度な高額化は避ける」
製造販売承認を受け、浦田社長は販売体制の整備計画を明らかにした。自社のMRは未整備のため販売は富士フィルム富山化学に委託。市販後調査は全例を基本とし、迅速な情報収集体制を構築する方針。市場導入については、発売初期は大学病院、基幹病院、がんセンターなど約80施設を想定。1年程度で内視鏡実施能力とICU等を備えた中規模以上の医療機関約300施設まで拡大する。このほか浦田社長は、現在薬価交渉中であることを明らかにしながら、夏頃の薬価収載を経て販売開始する考えを述べた。なお、薬価について浦田社長は、「近年の再生医療等製品の事例を踏まえつつ、過度な高額化は避け、開発費の回収が可能な水準を目指す」と述べた。