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スズケン・浅野社長 新創品・スペシャリティ薬「流通マージン+機能フィーの収益モデルを実現したい」

公開日時 2025/11/17 04:52
スズケンの浅野茂代表取締役社長は11月14日の2025年度第2四半期決算説明会で、新薬創出等加算品及びスペシャリティ医薬品のカテゴリーで、「流通マージン+機能フィーという新たな収益モデルを実現したい」と表明した。製薬企業に求める機能フィーの詳細は26年度からの次期中期計画の中で示す予定だが、トライアル的に実施して製薬企業から高い評価を得ている機能として、スペシャリティ医薬品トレーサビリティシステム「キュービックス」などを用いた流通在庫の可視化があると明かした。浅野社長は、「流通在庫の可視化を通じて、在庫・消費データを用いた需要予測や、服薬実態による治療継続率の向上に活用できると考えており、現在、機能拡張に着手している」と述べた。

◎キュービックス 医療機関590軒に697台導入 がん拠点病院の導入率は56.3%

医薬品の品質・在庫状況把握、自動発注、期限管理が可能なキュービックスは、医療機関から高額医薬品の廃棄ロスの削減策として評価されている。9月末時点で医療機関590軒に697台(24年度522軒・618台)導入され、がん拠点病院の56.3%(264軒/469軒)に導入されている。

浅野社長は、「キュービックスにより、医療機関には廃棄ロスの削減とともに、そこから得られる情報をフィードバックいただく」、「メーカーにも評価いただき、その機能フィーをいただく」との考えを示し、メーカー、医療機関とともに新薬創出等加算品及びスペシャリティ医薬品における新しい流通モデルの確立を目指す姿勢を示した。

◎病院スタッフの入力で症例トレース可能な「M-pos」でも流通在庫を可視化

浅野社長は、キュービックスのほかに流通在庫の可視化に活用できるサービスとして、病院スタッフが専用デバイス「コラボモバイル」から処方患者情報などを入力し、精度の高い症例トレースを可能にする「M-pos(エムポス)」や、在宅患者の服薬管理システム「キュービックスDT」に言及。「M-posやDTの開発による機能拡充により、より精度の高いデータの取得が可能になった。流通在庫の可視化が進んでいる」と述べ、キュービックスやM-posの更なる普及とデータ取得量の増加への意欲を示した。

なお、同社のこの日の発表資料によると、将来的にはスペシャリティ医薬品の流通に関わるほぼ全ての工程で情報・データ収集し、流通在庫の可視化を目指す計画だ。

具体的には、▽製造受託拠点、▽メーカー物流倉庫、▽輸配送ターミナルネットワーク、▽卸物流センター、▽卸支店(納品予定アプリ、発注提案アプリを使用)、▽医療機関/保険薬局(キュービックス、M-posを使用)、▽患者宅(キュービックスDTを使用)――の各工程から情報を集める構想。同社は、「メーカー物流から居宅配送・服薬管理までのモノの流れと、そこから得られるデータの融合により、スペシャリティ医薬品流通のバリューチェーンを確立する」としている。

◎コラボポータル登録者38万ID以上 「唯一無二の医療・介護従事者とつながるスズケン」構築

同社は新たな収益事業の創出に向け、デジタルを活用した情報ビジネスの事業化に挑戦している。事業化に向け、従来構築してきた全国約16万軒の施設(医療機関・保険薬局)ネットワークに加え、医療・介護従事者個人とのつながりの獲得を推進している。この個人との接点の中心となるのは医療・介護従事者向け医療DXプラットフォーム「コラボポータル」となる。

浅野社長はコラボポータルの登録者数が38万ID以上になったと報告し、「50万、100万へと更なる拡大を目指す」と述べた。そして、「コラボポータルの利用を推進することによって、日本において唯一無二の医療・介護従事者とつながるスズケングループが構築できれば、新しい事業モデルが創出できる」とし、製薬企業だけでなく、医療機器、医療食品、ヘルスケア業界など多様な企業への提案が可能になると展望を語った。

また、情報の一元管理と効果的活用のため、「グループ情報統合基盤」の構築を進め、これに生成AIを活用する方針も示した。デジタル情報に加え、営業・物流・バックヤードで日々発生する「リアルな情報」も統合し、「どこにもない情報価値の創出が可能になる」(浅野社長)とした。顧客のニーズに合わせた提案を可能にする「機能Book」の策定にも着手した。

◎25年度上期 医薬品卸売事業の営業利益率1.20%

同社の25年度上期の連結業績は、売上は前年同期比1.8%増の1兆2194億4000万円、営業利益は0.8%減の169億5800万円だった。

医薬品卸売事業セグメントの業績は、売上は1.9%増の1兆1772億5600万円、売上総利益は1.2%減の686億4600万円、売上総利益率は0.18ポイント悪化の5.83%、販管費は0.8%減の544億6300万円、営業利益は2.5%減の141億8200万円、営業利益率は0.06ポイント悪化の1.20%――だった。

◎スペシャリティ薬の売上構成比20%に上昇 浅野社長「仕切価率高く、マージン率が低い傾向」

売上は、新型コロナ関連商材(治療薬・診断薬その他)は落ち込んだものの、スペシャリティ医薬品の受託品目数の増加により、増収とした。スペシャリティ医薬品の受託品目数は9月末時点で38社75品目(24年度39社70品目)となった。

同社の場合、スペシャリティ医薬品の売上構成比が9月時点で20%と高く、24年度の14%から6ポイント上昇した。浅野社長は、「スペシャリティ医薬品は他のカテゴリーと比較して仕切価率が高く、マージン率が低い傾向にある」と指摘。その上で、「一部の医療機関において、当社のカテゴリー構成を踏まえた価格交渉に納得をいただけなかったケースもあった。売上高や売上総利益率に一部マイナスの影響が出ていることも事実」と明かした。そして、「仕切価の問題や価格交渉の形態などは、現在業界で議論が進められており、今後改善されることを期待している」と述べた。

利益面では、仕入原価率の上昇や物流コストの上昇に対し、適正価格での取引推進や全社的なコスト低減で対応した。特にデジタルを活用した物流サービスの見直しで販管費を抑制し、営業利益率1%台を確保した。

このほか、浅野社長は、後発品の出荷調整品目数が9月時点で依然として3000品目超に上る現状に触れ、10万軒の顧客に導入済みの「納品予定アプリ」や、社内の対応業務の集約化・デジタル活用により、出荷調整対応業務を効率化していることを説明した。この効率化の結果、カスタマーセンターへの納期問い合わせは6割減少し、年間約1.3億円相当の削減につながったことを紹介した。
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