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厚労省 モダリティのイノベーション評価で「新たな算定方式」検討へ 原価計算方式の限界指摘も

公開日時 2022/12/12 05:51
厚生労働省は12月9日開催の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」に、希少疾病や小児・難病など革新的新薬について、新たなモダリティについてもイノベーションを適切に評価し、薬価に反映できる「新たな算定方式」の検討を論点にあげた。現行制度では、革新的新薬は原価計算方式で算定されるケースが多いが、「限界」を指摘する声が複数の構成員からあがった。価値評価を含めた新たな薬価算定方式の必要性を認める声があがったが、実現に向けては体制整備など、課題があることを指摘する声もあった。

現行の薬価算定方式では、類似薬効比較方式をベースに、類似薬がない場合は原価計算方式で算定。補正加算を行ったうえで、外国平均価格調整を行うこととなっている。

◎芦田構成員「そろそろ新たな第3の方式が必要ではないか」

芦田耕一構成員(INCJ執行役員ベンチャー・グロース投資グループ共同グループ長)は、「海外のエマージング・バイオファーマ(新興バイオファーマ)が革新的新薬の担い手になっている現在において、原価計算方式そのものの課題というか、限界があるように受け止めている。現状、類似薬効比較方式、原価計算方式の2つの方式に基づいているが、そろそろ新たな第3の方式が必要ではないかと思っている。例えば価値に基づいた計算方式というものを新たに建てることを検討してもいいのではないか」と述べた。

◎菅原構成員 原価計算方式の開示度50%未満「現行の開発状況に合っていない」

菅原琢磨構成員(法政大経済学部教授)は、原価計算方式で開示度が50%未満の場合、加算率がゼロとなる現行の仕組みに問題意識を表明。「バリューチェーンの相違によって、開示の難易度というのは企業によって大きく変わると思う。バリューチェーンが複雑化するなかで、現行の開発状況に合っていないと思う」と指摘。海外の新興バイオファーマのビジネス維持には高い利益率が必要であることから、「いまの原価計算方式は現状のまま、グローバルマーケットあるいはそのグローバルでの開発ということの評価、イノベーションの評価ということにおいては非常に不十分、というか現実に合ってない制度ではないかと思っている。これについては、やはり大幅な見直しが必要ではないか」と述べた。

◎小黒構成員「希少疾患の薬も含めて別建ての評価を考えていくことが重要」

小黒一正構成員(法政大経済学部教授)も、「現状の原価計算方式のやり方はやはり、かなり無理がある部分もあると思う。やはりある程度、価値に見合った形で薬価算定をしていくような仕組みについて考えていくということが重要ではないか」との考えを表明。「希少疾患の薬も含めて、マーケット全体のポーションが少ないものもある。そういったものについて私もやはり別建ての評価という方法を考えていくということが今後、非常に重要になっていくのではないか」とも述べた。

堀真奈美構成員(東海大健康学部長・健康マネジメント学科教授)も、原価計算方式の限界を認めたうえで、「日本の場合、薬事承認すると基本的には保険適用となる。きょうの議論ではないかもしれないが、薬事承認されたもの全てイコール保険収載なのか、というところは保険収載の範囲によっても議論は変わりうるのではないか」と指摘した。

坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大大学院教授)は新たなモダリティは対照薬が設定できず、結果として価格が比較的安価になってしまうと指摘した。そのうえで、「原価計算方式もやはり残したうえで、いまはどちらかというと、一番値段が安くなるような方法が採用されがちだが、やはり原価の高いものに関してはそれをきちんと評価する仕組みとしての原価算定方式を残すということが必要だと思う」と述べ、薬価制度のなかでバランスをとった議論の必要性を指摘した。

◎“企業届出価格承認制度” 坂巻構成員「RWDやRWEなど根拠の明示を」

革新的な新薬の迅速的な導入に向け、さらなるインセンティブが必要とされるなかで、厚労省は有識者検討会に、希少疾病・小児・難病治療薬など革新的新薬については、特許期間中に市場拡大再算定の対象とせず、薬価を維持することを提案。一定期間後に再評価を行い、その結果を薬価に反映する仕組みを提案した。

香取照幸構成員(上智大総合人間学部社会福祉学科教授)は、日本製薬工業協会(製薬協)が意見陳述でいわゆる言い値である“企業届出価格承認制度の創設”を提案したことに言及。「製薬メーカーの言い値で預けるというのもどうかと思うが、ある意味それなりに証明していくというか、律文して持ってくるのであれば、とりあえず収載し、2年後なり3年後に実際に上市した後、再評価をして、薬の社会的な価値やそういうものも含めて評価をして、そこで一定の薬価に落とし込んでいくというのも、もしかしたらあるかもしれない」と述べた。

坂巻構成員も、「従来の方式ではなかなか薬価算定が難しいと言う中で、製薬企業に自分たちで価格を決めさせるというやり方はチャレンジしてみる価値がある。恐らく、その時にどういったものを対象にするのかというのが論点だと思う」との見解を表明。対象範囲も、希少疾患や小児・難病だけでなく、「新しいモダリティを含めて、もう少し広めに考えてもいいのではないか」と述べた。企業の届け出価格については、「自由に付けるといっても何らかの根拠が必要だ」と指摘。「市販後にその薬は本当に価値があったかどうかということを評価する仕組みを作る必要がある。リアルワールドデータ(RWD)やリアルワールドエビデンス(RWE)という言葉もあるが、そういったものと組み合わせることを明示しておく必要がある」と述べた。

◎成川構成員 上市後のエビデンスで薬価引き上げ考慮も

成川衛構成員(北里大薬学部教授)は、「承認まで薬の価値が十分には明らかになってない段階で、多少無理をして薬価をつけて保険が利くようにすること自体は良いことだと思っている。ただ、それを事後に見直す仕組みは必要だ」と述べた。そのうえで、「ただ早期承認であっても企業は承認取って上市すると安心して、有効性のエビデンスの蓄積にあまり力を入れないこともある。そういう意味では、薬事的な面からいっても仮承認的な薬について事後にデータを集めてもらうことが必要だ。薬価の引き上げみたいなことも絡めて、うまく回っていくようになれば企業にとってもインセンティブにもなるし、エビデンスの構築にもなる。その辺をぜひ、具体的な対応案を今後また議論させていただきたい」と述べた。

◎新たな制度実現には体制整備やマンパワーなど課題も 香取構成員「現実に動かす体制を」

一方で、こうした評価を行うためには、評価方法を検討することに加え、評価機関の体制強化も必要になる。遠藤久夫座長(学習院大経済学部教授)は、「ただ、政策論で考えていくときに、その先の具体策をどうするかというところが非常に重要で、新しい価値を評価するとはどういう方法で評価するのか、誰が評価するのか」と指摘。費用対効果評価導入の議論の際の難しさを指摘し、「ステークホルダー間の利害調整も絡んでくるので、その調整も非常に難しいということもありうる話だ。インクリメンタルな修正できるところと、そうでないところ少し中長期的な議論と短期的な対応みたいなものは考えて進めるということは意味があるのでは」と述べた。

香取構成員も、「携わる専門職も薬事専門家だけでは済まなくなる。PMDAの体制も考えないといけない。根本的に考え直せと散々言っておいてどうかと思うが、やはり現実に動かす体制をどうするかを考えないといけない」と指摘した。遠藤座長も、「まさに新しい制度を入れると、どうしても体制の整備、マンパワーの育成が必要だというのは、費用対効果評価を導入することによって一つの例を把握したということだと思う。非常に難しい問題も、現実的には絡んでいるということは間違いない」と述べた。



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