日本臓器とサーブ社 腫瘍溶解性ウイルスでライセンス契結 P3開始へ 27年承認取得へ専門MR設置も
公開日時 2025/08/06 04:53

日本臓器製薬とサーブ・バイオファーマは8月5日、共同記者会見に臨み、骨軟部腫瘍に対する腫瘍溶解性ウイルス「Surv.m-CRA-1」の国内開発・製造・販売権に関するライセンス契約を締結したと発表した。同剤はサーブ社の創製品で、今後の開発の進捗や上市後の売上達成に応じて最大105億円を日本臓器製薬から受領する。会見では25年10月から「Surv.m-CRA-1」の第3相臨床試験を開始する方針も明らかにした。日本臓器製薬の小西崇文代表取締役社長(写真左)は、「がん領域、希少疾患領域は我々にとって初の取り組みだ。革新的な治療選択肢を患者に届けることに挑戦できることを大変光栄に思う」と強調。27年に国内初の製造販売承認取得を目指すとし、これまで培った「整形外科領域の経験と知見を活かしたい」と述べながら、早くも「専門MR部隊」の発足準備にまで言及した。
サーブ・バイオファーマは、鹿児島大学発認定ベンチャーとして2022年8月に設立した。同社が開発したSurv.m-CRA-1は、がん細胞で特異的に活性化するサバイビンプロモータを搭載した腫瘍溶解性ウイルス。正常細胞は損傷せず、がん細胞だけ増殖し、がん細胞を選択的に殺傷するように遺伝子改変されている。サーブ社は、希少がんの原発性悪性骨腫瘍に対する臨床開発を進めており、Surv.m-CRA-1の第1相試験結果は、Choi基準奏効率66.7%(9例中6例)、第2相試験結果は同様に58.3%(12例中7例)となっていた。
◎サーブ社・山田社長 25年10月以降に第3相試験、27年に本承認取得目指す

サーブ社の山田昌樹代表取締役社長は、「今後、ウイルス療法が新しいがん治療の選択肢になり得る。我々の腫瘍溶解性ウイルスが一つのツールになっていくだろう」と指摘。すでにPMDAとの事前相談に臨んでいることを明かしながら、25年10月以降に第3相臨床試験を開始し、26年中に試験終了。27年中に本承認を取得したいと強調した。
なお、同剤は原発性骨腫瘍から開発をスタートさせており、悪性軟部腫瘍や転移性骨腫瘍への拡大も視野に入れている。このほか、日本以外のアジア・欧米市場での開発も進めたい考えだ。
◎日本臓器製薬・武岡R&D統括本部長 国内外の企業含めてライセシングに転換
日本臓器製薬の武岡裕一R&D統括本部長は、「我々は今まで自社創薬を目指し、特に低分子化合物を中心にやってきたが、自社だけでは限界があると感じ、これまでの自社創薬から国内外の企業を含めてライセシングに軸足を置くことに転換した」と明かした。今回のサーブ社とのライセンシングについては、「多分、我々単独では成し得なかった新しい技術に挑戦でき、さらに希少疾患で治療がまだ十分でない疾患の患者に届けできることができる」と期待感を強調した。
◎小西社長 整形外科領域での圧倒的な貢献という当社使命を進化させる
日本臓器製薬の小西社長は、「(今回の契約で)整形外科領域での圧倒的な貢献という当社使命を進化させ、新たな患者層、有効な治療法のない患者への貢献に大きな意義と責任を感じている」と強調。「バイオ、遺伝子、再生医療へと拡大し続ける創薬モダリティにおいて、当社のような中堅製薬企業が新薬を創出し、使命を果たし続けるためには、新たな芽を見つけ、各分野の先駆者とソリューションを実現し、その価値を最大化していくことが必要不可欠だと考えている」と強調した。
また27年には製造販売承認の取得を目指すとしながら、「(上市後は)希少がんということで倫理性や高い学術知識が求められるため、既存のMRとは別に、高度な専門MRの準備を進めていきた」と述べ、社内の特別な認定資格も用意するなど体制整備にも注力する方針を明言した。