【Focus】薬価の消費増税改定の行方 患者心理を政権与党がどう読むかがカギ 

公開日時 2018/10/09 03:51
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第4次安倍改造内閣は10月5日の経済財政諮問会議を契機に、2019年10月の消費税率引き上げの議論を本格化した。製薬業界にとって最大の関心事は、現行の消費税率8%から10%への引き上げに伴う薬価改定の実施スケジュールだ。諮問会議で安倍首相は、「景気の回復基調が持続できるよう、対応を検討して欲しい」と述べ、軽減税率の実施などについて要請した。ただ、民間議員が配付したペーパーでは、消費税率が二桁となることで消費者心理の影響は否めないとし、疾病リスクの高まる60歳以上の消費者態度指数の低下などに留意する必要性も強調している。患者の受診動向にも影響するため無視できないところだ。急速に高齢化が進む中で、医療費負担と消費税率の引き上は切っても切り離せない。年末の予算編成に向けて調整が本格化する薬価の増税改定のスケジュールにも、こうした課題は少なからず影響するだろう。


安倍政権は、これからの3年間の取り組みについて「全世代が安心できる社会保障制度の構築」を最重要課題に掲げている。人口減少社会への対応と労働生産性の確保を旗印に、地域経済、国民生活、財政のそれぞれをキーワードに据え、必要な施策を断行する構えだ。それを象徴するかのように、経済財政諮問会議に示されたメニューには、健康増進、重症化予防、インセンティブ改革、ビッグデータを活用したデジタルトランスフォーメーションなど、これまでの社会保障をめぐる議論とは異なるキーワードが多数埋め込まれた。


医療、介護をめぐる論議は、患者負担や給付範囲にフォーカスする改革項目が多数みられた。ところが、これまでの議論は、こうした問題を重ねながらも、なかなか関係者間で十分な結論を見出すには至らず、「パッチワーク的改革」と揶揄された感は否めない。一方で、近年はインターネットやスマホが我々の日常生活に深く入り込むようになり、加えてビッグデータや人工知能(AI)など、新たな社会システムや社会インフラの登場により、リアルワールドデータ(RWD)を軸とした政策の立案や、新たなサービス(ソリューション)の産業化などにスポットライトが当たるようになる。その結果、これまで経験則をベースとした社会保障改革論議も実態のエビデンスデータや消費者の嗜好や行動など、リアルベースの議論が可能となり、その生産性を見直す議論を後押しするようになってきた。


10月5日は未来投資会議が首相官邸で開催され、新たな成長戦略の方向性が示された。AIやセンサー、IoT(Internet of Things)、ロボットといった最新技術を駆使した産業構造改革(第4次産業革命)と、新たなマーケットへの投資を狙ったSociety5.0の実現を成長戦略の柱に据える方向性が示されている。まさに全世代型の社会保障制度を下支えする新たな技術とソリューションを並べ、新たなマーケットを創造し、地域やエリアごとに循環型経済のモデルを構築する。その延長線上に健康寿命の延伸や、これに伴う労働生産人口の確保と生産性の向上を描いているのだ。


◎2019年4月に薬価改定する意味


諮問会議に示した民間議員のペーパーによると、安倍政権下で国民医療費は年平均1.0%、介護費は3.8%と、その伸び率はここ数年で抑制されていると報告している。この主要因として、薬剤費の伸びの抑制が最も大きいと分析した。2018年4月実施の薬価制度抜本改革に見られるように、薬剤費の伸びの抑制は製薬企業各社の業績に反映されている。社会保障費の伸びの抑制については、過去3年間行った自然増の伸びの抑制を、引き続き「5000億円を下回るよう抑えるべき」との意見が民間議員から示されている。こうした発言は、当初の考え方が緩むことはないことを暗示したものだ。こうした環境下で19年10月には消費税の引き上げが行われるのだ。


では、こうしたスタンスのもとで消費増税に伴う薬価改定はどのように行われるだろうか。ここまで示したように安倍政権は、地方の労働生産性向上、循環型経済の実現、産業化によるマーケットの創出―を重視した施策を今後優先させることは、もはや明白だ。景気の回復基調を持続することを前提とするならば、消費増税に伴う消費者心理がマイナスに働かないような政策と改革メニューを提示するだろう。特に、60歳以上高齢者の消費心理が冷える施策には慎重になる。もちろん、この場合の消費には医療や介護などの費用負担も含まれるため、一瞬たりとも患者・消費者の負担を増やす施策を打ち出しにくい環境が生まれる。


もう一つ注目すべきは今後の政治日程だ。19年10月の消費税増税の直前には、統一地方選と夏の参院選を控えている。選挙直後にある増税は、選挙民にとって投票行動を起こす最大要因となる。政権与党も、増税を控えるなかでいかに消費者心理を見極め、将来への社会保障への備えと、日々の日常生活のバランスを有権者に訴えることができるかが選挙の勝敗を左右するという訳だ。こうした政治の動きを総合的に勘案すると、医療費の負担も同様で、消費増税に伴う負担感をできるだけ和らげる施策を政権与党が優先することは容易に想像がつくわけだ。


軽減税率や税制改革の議論が、この年末に向けて例年以上にヒートアップすることは間違いない。一方で、焦点の増税に伴う薬価改定の時期についても、こうした背景を踏まえると、すでに浮上している2019年4月実施は、より真実味を帯びてくる。19年10月は増税分の2%を薬価に転嫁するが、結果的に4月段階で薬価が引き下げられているため、患者の窓口負担は軽減され、受診抑制を回避できる。さらに2020年4月には通常改定を控えており、この時の改定は過去3年と同様に、社会保障費の自然増分の抑制が働くため、医療費増の不安感をさらに払拭できるというロジックだ。ただ、あくまで政治マターの推論の域を脱し切れるものではない。ただ、事実だけ伝えれば、すでに18年9月の薬価調査は行っている。製薬業界はあくまで19年4月実施に反対の立場。ただ、仮にだが、19年4月に先行的に行う薬価改定が、増税に伴う患者の負担感を和らげるクッションの役目を果たすとするならば、業界側にとっても、改定薬剤の対象範囲除外などで、まだ議論のテーブルにつく余地はあるのではないか。例えば、全品目を対象とするのでなく、新薬創出等加算品やG1、G2品目を除外するなどだ。
一方で日本医師会など医療関係団体との調整も必要となる。医師会としても増税に伴う患者の受診抑制は避けたいところ。薬価改定財源の取り扱いを含めて、今後の議論を注視する必要がある。

 


 

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