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卸連・宮田会長「物価上昇でコスト増、転嫁を」逆ザヤで問われる卸の価格形成機能「データもとに議論」

公開日時 2025/07/10 07:30
日本医薬品卸売業連合会(卸連)の宮田浩美会長は7月9日の中医協薬価専門部会で、「物価上昇等に伴うコスト増加を適切に価格転嫁できる仕組みを検討いただきたい」と要望した。後発品や長期収載品は仕入原価の上昇傾向が強く、薬価も低いため、「流通コストを賄える状況にはない」と強調し、薬価上の措置を求めた。医療現場からいわゆる“逆ザヤ”が指摘され、医薬品卸の価格形成機能も問われている。こうした中で、「まさに不採算取引になっている」との見方を表明。「不採算になっているものと、流通にかかるコストがどういう関係にあるのか。これからデータをしっかり調査して、お示ししていきたい」と取引実態を明らかにしたうえで、流通当事者で議論する姿勢も鮮明にした。

◎後発品・長期収載品 金額は2割も品目数・物量は6割

医療用医薬品市場の構造について後発品・長期収載品は、取扱金額で22%に過ぎないが、品目数では58%、物量割合では63%を占めていると説明。さらに、約20%の後発品はいまだ限定出荷となる中で、低薬価品でも安定供給に努めていると説明した。

今年6月に閣議決定された骨太方針に、「医薬品の安定供給に向け、取り巻く環境の変化を踏まえた持続可能な流通の仕組みの検討を図る」ことが明記された。宮田会長はこれを引き合いに、「薬価下落を前提とした薬価制度の下で、物価高騰など社会経済の変化に流通当事者の自助努力だけでは対応できない」と指摘。「持続的な医薬品の安定供給のため、流通不採算にならないとともに、物価上昇等に伴うコスト増加を適切に価格転嫁できる仕組みを検討いただきたい」と訴えた。

◎逆ザヤ問題で診療側・森委員「卸の価格形成機能発揮を」

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「過度な薬価差の偏在が課題となっているが、中小の薬局では薬価差がほとんど出ず、逆ザヤとなっている品目が増加している」と指摘。「卸の重要な機能の一つである価格形成機能を発揮していただきたい」として、卸としての価格形成機能の発揮に対する業界の考えを質した。

宮田会長は、「(薬価差の偏在等について)継続的に我々としてデータを出しながら皆様方としっかり議論していきたい」と表明。「薬価差については、卸だけの話ではなくて、流通改善ガイドラインをしっかりと医療機関、保険薬局の皆様とも共有しながら、価格のあり方、安定供給に資する必要なコストを、しっかりと乗せていくということが必要」との考えを示した。

逆ザヤ問題については、「メーカーの仕切価自体が薬価である、あるいは仕切価がいわゆる本体薬価でこれは消費税を引いたもの。それからもう一つは調整幅を引いた仕切価と、大きくはこの3つに分類できる。そこに卸の流通経費を乗せようとすると、薬価を超えてしまうという現状が、以前からあったが、今年度は非常にある」と説明。メーカーとともに、「厚労省の方と流改懇の方でしっかりと調査をしていくということに協力しながら、この中身を見ていきたい」と応じた。

そのうえで、逆ザヤの品目は、「まさに不採算取引になっている」と表明。20円未満など、いわゆる低薬価品で流通コストを反映するのが「非常に厳しい状況」と指摘した。宮田会長は、「流通改善ガイドラインを周知徹底、実効性のあるものにしていくことが非常に重要」としたうえで、「不採算になっているものと、流通にかかるコストがどういう関係にあるのかを、これからデータをしっかり調査して、お示ししていきたい」と応じた。

診療側の森委員は、見積もりの時点で逆ザヤの品目が20%に上る保険薬局もあるとして、「医療機関・薬局の経営が立ち行かなくなる。しっかり対応をお願いしたい」とクギを刺した。

◎ジェネリックの仕入原価3年間で2%以上増 「不採算の取引状況調査し、流通当事者として実態把握」

宮田会長は、「メーカーからの仕入原価が、この3年間だけ見てもジェネリックは2%以上あがっている。メーカー別に見ても10%上がっているとか、品目によっては非常に大きな形で仕切価が上がっているものがある」と説明。「調査し、どういう状況なのかっていうことを医療機関、保険薬局の皆様、それから卸、製薬メーカーも含めて流通当事者としてしっかり把握する必要があるのではないか」と指摘。「こういったことができないと、卸の方だけでこれをかぶるというか、不採算取引を続けていくというのは持続可能な流通を担保するものではない。ぜひこの点はしっかりと進めていきたい」と述べた。
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