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骨太方針2025を閣議決定 「経済・物価動向等を踏まえた対応」は高齢化の伸びに「加算」 賃上げ実現へ

公開日時 2025/06/16 04:51
政府は6月13日、臨時閣議を開き、「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)」を決定した。社会保障関係費については、「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と明記した。原案段階では、経済・物価動向等も高齢化などと同様に“自然増”に含めていたが、経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を自然増とは別枠とした。
医療機関経営が厳しさを増すなかで、医療関係団体が物価対応、賃上げを求めるなかで、「経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う」とした。一方で、医療の高度化についての財源については明確に示していない。費用対効果については原案に示されていた「対象範囲の拡大」を削除。“拡大ありき”の検討ではなく、「客観的な検証」を踏まえた検討を行うことを盛り込んだ。

◎経営の安定、離職防止、人材確保が図られる確実な賃上げを

「医療・介護・障害福祉等の公定価格の分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る必要がある。このため、これまでの歳出改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ、次期報酬改定を始めとした必要な対応策において、2025年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等について、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う」―。賃上げが焦点となる中で、骨太方針2025にはこう明記された。なお、賃上げについては注釈で、日本労働組合総連合会の集計では定期昇給を含む平均賃上げ率は5.26%(うちベースアップ分のみで3.71%)、組合員数300人未満の組合の平均賃上げ率は4.70%(うちベースアップのみ3.51%)であることも示した。

24年度診療報酬改定では賃上げを目的にベースアップ評価料が新設されたが、「2024年度診療報酬改定による処遇改善・経営状況等の実態を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討する」とした。

◎社会保障関係費 歳出改革努力は継続 リフィルの活用や民間保険活用も

賃上げの実現に向けて財源確保の必要性も指摘される中で、社会保障関係費については、原案同様、「予算編成においては、2027年度までの間、骨太方針2024で示された歳出改革努力を継続しつつ、日本経済が新たなステージに移行しつつあることが明確になる中で、経済・物価動向等を踏まえ、各年度の予算編成において適切に反映する」と明記した。

そのうえで、注釈に書かれていた社会保障関係費を本文に格上げした。「とりわけ社会保障関係費については、医療・介護等の現場の厳しい現状や税収等を含めた財政の状況を踏まえ、これまでの改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ、2025年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等について、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げにつながるよう、的確な対応を行う。具体的には、高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」とした。なお、社会保障関係費の伸びの要因としては高齢化と高度化が存在することも脚注に追記した。

社会保障関係費の取り扱いをめぐっては、日本医師会など医療関係団体が医療機関経営の厳しさを踏まえて、「賃金上昇や物価高騰下での逼迫した経営状況、さらには技術革新等に対応し得るよう、高齢化の目安対応の抜本的見直し」を要望。自民党政調全体会議で、長坂康正厚生労働部会長は、「原案の“いわゆる自然増から歳出改革を継続する”という引き算の形では、これまでのように歳出改革で賃上げや物価上昇などに対応するようにも読める。賃上げや物価上昇などの対応分は、歳出削減の深堀りではなく、足し算で別枠として対応することを明確にすべき」と主張していた。

一方で、「医療保険制度について、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、給付と負担の見直し等の総合的な検討を進める」と明記。「リフィル処方箋の普及・定着や多剤重複投薬や重複検査の適正化を進めるとともに、保険外併用療養費制度の対象範囲の拡大や保険外診療部分を広くカバーし、公的保険を補完する民間保険の開発を促す」ことも盛り込んだ。

◎費用対効果評価 “拡大ありき”の検討から修文 薬価制度、診療上の活用は明記

医薬品関連では、「創薬力の強化とイノベーションの推進」の項目を設けた。「政府全体の司令塔機能の強化を図りつつ、医薬品業界の構造改革を進めるとともに、健康・医療戦略に基づき、創薬エコシステムの発展やヘルスケア市場の拡大、創薬力の基盤強化に向け、一体的に政策を実現する」と明記した。

費用対効果評価について、「客観的な検証を踏まえつつ、更なる活用に向け、適切な評価手法、対象範囲や実施体制の検討と併せ、薬価制度上の活用や診療上の活用等の方策を検討する」とした。原案では、「費用対効果評価の更なる活用に向け、対象範囲の拡大や実施体制の強化、適切な評価手法の検討と併せ、薬価制度上の活用や診療上の活用等の方策を検討する」とされていた。なお、財務省の財政制度等審議会は建議で、費用対効果評価について、「対象とする薬剤の範囲や、価格調整の対象範囲を拡大するとともに、費用対効果評価の結果を保険償還の可否の判断に用いることも検討すべき」と提案。類似薬効比較方式Ⅱについて、「新規性に乏しい新薬をどのように保険収載すべきか、どのように薬価を算定すべきかといった観点から、費用対効果評価の活用方策も含め、抜本的かつ具体的な検討を早急に進めるべき」と主張していた。

薬価制度については、「国民負担の軽減と創薬イノベーションを両立する薬価上の適切な評価の実施」と明記。注釈に、「2024、25年度薬価改定において新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象となる革新的新薬について薬価を基本的に維持したことを念頭に置いた革新的新薬の特許期間中の対応に関する創薬イノベーション推進の観点からの検討等」と特許期間中の薬価維持に関連する記載も盛り込んだ。

◎自公維3党合意の内容も OTC類似薬の保険給付見直し、地域フォーミュラリの全国展開

このほか、自公維の3党合意を踏まえて、「持続可能な社会保障制度のための改革を実行し、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減を実現する」ため、「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しや、地域フォーミュラリの全国展開、新たな地域医療構想に向けた病床削減、医療DXを通じた効率的で質の高い医療の実現、現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底、がんを含む生活習慣病の重症化予防とデータヘルスの推進などの改革」について、「2025年末までの予算編成過程で十分な検討を行い、早期に実現が可能なものについて、2026年度から実行する」ことも盛り込んだ。OTC類似薬の保険給付をめぐっては、「医療機関における必要な受診を確保し、こどもや慢性疾患を抱えている方、低所得の方の患者負担などに配慮しつつ、個別品目に関する対応について適正使用の取組の検討や、セルフメディケーション推進の観点からの更なる医薬品・検査薬のスイッチOTC化に向けた実効的な方策の検討を含む」ことを注釈に盛り込んだ。
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