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エーザイ・内藤執行役 認知症プラットフォーム「easiit」本格稼働 DeNAと協働でアプリ提供開始

公開日時 2020/07/29 04:51
エーザイの内藤景介執行役は7月28日、Webで記者会見に臨み、ディー・エヌ・エー(DeNA)との協働を通じ、同社の構築する認知症プラットフォーム「easiit(イージット)」を本格稼働させると発表した。DeNAの子会社であるDeSCヘルスケアと共同開発したスマートフォンアプリ「Easiit」の提供を同日から開始。一般消費者に強みを有するDeNAとタッグを組むことで、「日常生活領域と医療領域の架け橋」となるプラットフォームの実現に意欲をみせた。エーザイの有する医療データに、PHRのビッグデータを蓄積することで、データを核としたビジネス展開を加速させる。

「製薬企業ではあるが、病気に対してしっかり貢献したい。薬以外のところで、いかにサポートできるかが極めて重要だと考えている」―。内藤執行役ディメンシア・トータルインクルーシブエコシステム事業部プレジデント兼チーフデジタルオフィサーは会見でこう語った。認知症患者は2025年に約700万人と推計される疾患だ。患者家族の介護が必要になるなど、社会構造や社会システム、さらには社会的コストに大きなインパクトをもたらす疾患とされ、未病段階での社会的アプローチの重要性が指摘されている。こうしたなかで、エーザイが中期経営計画で掲げるのが“Medico Societal Innovator(薬とソリューションで社会を変える企業)”だ。

◎認知症プラットフォーム「easiit」通じソリューションを提供

内藤チーフデジタルオフィサーは、「薬だけで全部が解決できるとは思っていない。新薬もすべての患者さんに貢献できるわけではない。現時点で薬という技術でお答えできない患者さんに対し、薬を適正使用し、いたずらにコストが増えないようにするという意味で、それに関連するソリューションを提供したい」と意欲をみせた。その基盤に位置づけられるのが、同社が構築を急ぐ認知症プラットフォーム「easiit」だ。

◎利用者の日常生活とモチベーション維持に工夫も

この日、エーザイが発表したスマートフォンアプリ「Easiit」は、ユーザーの歩数、食事、睡眠、体重などのライフログに基づき、週変わりで食事や運動などの推奨メニューを個人にあわせて提示する。ブレインパフォーマンスに良い行動や習慣などをスコア化し、認知機能を可視化することで、利用者自身に行動変容を促し、日常生活のモチベーションを維持するスキームを描いている。

アプリでは、食事の写真を撮れば、食べた食事を選ぶだけでカロリーや栄養素を年齢性別にあわせた基準値とともに表示するほか、ウエアラブル端末との同期することで歩数や睡眠時間、体重などが自動で入力される。さらにアプリの利用でマイルが付与され、たまったマイルがギフト券に交換できるなど、利用者のモチベーション維持にも配慮した仕組みとなっている。9月には、エーザイが法人向けに販売するブレインパフォーマンスをセルフチェックするデジタルツール「のう KNOW」とのデータ連携機能も搭載する予定だ。

日常生活から認知機能を把握してもらうことで、予防行動の習慣化を促し、「医療機関にかかるタイミングになったときに、医療機関にお導きする。このブリッジングをいかにつくっていくかが重要だ」との考えを表明。日常生活領域から医療領域までつなぐことで、ライフスタイルを改善し、未病の段階からの介入につなげるとともに、認知症のスムーズな診断・治療にも結び付けたい考えだ。

◎サービス強化でデータが集まる好循環モデルを目指す

PHRの蓄積を通じ、「集まっているエビデンス、解析されたリスクに対し、日常生活を変容させ、ブレインパフォーマンスに活かすということがいま生かせること」と内藤チーフデジタルオフィサーは強調する。睡眠などまだ解明されていないリスク因子を解明することでアプリをアップデートする考えも示す。アプリのサービスを強化することで、利用者が集まり、さらにデータ(PHR)が集まる好循環へとつながる姿を目指す考えだ。最終的にはエーザイが保有する医療データと合わせることで強力なプラットフォームに築き上げたい考えだ。

内藤チーフデジタルオフィサーは、「集まっている生活者、患者に同意をいただいたうえで、属性に応じて適したソリューションやお薦めのオプションを紹介できる状態を将来的に目指していきたい」と意気込みをみせた。具体的には、「民間保険やエビデンスのあるフィットネス、モビリティでも実際に歩くと移動が難しいのであれば自動車メーカーや動く技術のあるメーカーとのコラボ。さらに、介護施設や銀行などもライフラインになっているところは、すべて患者と接するチャネルになると考えている。そういう方向性で物事を考えている」と意欲をみせた。

◎DeNA・瀬川ヘルスケア事業本部長 民間保険商品へのニーズが今後高まると予測

会見に同席したDeNAの瀬川翔ヘルスケア事業本部長(DeSCヘルスケア代表取締役社長)は、認知症をめぐる民間保険商品へのニーズが高まっているとの見解を示した。そのうえで、現時点では、認知症患者に対しての保険商品しかないと説明した。保険商品のなかには例えば、禁煙などの生活習慣で保険料が差し引かれるものもあるが、認知症予防について確固たるエビデンスがないため、予防のための行動に応じて保険料が差し引かれるようなインセンティブ型の商品はないと説明した。瀬川ヘルスケア事業本部長は、Easiitを通じてエビデンスが構築できることに期待感を示し、「いまわかっていないことがEasittを通じてわかってくる。健常者のデータを通じて、健常者にお返しできるようなエコシステムにつながるとよいと考えている」と述べた。
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