ファイザーの潰瘍性大腸炎治療薬・ベルスピティ錠など新薬10製品を審議へ 6月4日の第一部会で
公開日時 2025/05/22 04:48
厚生労働省は6月4日に薬事審議会・医薬品第一部会を開き、ファイザーの中等症から重症の潰瘍性大腸炎(UC)を対象疾患とするS1P受容体調節薬・ベルスピティ錠2mg(一般名:エトラシモド L-アルギニン)など新薬10製品の承認の可否を審議する。このほかの審議予定品目にはMSDの肺動脈性肺高血圧症に対するアクチビンシグナル伝達阻害薬・エアウィン皮下注用(ソタテルセプト(遺伝子組換え))や、アルナイラム・ジャパンのRNAi治療薬・アムヴトラ皮下注(ブトリシランナトリウム)にトランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)の効能を追加することが含まれる。
アキュリスファーマのてんかん発作に対する抗けいれん薬・スピジア点鼻液(ジアゼパム)も承認可否を審議される予定。承認された場合、国内初の経鼻投与型抗けいれん薬となり、成人においては初の医療機関外で投与可能なレスキュー薬となる。
報告予定品目は1製品。ヤンセンファーマのヒト型抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤・トレムフィア皮下注(グセルクマブ(遺伝子組換え))に、中等症から重症の活動期クローン病の治療に係る効能を追加することが報告される予定。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽①アネレム静注用20mg、②同静注用50mg(レミマゾラムベシル酸塩、ムンディファーマ):「消化器内視鏡診療時の鎮静」を対象疾患とする①新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品、②新効能・新用量・その他の医薬品。
全身麻酔剤。50mg製剤は20年1月に「全身麻酔の導入及び維持」の効能・効果で世界に先駆けて日本で初めて承認されたもの。ムンディファーマは23年9月に、50mg製剤に「消化器内視鏡診療時の鎮静」の効能を追加すること、さらに追加剤形の20mg製剤について、「全身麻酔の導入及び維持」及び「消化器内視鏡診療における検査及び処置時の鎮静」を効能・効果に承認申請したと発表していた。
同社は当時、「消化器内視鏡診療における検査及び処置時の鎮静薬使用にあたっては、エビデンスレベルの高い試験を経て承認された薬剤はほとんどなく、依然としてアンメットメディカルニーズがある」と指摘していた。
▽ゼオマイン筋注用50単位、同100単位、同筋注用200単位(インコボツリヌストキシンA、帝人ファーマ):「慢性流涎」を対象疾患とする新投与経路医薬品。
A型ボツリヌス毒素製剤。A1型ボツリヌス毒素活性本体による唾液分泌抑制作用により、慢性的に唾液が口腔外に流れ出る症状の改善が期待されている。
厚労省によると、慢性流涎の適応症では唾液腺内投与となる。承認された場合、製品名は変更される予定で、ゼオマイン筋注用から「筋」の文字がなくなり、ゼオマイン注用になる予定だとしている。
現在は上肢痙縮、下肢痙縮を効能・効果に筋肉内注射で用いられている。
▽ハイキュービア10%皮下注セット5g/50mL、同10g/100mL、同20g/200mL(pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注)/ボルヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)、武田薬品):「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎及び多巣性運動ニューロパチーの運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
皮下注用人免疫グロブリン10%製剤(SCIG10%)及び遺伝子組換えヒトヒアルロニダーゼPH20製剤(rHuPH20)から構成される皮下注用の組み合わせ製剤。rHuPH20を投与し皮下組織の透過性を一時的に高め、その後同じ部位にSCIG10%を投与することで、SCIG10%の拡散と吸収が促進され、大量投与が可能になる。大量投与により投与頻度が従来の皮下注製剤に比べて少ない2週から4週間隔となり、患者の負担の軽減が期待される。
慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)は、末梢神経系に影響を及ぼす希少で後天的な免疫介在性の神経筋疾患。四肢の遠位および近位における脱力、ピリピリ感または感覚消失、反射消失、歩行困難など、進行性の左右対称性の症状を典型的な特徴とする。多巣性運動ニューロパチー(MMN)も、CIDPと同じく末梢神経に障害が生じる神経炎。ただ、CIDPと異なり、左右非対称の運動障害が主で、感覚が障害されることはないか、障害があっても軽度とされる。
24年12月に「無又は低ガンマグロブリン血症」を効能・効果に承認され、5月21日に薬価収載され発売準備中となっている。
▽スピジア点鼻液5mg、同7.5mg、同10mg(ジアゼパム、アキュリスファーマ):「てんかん重積状態」を対象疾患とする新投与経路医薬品。希少疾病用医薬品。
承認された場合、国内初の経鼻投与型抗けいれん薬となり、また成人では初の医療機関外で投与可能なレスキュー薬となる。
有効成分のジアゼパムは注射剤などの剤形でてんかん発作時の治療薬として日本の医療現場で約60年使用され、坐剤は医療機関外においても患者や介護者などにより使用されてきた。より簡便に使用できるジアゼパム点鼻液は米国Neurelis社が開発。アキュリスが日本およびアジア太平洋地域の独占的開発・商業化に関するライセンスを有し、日本での開発を進めた。
▽ベルスピティ錠2mg(エトラシモド L-アルギニン、ファイザー):「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体サブタイプ1、4、5に対して選択的に活性を示すよう設計されたS1P受容体調節薬。潰瘍性大腸炎を含む炎症性疾患に対する1日1回の経口投与製剤として開発されたもの。
ファイザーによると、承認申請は中等症から重症の活動期にある潰瘍性大腸炎患者を対象とした国際共同第3相試験(ELEVATE UC 52、ELEVATE UC 12)の結果等に基づく。エトラシモドは、主要評価項目である12週間および52週間治療後の臨床的寛解率で、プラセボに対する優越性を示した。安全性プロファイルも良好だったとしている。
潰瘍性大腸炎は、結腸における、びまん性および連続性の粘膜炎症性病変を特徴とし、寛解と再燃を繰り返す慢性炎症性腸疾患。潰瘍性大腸炎の主な臨床症状として、下痢、腹部痙攣、直腸出血などがあり、しばしば便意切迫およびしぶり腹などの症状を伴う血性下痢(粘血便)もみられる。
▽①リアルダ錠600mg、②同1200mg(メサラジン、持田製薬):「潰瘍性大腸炎(重症を除く)」を対象疾患とする①新用量、剤形追加に係る医薬品、②新用量医薬品。
5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤)。標的部位である大腸に有効成分のメサラジンが送達され、同部位にて持続的に放出される「MMXテクノロジー」を採用している。
潰瘍性大腸炎に対し現在、成人(15歳以上)の適応を持つ。今回、小児の用法・用量を追加する。持田製薬によると、小児用量に係る臨床試験は、年齢の下限は設定せず、上限は16歳とし、体重18kg以上90kg以下の被験者を対象に実施した。
▽ポムビリティ点滴静注用105mg(シパグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、アミカス・セラピューティクス):「遅発型ポンペ病に対するミグルスタットとの併用療法」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
▽オプフォルダカプセル 65 mg(ミグルスタット、アミカス・セラピューティクス):「遅発型ポンペ病に対するシパグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)との併用療法」を対象疾患とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。
遅発型ポンペ病に対し、両剤を併用して用いる。ポムビリティはマンノース-6-リン酸(M6P)を増加させることにより、細胞への酵素の取り込みを向上させた遺伝子組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ。特に筋組織において、ポンペ病の主要な貯蔵物質であるグリコーゲンを減少させる作用が期待されている。臨床試験では、点滴静注により隔週投与した。
オプフォルダは経口固形製剤で、血中の シパグルコシダーゼ アルファを安定化させ、活性を維持した多くの酵素を標的組織への輸送を増加させることが期待されている。シパグルコシダーゼ アルファの点滴静注開始の1時間前に投与される。
ポンペ病(糖原病II型)は ライソゾーム内でのグリコーゲン分解に関与する酵素である酸性α-グルコシダーゼ(GAA)をエンコードする遺伝子の突然変異によって引き起こされる稀な常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)性疾患。この酵素の機能障害により、ライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し、細胞機能の障害が進行し、筋力、運動及び肺機能が進行性に低下する。病型は、臨床所見や発症年齢により乳児型、遅発型(小児型、成人型)に分類される。遅発型では近位筋筋力低下、呼吸筋筋力低下、高CK血症、翼状肩甲などが認められる。
▽アムヴトラ皮下注25mgシリンジ(ブトリシランナトリウム、アルナイラム・ジャパン):「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)」を対象疾患とする新効能医薬品。希少疾病用医薬品。
標的となる特定のメッセンジャーRNA(mRNA)を分解し、野生型および変異型のトランスサイレチン(TTR)タンパク質が作られる前にその産生を阻害するように設計されたRNAi治療薬。
トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)の効能追加の一変申請は、国際共同第3相試験(HELIOS-B)の結果に基づく。ATTR-CMと診断された655人の成人患者を対象に実施。主要評価項目の全死因死亡及び再発性心血管関連イベントを達成した。
日本では22年9月に、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの適応で承認されている。
▽エアウィン皮下注用45mg、同60mg(ソタテルセプト(遺伝子組換え)、MSD):「肺動脈性肺高血圧症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
アクチビンシグナル伝達阻害薬。血管構成細胞の増殖を促進するシグナル伝達経路に関わるアクチビンを捕捉することで、血管構成細胞の増殖を抑制するシグナル伝達経路とのバランスを改善。血管構成細胞の増殖を制御し、血流を改善するとされる。非臨床モデルでは、これらの細胞に対する作用により、血管壁厚の減少、部分的な右室のリバースリモデリング、並びに血行動態の改善が認められたとしている。
承認申請は、標準的なバックグラウンド療法を受けている肺動脈性肺高血圧症(PAH)の成人患者(WHO機能分類クラスIIおよびIII)を対象に、同剤の追加による有効性を検証した海外で実施された第3相臨床試験(STELLAR試験)、国内第3相臨床試験などの結果に基づく。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽①トレムフィア点滴静注200mg、②同皮下注100mgシリンジ、③同皮下注200mgシリンジ、④同皮下注200mgペン(グセルクマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):「中等症から重症の活動期クローン病の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を対象疾患とする①新効能医薬品、②③④新効能・新用量医薬品。
免疫や炎症に関わるIL-23を標的とするヒト型抗IL-23モノクローナル抗体製剤。IL-23は、炎症性に関与するIL-17Aを上流で調節するとされ、下流経路におけるサイトカイン産生を抑えて効果を発揮するとされる。
クローン病の適応追加申請は、国際共同第3相GALAXI試験、GRAVITI試験、及び国内CRD3003試験の結果に基づく。ヤンセンファーマは申請時に、「GALAXI試験及びGRAVITI試験の結果は、トレムフィアがクローン病において、皮下注及び静脈注射での導入療法である2つの治療選択肢を提供する唯一のIL-23阻害薬となる可能性を示すもの」だとコメントしている。
トレムフィアは日本で、18年3月に既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の治療薬として承認を取得。同年11月に既存治療で効果不十分な掌蹠膿疱症の適応を追加した。
そして今年3月に中等症から重症の潰瘍性大腸炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)に係る適応を取得。点滴静注製剤は寛解導入療法に、皮下注製剤は維持療法に用いる。