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中等症から重症のUC治療薬・ベルスピティ錠など新薬10製品承認へ 薬事審第一部会が了承

公開日時 2025/06/05 04:50
厚生労働省の薬事審議会・医薬品第一部会を6月4日、ファイザーの中等症から重症の潰瘍性大腸炎(UC)の治療を効能・効果とするS1P受容体調節薬・ベルスピティ錠(一般名:エトラシモド L-アルギニン)など新薬10製品の承認の可否を審議し、承認を了承した。

このほか審議品目で承認を了承された製品には、MSDの肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対するアクチビンシグナル伝達阻害薬・エアウィン皮下注用(ソタテルセプト)や、アルナイラム・ジャパンのRNAi治療薬・アムヴトラ皮下注にトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)の効能を追加することが含まれる。

◎経鼻投与型抗けいれん薬・スピジアも承認へ 成人で初の医療機関外で投与可能なレスキュー薬に

また、アキュリスファーマのてんかん発作に対する抗けいれん薬・スピジア点鼻液(ジアゼパム)は、国内初の経鼻投与型抗けいれん薬となり、成人においては初の医療機関外で投与可能なレスキュー薬となる。

報告品目は1製品。ヤンセンファーマの抗IL-23p19抗体製剤・トレムフィア点滴静注・同皮下注に、中等症から重症の活動期クローン病(CD)の治療の効能が追加される。

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽①アネレム静注用20mg、②同静注用50mg(レミマゾラムベシル酸塩、ムンディファーマ):「消化器内視鏡診療時の鎮静」を効能・効果とする①新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品、②新効能・新用量・その他の医薬品。再審査期間は4年。

短時間作用型のベンゾジアゼピン系麻酔・鎮静薬。アネレムの50mg製剤は20年1月に「全身麻酔の導入及び維持」の効能・効果で承認された。その後、23年9月に、50mg製剤に「消化器内視鏡診療時の鎮静」の効能を追加すること、さらに追加剤形の20mg製剤について、「全身麻酔の導入及び維持」及び「消化器内視鏡診療時の鎮静」の効能・効果で承認申請された。

新効能の用法・用量は「通常、成人には、3mgを、15秒以上かけて静脈内投与する。効果が不十分な場合は、少なくとも2分以上の間隔を空けて、1mgずつ15秒以上かけて静脈内投与する。なお、患者の年齢、体重等を考慮し、適切な鎮静深度が得られるよう、投与量を適宜減量する」。

ムンディファーマによると、消化器内視鏡診療時の鎮静薬使用にあたっては、エビデンスレベルの高い試験を経て承認された薬剤はほとんどなく、依然としてアンメットメディカルニーズがある。

海外では、鎮静に係る効能・効果で米国では20年7月に、欧州では21年3月にそれぞれ承認され、25年3月現在、6つの国又は地域で承認されている。

ゼオマイン筋注用50単位、同筋注用100単位、同筋注用200単位(インコボツリヌストキシンA、帝人ファーマ):「慢性流涎」を効能・効果とする新投与経路医薬品。再審査期間は6年。

A型ボツリヌス毒素製剤。末梢のコリン作動性神経終末に作用し、神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を阻害することにより、随意筋の筋力を弱め、筋緊張状態を緩和する作用を示す。唾液分泌抑制作用により、慢性的に唾液が口腔外に流れ出る症状の改善が期待されている。

現在は上肢痙縮、下肢痙縮を効能・効果に筋肉内注射で用いられている。慢性流涎に対する用法・用量は「通常、成人には合計100単位を分割して両側の耳下腺(片側につき30単位)及び顎下腺(片側につき20単位)に注射するが、患者の状態により適宜減量する。また、再投与は前回の効果が減弱した場合に可能であるが、投与間隔は16週以上とすること。なお、患者の状態により投与間隔は14週まで短縮できる」。

厚労省によると、製品名は変更される予定で、ゼオマイン筋注用から「筋」の文字がなくなり、ゼオマイン注用になる予定だという。

海外では24年12月現在、上肢痙縮や痙性斜頸等に係る効能・効果で欧州及び米国を含む81の国又は地域で承認され、慢性流涎に係る効能・効果については、欧州及び米国を含む46の国又は地域で承認されている。

ハイキュービア10%皮下注セット5g/50mL、同10g/100mL、同20g/200mL(pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注)/ボルヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)、武田薬品):「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎及び多巣性運動ニューロパチーの運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(令和13年9月24日まで)。

皮下注用人免疫グロブリン製剤・rHuPH20組み合わせ製剤。ボルヒアルロニダーゼを皮下投与した後、約10分以内に同じ部位へ人免疫グロブリンGを皮下投与する。これにより、人免疫グロブリンGの拡散と吸収が促進され、大量投与が可能になる。投与頻度は3週間に1回又は4週間に1回となり、患者の負担軽減が期待される。

新効能の慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)は、末梢神経系に影響を及ぼす希少で後天的な免疫介在性の神経筋疾患。多巣性運動ニューロパチー(MMN)も、CIDPと同じく末梢神経に障害が生じる神経炎。

国内でハイキュービアは、24年12月に「無又は低ガンマグロブリン血症」を効能・効果に承認されている。海外では、13年に欧州で、14年に米国で原発性免疫不全症候群に対する治療薬として承認されて以降、25年3月現在、40以上の国又は地域で承認されており、CIDPに対しては、24年1月に米国及び欧州で承認され、25年3月現在39の国又は地域で承認されており、MMNに対しては、承認されている国又は地域はない。

スピジア点鼻液5mg、同7.5mg、同10mg(ジアゼパム、アキュリスファーマ):「てんかん重積状態」を効能・効果とする新投与経路医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

ベンゾジアゼピン系薬剤。注射剤などの剤形でてんかん発作時の治療薬として日本の医療現場で約60年使用され、坐剤は医療機関外においても患者や介護者などにより使用されてきた。今回、国内初の経鼻投与型抗けいれん薬となり、また成人では初の医療機関外で投与可能なレスキュー薬となる。

用法・用量は「通常、成人及び2歳以上の小児には、患者の年齢及び体重を考慮し、5~20mgを1回鼻腔内に投与する。効果不十分な場合には4時間以上あけて2回目の投与ができる。ただし、6歳未満の小児の1回了は15mgを超えないこと」。

海外では、米国で20年1月に承認され、25年2月現在、アルゼンチン及び中国も含めて3カ国で承認されている。

ベルスピティ錠2mg(エトラシモド L-アルギニン、ファイザー):「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。

経口スフィンゴシン 1-リン酸(S1P)受容体調節薬。リンパ球上のS1P受容体に作用することで、末梢リンパ組織内にリンパ球が保持され、循環血中のリンパ球数が減少することにより、自己免疫疾患である潰瘍性大腸炎(UC)に対し治療効果を示すことが期待されている。ベルスピティは、S1P受容体サブタイプ1、4、5に対して選択的に活性を示すよう設計されている。

用法・用量は「通常、成人には2mgを1日1回経口投与する」。国内では、経口S1P受容体調節薬として、ブリストル・マイヤーズスクイブのゼポジアが24年12月に同じ「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の効能・効果で承認されている。

海外でベルスピティは、23年10月に米国で承認されて以降、25年3月現在、UCに係る効能・効果で米国及び欧州を含む9つの国又は地域で承認されている。

▽①リアルダ錠600mg、②同1200mg(メサラジン、持田製薬):「潰瘍性大腸炎(重症を除く)」を効能・効果とする①新用量、剤形追加に係る医薬品、②新用量医薬品。再審査期間は4年。

5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤)。今回、小児用量が追加される。具体的には「通常、体重23kg超の小児には1日1回40mg/kgを食後経口投与するが、2400mgを上限とする。活動期は、通常、体重23kg超の小児には1日1回80mg/kgを食後経口投与するが、4800mgを上限とし、患者の状態により適宜減量する」となる。

ポムビリティ点滴静注用105mg(シパグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、アミカス・セラピューティクス):「遅発型ポンペ病に対するミグルスタットとの併用療法」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
オプフォルダカプセル65mg(ミグルスタット、アミカス・セラピューティクス):「遅発型ポンペ病に対するシパグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)との併用療法」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

遅発型ポンペ病に対し、細胞への酵素の取り込みを向上させた酵素補充療法薬・ポムビリティと酵素安定化剤・オプフォルダを併用する。

ポンぺ病(糖原病II型)は、リソソーム中のグリコーゲン分解酵素である酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子変異によって生じる常染色体劣性遺伝性疾患。病型は、臨床所見や発症年齢により乳児型、遅発型(小児型、成人型)に分類される。遅発型では近位筋筋力低下、呼吸筋筋力低下、高CK血症、翼状肩甲などが認められる。

海外でポムビリティとオプフォルダを併用は、遅発型ポンペ病に係る効能・効果で23年3月に欧州連合で初めて承認されて以降、25年3月現在、米国及び英国を含む35の国又は地域で承認されている。

アムヴトラ皮下注25mgシリンジ(ブトリシランナトリウム、アルナイラム・ジャパン):「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)」を効能・効果とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

RNAi治療薬。トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)は、血漿中に四量体として存在するトランスサイレチン(TTR)の不安定化により解離した単量体が、ミスフォールディング及び凝集することにより形成されたアミロイド線維が心筋に沈着することで発症する疾患。

国内では、ATTR-CM治療薬として、経口投与のトランスサイレチン(TTR)安定化薬であるファイザーのビンダケル/ビンマックと、アレクシオンファーマのビヨントラが承認されている。

日本でアムヴトラは22年9月に、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)の適応で承認されている。新効能に対する用法・用量は同じ(通常、成人には25mgを3カ月に1回皮下投与する)。

海外では、25年3月現在、TTR-FAPに係る効能・効果について米国及び欧州を含む10以上の国又は地域で承認されている。ATTR-CMに係る効能・効果については、米国で承認されている。

エアウィン皮下注用45mg、同60mg(ソタテルセプト(遺伝子組換え)、MSD):「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

肺動脈性肺高血圧症(PAH)の根本原因を標的とするアクチビンシグナル伝達阻害薬。承認申請は、標準的なバックグラウンド療法を受けているPAHの成人患者(WHO機能分類クラスIIおよびIII)を対象とした第3相STELLAR試験等の結果に基づく。

用法・用量は「通常、成人には初回に0.3mg/kgを投与し、2回目以降は0.7mg/kgに増量し、3週間ごとに皮下投与する」。海外では、PAHに係る効能・効果で24年3月に米国で承認されて以降、25年2月現在、欧米を含む41の国又は地域で承認されている。

なお、米メルクは今年3月に死亡リスクの高いWHO機能分類クラスIIIまたはIVの患者を対象とした第3相ZENITH試験において複合エンドポイント(全死亡、肺移植、PAHによる入院)のリスクをプラセボと比較して76%低下させたことを発表している。

【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

▽①トレムフィア点滴静注200mg、②同皮下注100mgシリンジ、③同皮下注200mgシリンジ、④同皮下注200mgペン(グセルクマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「中等症から重症の活動期クローン病の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果とする①新効能医薬品、②③④新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(令和13年3月26日まで)。

抗IL-23p19抗体。クローン病(CD)に対する点滴静注の用法・用量はUCと同様。皮下注の用法・用量は、UCとは異なり、「通常、成人には、1回400mgを初回、4週後、8週後に皮下投与する。グセルクマブ製剤(点滴静注又は皮下注)の投与開始16週後から、1回100mgを8週間隔で皮下投与する。なお、患者の状態に応じて、グセルクマブ製剤の投与開始12週後以降に、1回200mgを4週間隔で皮下投与することもできる」となっている。

国内では、トレムフィアと同様の抗IL-23p19抗体のアッヴィのスキリージが22年9月に、日本イーライリリー/持田製薬のオンボーが25年3月にCDの承認を取得している。

海外でトレムフィアは、25年3月現在、尋常性乾癬等に係る効能・効果で欧米を含む90以上の国又は地域で、UCに係る効能・効果で米国含む3カ国でそれぞれ承認されており、CDに係る効能・効果では、米国で25年3月に承認されている。
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