政府の経済財政諮問会議は12月5日、「2026年度予算編成の基本方針」を高市早苗首相に答申した。基本方針では、「次期診療報酬改定等において保険料負担の抑制努力も行いつつ経営の改善・従事者の処遇改善を図る」と明記した。その上で、給付付き税額控除の制度設計を含めた「税と社会保障の一体改革」で国民的議論を進めるための「国民会議」の早期設置に向け、検討を進める方針を明示した。高市首相は片山財務相と上野厚労相の両大臣に対し、次期診療報酬改定などを通じて、「賃上げ、物価高を適切に反映させ、経営の改善や現場で働く幅広い方々の賃上げに確実につながる的確な対応を行う」よう直接指示した。

26年度予算編成の基本方針では、高市内閣が掲げる「責任ある積極財政」の考え方の下、臨時国会で審議中の26年度補正予算案と一体になって編成作業を行う方針を確認した。

◎高市首相　OTC類似薬を含む薬剤自己負担で制度設計を指示　高額療養費制度は年末までに結論

高市首相は諮問会議で、財務・厚労両大臣に対し、「賃上げ、物価高を適切に反映させ、経営の改善や現場で働く幅広い方々の賃上げに確実につながる的確な対応を行う」よう直接要請した。さらに、「“改革工程”に掲げられたOTC類似薬を含む薬剤自己負担や、金融所得の反映などの応能負担の徹底等に関する具体的な制度設計を行う」と強調。当面の対応が急がれる課題として、「高額療養費制度や介護の利用者負担を見直し」をあげ、年末までに結論を得た上で、26年度予算編成や制度改正に反映させるよう指示した。

◎片山財務相　次期診療報酬改定は「外来医療や調剤報酬の適正化に取り組む」と明言

これに対し片山財務相は、年末の予算編成で焦点となる次期診療報酬改定については、「データに基づき経営の改善や処遇改善につながる的確な対応を行いつつ、保険料負担軽減のための外来医療や調剤報酬の適正化に取り組む」と強調。また、与党内で議論が進むOTC類似薬を含めた薬剤自己負担の見直しや、高額療養費の見直し、介護保険制度改革などの取り組みを実行することで、「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す」と応じた。

高市首相はまた、「全ての世代が安心できる社会保障制度を構築して、それを次の世代に引き継いでいく。こうした取組が、今を生きる私たちが、将来世代に対して果たすべき責任だと考えている」と述べ、「給付と負担の在り方などについて、全ての世代を通じて納得感が得られる社会保障制度の構築に向けた国民的な議論を着実に進めて欲しい」と関係閣僚に要請した。

◎民間議員　医療・介護分野へのICT・ＡＩ・ロボットなど、テクノロジー導入促進を

答申を受けて行った社会保障制度をめぐる議論では、民間議員から、医療・介護分野へのICT・ＡＩ・ロボットなど、テクノロジーの導入を促進する意見があがった。さらに、当面の対応が急がれる課題として、インフレ下における医療・介護給付の在り方と現役世代の保険料負担抑制の整合性を確保することや、社会保障制度を経済や社会の成長に相応しいものへと再設計することや、給付と負担の将来推計を示し、世帯類型別に分かりやすく「見える化」することなどが提案された。経済全体の中で財政を把握する観点から、国・地方に加えて社会保障基金を含めた一般政府の部門別フローを示すことが重要といった提案もあった。