慢性骨髄性白血病治療薬・スプリセルの医師主導臨床研究でBMSが不適切関与 SIGN研究調査委

公開日時 2014/06/25 03:53
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ノバルティスの東大担当MRらの関与が指摘されたSIGN研究問題で、東京大学医学部附属病院は6月24日記者会見を開き、慢性骨髄性白血病治療薬・スプリセル(一般名:ダサチニブ)の医師主導臨床研究で、ブリストルマイヤーズ(BMS)がプロトコル作成に携わる不適切な役務提供があったことを明らかにした。そのほか、寄付講座の教員が寄付元の製薬企業の販売する製品の臨床研究に携わっているケースについても指摘された。同院が全臨床研究を対象に行った実態調査の中で明らかになった。


調査の過程で、製薬企業の関与が判明もしくは懸念されたのはSIGN研究を除き、ノバルティスファーマが4試験(すべて血液・腫瘍内科)、そのほかの製薬企業・医療機器メーカーで14試験あった。内訳は、試験薬や治療機器の無償提供が3件、臨床研究で使用する薬剤や機器等を販売する企業からの奨学寄附金の受け入れの申告が3件、寄付講座の教員の臨床研究への参加に関する申告が5件、役務提供などが3件。


中でも問題視されたのは、BMSの医師主導臨床研究「初発慢性期慢性骨髄性白血病に対するダサチニブの第2相臨床試験」。研究は、未治療の慢性期慢性骨髄性白血病へのスプリセルの有効性・安全性を検証することを目的に、全国75施設で実施されていた。主要評価項目投与後12か月時点での分子遺伝学的大寛解率(MCyR)。2011年7月~13年6月までに86例が登録されていた。研究代表者をSIGN研究の主任研究者でもある同大血液・腫瘍内科の黒川峰夫教授が務め、事務局を公益財団法人 大阪成人病予防協会が務めていた。

同研究では、「臨床研究のデザインをほぼ企業が作成する不適切な役務提供があった」と指摘。「本来、研究対象の製品を販売する企業とは独立して実施されるべき医師主導の臨床研究として適正性を欠いており、利益相反の観点から不適切であると判断」した。ただ、データセンターは外部にあったことから、データ改ざんの可能性は低いとしている。調査委は、研究の中断を主任研究者である黒川教授に勧告。同研究は14年5月9日に中断されている。


製薬企業の不適切な関与が明らかになった事例が血液・腫瘍内科に集中している点について、SIGN研究に係る特別調査委員会の松本洋一郎委員長は「ちょうどこの領域の薬剤の競争がピークになっていたという面は明らか」と話し、慢性骨髄性白血病治療薬の市場競争の激化が背景にあるとの認識を示した。


◎寄付講座の教員が主任研究者務める例も 問われるCOI管理の重要性


調査ではそのほか寄付講座の教員が当該製薬企業の製品に関連する医師主導臨床研究の主任研究者となっているケースが2件あることも判明した。①第一三共の寄付講座で、降圧薬・オルメサルタンとアジルサルタンの有効性・安全性を比較する群間試験を実施、②田辺三菱製薬が一部奨学寄附金を拠出する寄付講座で、関節リウマチ(RA)に対する生物学的製剤の有効性、安全性に関する検討―の2件。

オルメサルタンとアジルサルタンの比較研究では、プロトコル、被験者への説明書、倫理申請に寄付講座の寄付金で実施することは開示されていた。研究は終了しているが、結果は未公表。


RAの研究では、血中濃度の測定について製薬企業側の役務提供を受けることとなっていたが、登録は2症例にとどまっており、まだ測定は行われていなかった。同大では、いずれも主任研究者から利益相反の申告がなかったことを説明。適切な利益相反の管理が重要であるとの考えを強調した上で、現在はチェックリストを活用して厳重な管理を行っているとした。


◎MRの自由な院内出入りが処方誘導の一因 MRの訪問規制を強化


調査では、SIGN研究を含め、このような事案が起こった背景として、①研究者の臨床研究への知識不足や心構えの甘さが根底にあった、②MRが入院病棟内の研究事務室に自由に出入りできたことが、役務提供や情報提供などが行われる誘引となった、③臨床試験審査委員会(IRB)に提出される研究申告書が自己申告だった―ことを挙げた。

研究者の知識不足については、「臨床研究、特に研究者(医師)主導臨床研究に対する知識不足と心構えの甘さが根底にある」と指摘。「利益相反に関する自己申告に具体的な例示が乏しく、自主的に判断して行わなければならないことによる」と指摘した。これを改善すべく、東大研究倫理セミナーやe-Learningでは、ディオバン問題など具体的な事例を取り上げるように変更した。

MRの訪問規制については、4月1日から強化した。これまでも医師との面会に際しては、アポイント制だったが、これを徹底。入院病棟において教職員との事前アポイントがなければ入館禁止としたほか、アポイント終了後にも退館記録を義務付けるなどした。医師との面会エリアも管理・研究エリアに限定し、入院病棟や外来などの診療エリアへの立ち入りを禁止した。東大病院の門脇孝院長は、「これまで退館を義務付けていなかったため、実際には(MRが)アポの時間以降夜遅くまで残っていた」と説明。「医師に対して処方誘導などの不適正な行為が行われていた。適切な規制になっていなかったと反省している」と述べた。ただし、「適正な情報提供、薬の有効性・安全性など正しい情報提供活動は、適正な産学連携活動に含まれる」との考えも示した。


そのほか、ノバルティスへの対処として、同社が行う臨床研究は実施せず、奨学寄附金の受け入れを中止することも明らかにした。現在設置されている寄付講座についても期限終了に伴い終了し、寄付講座の新設はしない。期限は未定。


◎東大病院・門脇氏「再発防止に教育と臨床研究の品質管理が必須」

再発防止に向け、門脇院長は、「教育と臨床研究の品質管理を組み合わせて行っていくことが必須だと考える」との考えも表明。品質管理の方策として、臨床研究の監査・モニタリング体制の整備を進める考えを示した。各診療科からの委員を含めることで、院内で相互にチェックできるシステムとする。

門脇院長は、「研究チームの中に研究を進めるグループと(臨床試験の)品質管理するグループを置く。工場でも生産のラインと品質管理のラインがあるように、研究チームの中に品質管理、モニタリングの係を置く」と説明した。IRBへの研究申請書にもモニタチングや監査計画を明記し、試験開始後は適切に実施されているかチェックする考えを示した。また、モニタリングや監査は、▽臨床研究のGLなどへの影響の大きさ、▽患者のリスクの度合い、▽利益相反の度合い―の3点に応じてグレードを分け、頻度を決めるという。

会見では、SIGN研究の主任研究者である黒川教授が同日付で教員懲戒委員会の審議にかけられたことも報告されたが、自身の進退については「再発防止のためにいままで進めてきたことをしっかり進めることで自分の責任を全うしたい」と述べた。


【おことわり】下線部分について東京大学から、会見中に研究事務局は大阪府立成人病センターとの説明がありましたが、大阪府立成人病センター内に設置されている「公益財団法人 大阪成人病予防協会」の誤りだったとの申し入れがありました。本文修正済(6月26日17時54分)

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