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中医協総会 AD治療薬・レケンビの費用対効果 総合評価は薬価15%引下げ 初の介護費用扱い考慮

公開日時 2025/07/10 06:58
中医協総会は7月9日、アルツハイマー病治療薬・レケンビ(一般名:レカネマブ)の費用対効果評価について公的分析を用いた総合評価を了承した。総合評価では、介護費用を含めた場合と含めない場合で分析したものの、いずれも価格調整後の薬価は下げ止めに当たる15%の薬価引下げとなることが示された。今後、薬価算定組織で価格調整後の薬価を検討し、改めて総会で議論する。公的介護費用を含めた分析が行わるのは、日本では初めて。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)が「介護費用とは何を示し、それをどのように評価したのかといったことを明確に説明した資料を示す必要がある」と指摘するなど、診療・支払各側から丁寧な議論を求める声があがった。

レケンビをめぐっては、エーザイが提出した薬価基準収載希望書には、介護費用の軽減についてのデータが含まれており、費用対効果評価での取り扱いをすることとなった。23年12月13日の中医協費用対効果評価専門部会で、「特例的な対応」を行うことが決定。価格調整範囲は、「ICERが500万/QALY」を閾値として、見直し前の価格の差額を算出し、差額の25%を調整額とすることとされた。

この日は、企業分析をもとに公的分析が検証、再分析を行った上で、専門組織で検討した総合評価案が提示された。アルツハイマー病による軽度認知障害(比較対照技術:非薬物療法)、アルツハイマー病による軽度の認知症(比較対照技術:ドネペジル+非薬物療法)はいずれも、ICER(円/QALY)の区分は「1000 万円/QALY 以上」。「公的医療の立場」、「公的医療・介護の立場」のいずれも、価格調整後は薬価引き下げの限度に当たる15%の引下げとなった。200mg製剤は3万8910 円、500mg製剤は9万7277 円。なお、現行薬価は、200mg製剤は4万5777 円、500mg製剤は11万4443 円。

◎長島委員 介護費用とは何か示し、どう評価したのか明確に説明した資料提示を

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「前提として、費用対効果評価における介護費用とは何を示し、それをどのように評価したのかといったことを明確に説明した資料を示していただく必要がある。そうでなければ議論ができない」と指摘。「費用対効果評価における介護費用の取り扱いについては、これまでやったことがなく、今回の扱いがまさに今後の取り扱いに影響することになり、大変大事な論点ですので、この点について丁寧に議論することが必要」として、これらを条件として事務局の示した対応案を了承した。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「介護費用の取り方については、公的医療の立場から介護負担軽減の社会的価値を認め、それを費用対効果評価制度で評価するのか。するのであれば、何を評価軸としていくのか。費用対効果評価制度の中でどこまで見ていくのかなど、まだ議論が詰め切れていないところがあると思っている。今回のレケンビは介護の扱いが企業から提案のあった初めての事例であり、丁寧な議論が必要だ」と述べた。

◎松本委員 介護費用を医療保険で評価したものとすれば、影響は決して小さくない

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「介護費用の軽減効果を医療保険の財源で評価することについては、公的医療保険の哲学そのものに関わる重要な案件だと考えている」と表明。比較対照技術と費用対効果が同等となる「ICERが500万/QALY」を超える価格をみると、200mg製剤では約2700円、500mg製剤では約7000円の差が生じていることに触れ、「究極的にはバイアル1人につき、この金額が介護費用を医療保険で評価したものとすれば、医療保険制度への影響は決して小さくないと言わざるを得ない」と指摘した。現行薬価が「ICERが500万/QALY以上となる価格」の3~4倍であるとして、「価格調整範囲の在り方を考える上で非常に示唆があるデータになっている」と指摘。「医療現場において、治療方法を選択する場合にも活用できると思う」と述べ、今後もICERが500万/QALY以上となる価格を公表することを求めた。

また、中医協に専門家にヒアリングした際にも、介護費用の取り扱いを費用対効果評価に反映するための技術が確立されていないとの意見があったことを引き合いに、「中医協で判断するには情報が不足しているように思う。どのような費用をどのように考慮したのかも、もう少し具体的に整理していただき、それが技術的に確立されたものなのか、まだ試行錯誤の段階なのかについて、一定のご判断をお示しいただきたい」と要望した。「今回、公的介護だけでなく、効果の面で家族介護者のQOLを一部考慮するということで、これも初めての取り扱いだと思う。もう少しその妥当性を検討する必要がある」と指摘した。

エーザイ 「公的医療・介護の立場」で分析 ほぼ現行薬価と同じ価値が得られている

同日の中医協資料によると、製造販売業者のエーザイによる企業分析と公的分析の間の隔たりがあり、エーザイから長期推計方法と分析モデル、介護者QOLの算出方法について不服意見が出され、議論がなされた結果、専門組織は公的分析結果が妥当と結論付けている。

エーザイは同日、「分析の根幹となる分析モデルの構造が異なる上、レケンビの有効性の推計方法、介護者 QOL の算出方法においても隔たりがあった」ことを説明するリリースを公表。企業分析によるICERでは、希少疾患などの閾値に用いられる750 万円/QALY を基準値の価格とした場合の「公的医療・介護の立場」についても分析をしており、その結果、ほぼ現行薬価と同じ価値が得られているなどとしている。エーザイは、「今回の費用対効果評価は、レケンビ特例による価格への評価であり、レケンビの有効性、効能効果に影響を与えるものではない」と説明。「実臨床の実態に即した本剤の真の価値を学術論文等で引き続き発信していくとともに、レケンビがもたらす価値に対する適正な評価を引き続き求めていく」としている。



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