【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

中医協総会 処方箋料引下げ論に診療側「全くの論外」と反発 支払側はリフィル処方の活用も求める

公開日時 2025/12/08 06:00
中医協総会は12月5日、2026年度診療報酬改定に向け、焦点となっている処方箋料の引下げをめぐり、診療・支払側が激しく応酬した。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、医薬分業が進展する中で「インセンティブとして処方箋料を高くする時代は終わったことは明確だ」として、処方箋料の引下げを主張した。一般名処方加算の組換えの必要性に加え、長期処方やリフィル処方の積極的な活用にも踏み込んだ。診療側はこうした論調に猛反発。診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「現場の実態を踏まえておらず、全くの論外。一般名処方加算ともども、しっかりとした評価が必要だ」と真っ向から反発した。

◎24年度改定の効果検証 処方箋料引下げも「処方判断に変化なし」が最多に

26年度改定では、医薬分業や後発品使用促進という、政策目標の達成に向けて設置された診療報酬点数が焦点となっている。処方箋料をめぐっては、医薬分業が主眼となった点数。一方、一般名処方加算は、後発品使用促進を促す点数だ。24年度改定で処方箋料を引下げたが、厚労省が行った改定結果検証調査によると、処方箋料引下げによる処方への影響ついて、「特に処方の判断に変化はない」が最も多い結果となったことを報告した。なお、一般名処方加算は24年度改定で引上げがなされている。

◎処方箋料引下げに診療側・江澤委員「全く受け入れられない」と猛反発

診療側の江澤委員は、「処方箋料は、前回改定で大きく引き下げられたが、医薬品の供給が不安定な中で、供給が停止あるいは制限された品目を毎日のように把握し、その日に処方できる医薬品や、代わりとなる品目を検討するなど、これまでにない負担が生じている」と説明。また、「患者さんに対しても、医薬品の変更等について、追加的な説明を要するなどの対応が求められており、医師が処方箋を出すことについても、これまでにない負担が増している状況にある」として、処方箋料、一般名処方加算の評価の必要性を強調した。

支払側の松本委員は、処方箋料が制度としての役目を終えたとの見方を強調した。そのうえで、長期処方やリフィル処方が進んでいない実態に触れ、「患者負担の軽減や医療保険財政の観点からも、処方箋の引き下げと合わせて、特定の疾患や高齢者に限らず、幅広い患者についても、長期処方やリフィル処方の積極的な活用を促すための仕組みを検討すべきだ」との考えも示した。

これに対して、診療側の江澤委員は「(処方箋料が引下げられ)外来診療の経営にも大きな打撃が数字としても結果で出ている。いまの供給不安定の中で、あるいは医療現場の取り組みの状況を鑑みて、処方箋料の引下げは、全く受け入れられない。もう少し現場の実態を踏まえた上で評価していただきたい」と猛反発。「処方箋料は、これまで長きにわたる診療報酬改定の経緯によって、今の報酬設定がなされている。一概にたった一回の議論で、やれ適正化だとか、院内処方に合わせるとかいった乱暴な意見というのは全く相入れない」と強調した。

◎一般名処方加算 支払側・松本委員「仮に残すならば、銘柄は薬局判断が基本に」

一般名処方加算について、支払側の松本委員は、厚労省が「処方箋を発行する電子カルテシステム等の導入・運用コスト」が含まれていると説明したことに触れ、「導入コストを恒常的に診療報酬で手当することには同意しかねるが、システムの運用に対する手当てという側面はある程度理解できる」との考えを示した。さらに、「仮に、一般名処方加算を残すのであれば、システムが導入されれば一般名で処方し、銘柄は薬局が判断することが基本となるように、一般名処方加算を組み替えることも必要だ」と指摘。「その際には、電子カルテ情報共有サービスの本格導入を踏まえ、医療DX推進体制整備加算も整理すべきだということも指摘させていただきたい」と述べた。

厚労省の調査によると、一般名処方加算の点数が引上げられたために一般名処方件数が増えたとのデータも示された。診療側の江澤委員は、「本来であれば後発品の供給体制に不安があるために、一般名処方に協力している医療機関も多くあるはずだ」と指摘。「現状の供給不安定の中においては、こういった解釈には注意が必要だ。一般名処方加算についても、しっかりと現在の状況を踏まえた評価が必要だ」と述べた。

◎一般名処方加算にバイオ医薬品を追加へ バイオ後続品取り扱う薬局の体制評価も

このほか、バイオ後続品(バイオシイラ―)の使用促進に向けて、バイオ医薬品を一般名処方加算の対象とすることも提案され、診療・支払各側から異論が出なかった。診療側の江澤委員は「バイオ後続品への切り替えは、主治医の医学的な判断に基づいて、患者さんと相談して決まりますので、主治医と薬局、薬剤師の連携は必須の上で、一般名処方加算の対象とすることについては進めていただきたい」と述べた。支払側の松本委員は、「まずは患者の理解を得るために、医師や薬剤師から患者へ説明する手間や、薬局の在庫管理に伴うコストに対する評価ということで、事務局から示された方向性について検討することに異論はない」と述べた。

事務局は、薬局における在庫管理のコストや高額医薬品を在庫に抱えるリスクなどから、バイオ後続品を取り扱う薬局の体制を評価することを提案した。診療側の森委員は「バイオ医薬品は高額なため、薬局での在庫負担が大きいことや、卸への返品ができないという課題がある。そのため、途中でバイオ先行品からバイオ後続品に変更されたときや、他剤に変更されたとき、薬局では大きな廃棄リスクが生じる」と説明。また、「患者さんにバイオ後続品についての理解を得るためには、後発医薬品よりも丁寧な説明を要する」として、「バイオ後続品の使用促進は重要なものだ。薬局でも積極的に取り組めるよう、患者さんへの説明負担、在庫管理、廃棄リスクを支える評価が必要だ」と訴えた。

一方で、診療側から「バイオ後続品の提供体制に関するコストや、患者さんへのご説明等は、医療機関でも同様で、薬局のみならず医療機関での強化の在り方も含めて検討すべき」(診療側・江澤委員)、「薬局でも非常に負担が大きいが、病院においても同じことが起こる」(診療側・小阪真二委員・全国自治体病院協議会副会長)と医療機関側の評価を求める声もあがった。

このほか、「バイオ後続品使用体制加算」について、入院日時点においてバイオ医薬品を使用するか否かが不確定であるケースがあるため、算定日を見直すことも提案された。
プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(4)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事

一緒に読みたい関連トピックス

経営悪化の要因は物価・賃金の高騰だけか?
病院経営の現況と激変する医療需要

経営悪化の要因は物価・賃金の高騰だけか?

2025/10/01
今年に入って病院団体などの各種調査で、未曾有ともいえる病院経営の窮状が明らかになっているが、病院経営の原因は、物価や賃金の高騰だけではない。変化する医療需要への対応の遅れの方が要因としては大きいとの見方もあるからだ。
【MixOnline】関連(推奨)記事
【MixOnline】関連(推奨)記事
ボタン追加
【MixOnline】記事ログ
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー