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中医協総会 調剤権の強化・拡大めぐり火花 支払側は「次期診療報酬改定の重点課題」

公開日時 2016/10/20 03:52

中医協総会は10月19日開かれ、調剤権の強化・拡大をめぐり、支払側・診療側で激しい火花が散った。10月10日に名古屋で開かれた日本薬剤師会学術大会で支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が、「調剤権を処方権と同等に近づける」などと述べ、調剤権の強化・拡大を次期診療報酬改定の重要課題に位置づける考えを示したことに対するもの。(本紙既報、記事はこちら)診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「医師の処方権と薬剤師の調剤権を是正するというのは暴論だ」と述べるなど、猛反発した。これに対し、支払側は、花井十伍委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)も、がん化学療法では世界的にも薬剤師が処方提案を行っていることなどから、薬剤師の職能が次回改定の論点であるとの見方を示した。次期診療報酬改定に向けて、支払側は、後発医薬品や残薬対策などをめぐり、薬剤師の“調剤権”に焦点を当てる姿勢を鮮明に打ち出した。


幸野委員は、日薬学術大会での講演はあくまで健保連の一理事としての発言と断った上で、改めて「医師の処方権、薬剤師の調剤権、格差があるという中で、40年間医薬分業が進んできた」と指摘。結果として、「薬剤師の本来もっている医薬品の選択を捨てて、医師の強い処方権のもと地理的優位性に甘んじてしまった」と述べ、門前薬局に代表されるような立地に依存したビジネスモデルに変化してきてしまったことに強い問題意識を示した。その上で、本来の薬局が持つ機能として、「OTCの活用やセルフメディケーションの相談役など、医者に行く前に行くところが薬局ではないか」と述べ、薬局、薬剤師がセルフメディケーションの推進役として旗を振ることに期待感を示した。


発言の場が、多くの保険薬局薬剤師が詰めかけた場であったことから、「薬剤師にも責任があるというお叱りを込めてエールを送った。2016年度診療報酬改定で、かかりつけ薬局・薬剤師の制度もできたので、薬剤師としての地位を向上してほしい。国民の求心力を高めて医薬品に関しては専門家として、医師と同等の立場で調剤権を発揮できるよう頑張ってくださいと言うエールを送った」と意図を語った。


これに対し、診療側の中川委員は、公の場での発言を問題視。「根本的に大問題。医師の処方権と薬剤師の調剤権がどの辺でバッティングするのか。全く文脈が違う。医師は医師法に基づいて公的に決められている。薬剤師は、医師の処方に基づいて、処方せんに基づいて処方を整える。格差が大きいと言っている意味が分からない」と指摘した。


◎後発医薬品、残薬対策での“医薬品の選択”が焦点


特に、“調剤権”、さらには医薬品の選択をどう位置付けるかで、両者の意見は大きく食い違いをみせた。医療費適正化の観点から、後発医薬品の浸透や、残薬、多剤併用の解消は次期改定の重点事項となることが想定される。幸野委員は、「例えば、後発医薬品の処方せん、今でも残っている変更不可はおかしい。医師の処方では一般名を処方し、医薬品の選択は薬剤師が判断すべき」との考えを表明。残薬についても、「医師に疑義照会をした後ではなく、薬剤師自らが調剤できるような仕組みを作っていくべきだ」と述べた。


これに対し、中川委員は、「患者を診断し、どういう治療をするか資格として認められているのは医師で、薬剤師には認められていない。どの薬を使うかということも、医師が決める。一般名で処方して、どの薬を使うかは薬剤師が判断する、決めるというのは暴論に近い」と猛反発。患者を診察していない薬剤師が医薬品を選択するのであれば、「調剤薬局の在庫をみて残っているから使おうというのが自然ではないか」などと述べた。


そのほか、リフィル処方せんの導入による効果についても「医療費の適正化につながるのは当たり前の考え方だと思う」と主張する幸野委員に対し、「医科の点数が調剤点数に移行するだけ。医療費の削減にはつながらない」と中川委員は述べ、真っ向から食い違った。


◎診療側・安部委員「調剤する上での薬剤師としての義務を果たす」



こうした議論に対し、診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「調剤権の拡大ということではなく、調剤する上でどういう義務を負っているのかをきちんと考えていく。それが結果として、地域の中で連携し、地域の中で薬剤師がきちんとした機能を発揮する」と述べ、薬剤師としての役割、義務を果たすことが重要との考えを示した。その上で、薬剤師としての職能を発揮するためには、医師との連携が不可欠との考えも示した。


これに対し、中川委員は賛意を示した上で、「医薬分業は必ずしも大賛成ではない。患者にとって、むしろデメリットが大きいように思う。国の政策としてきた以上、できるだけ支障がないように改善していくのが我々の務めだ」と述べる一幕もあった。


 

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