中医協総会は12月８日、後発医薬品をテーマに議論した。支払側の安藤伸樹委員（全国健康保険協会理事長）は、80％目標よりも低い実績などでの加算の廃止の必要性を指摘。「後発品の体制加算は段階的に廃止すべき時期に来ているのではないか」との見解を示した。一方で、診療側は後発品メーカーの相次ぐ不祥事などによる供給不安が続いていることなどから、継続した評価を訴え、診療・支払各側の意見は真っ向から対立した。

後発品の数量シェアが80％に近づく一方で、都道府県格差なども指摘されている。このため、政府は、後発医薬品の新目標として、「2023年度末までに後発医薬品の数量シェアを、全ての都道府県で80％以上」が掲げた。一般名処方加算や後発医薬品使用体制加算、後発医薬品調剤体制加算と、診療報酬上のインセンティブも、使用促進のアクセルを踏んできた。一方で、財務省は21年度予算執行調査で、23年度末までの新目標による適正化効果の増分が 200 億円と見込まれる一方、現行制度では年 1200 億円程度との推計を示し、加算制度について廃止を含めた提案を行っている。こうしたなかで、日医工や小林化工が相次いで行政処分を受けたことなどをきっかけに、後発品の供給不安が起きている。

◎支払側・安藤委員　「歯科を含めた医療機関の減算規定創出を」

支払側の安藤委員は、全国健康保険協会（協会けんぽ）での推計を披露。後発品80％目標にいまだ達していない約20支部が目標に達したときの医療費適正化額は「およそ60億円」。これに対し、20年度に医科・歯科・調剤の体制加算として実際に支払われた金額は約325億円だったとして、「昨年度と同様の受診状況が続けば、新目標を達成し、全都道府県支部で80％以上となった場合の適正化額のおよそ５倍の額が毎年加算されていくことが見込まれる」と述べた。そのうえで、「すでに使用割合がある程度の水準に達し、患者側にも後発品を選ぶという習慣がある程度浸透していると考えられる状況にあることを踏まえると、後発品の体制加算は段階的に廃止すべき時期に来ているのではないか」と述べた。特に歯科での後発品の使用割合が低いことにも触れた。

そのうえで、「加算対象をさらに厳格化し、特に80％という目標より低い実績での加算を廃止すること」、「減算の対象を拡大し、薬局における減算基準を引き上げるとともに、使用割合が低い歯科を含めた医療機関の減算規定を創出すること」を提案。さらに、「後発品の体制加算を段階的に廃止していくことを検討すべきではないか」と述べた。

支払側の松本真人委員（健康保険組合連合会理事）も、「薬局の減算基準を引き上げるとともに、医療機関についても減算の仕組みを検討してはどうか」と指摘した。

◎診療側・有澤委員　減算ありきの議論に「明確に反対」　

一方、診療側の有澤賢二委員（日本薬剤師会常務理事）は減算ありきの議論に「明確に反対する」と強調。「これまで、現場の努力によって後発品の使用促進を行ってきている。これまでの努力は何だったのかと考えるくらい大変むなしい。現場の意欲を高めるような政策をお願いしたい」と訴えた。そのうえで、「メリハリをつけることも考えられるが、いまは診療報酬上の評価をあまりにも大きく変更すべきではない」との考えを示した。後発品メーカーの不祥事や大阪市の日立物流の火災を引き合いに、供給停止や出荷停止、出荷調整が頻発する状況に触れ、「薬局における負担は非常に重くなっている。まずは、医薬品の安定供給の確保、回復が大前提で、後発品メーカーの基盤を強固にすることが最優先と考える」とも述べた。

診療側の城守国斗委員（日本医師会常任理事）は、「医療機関としては、メーカーや卸から、供給に関する情報収取を行うなど、後発品の使用に際し、これまで以上の労力が生じている。目標達成のためには、後発品の安定確保に対する実効性のある取り組みが行われることを前提に、引き続きの評価が必要だと考えている」と強調した。また、「品質に対する不適正事案の対応として、医療機関がやむなく他の後発品の銘柄指定をした場合に、一般名処方加算が算定できなくなるのは不合理なので、これに関しては改善が必要だ」とも述べた。