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患者の思いを盛り込んだ医学教科書発刊 患者視点の医療を後押し

公開日時 2009/09/07 04:00

25の病気について患者の体験や悩み、医療従事者へのメッセージなども盛り込んだ医学教科書が発刊された。単に疾患や治療方法を解説したものではなく、患者が日ごろの生活の中で困っている患者自身の声を記述しているのが特徴。ともすれば、疾患だけを見た治療に傾きがちな医療者の視点を、患者の生活を尊重しつつ疾患の治療をするという患者の視点から医療を捉えられるよう工夫されている。制作チームは、医療従事者を目指す学生の臨床実習での活用を期待している。

この教科書は「患者と作る医学の教科書」(日総研、2800円)。患者の経験に基づいて構成された医学教科書は日本初という。患者の声が聞きたいという教育側のニーズと、患者の声を伝えたいという患者側のニーズを踏まえ、ファイザーの支援の下で、患者団体や障害者団体などからなる「ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会」(VHO-net)と群馬大学医学部付属病院の酒巻哲夫教授ら医療関係者からなるプロジェクトチームが06年から製作を進め、8月に刊行された。

患者の視点から疾患を見られるように、診断前→検査→診断後→治療などと、患者が体験する治療の流れに基づいて構成。誤診の経験なども含め、各項目に患者の声や体験談を豊富に盛り込んだ。

例えば統合失調症では、初診時に患者が訴えることを患者の言葉で記述するとともに、「周囲に対する敵対感情や症状があっても、それが病気の症状であることを明言し、休養が必要であることを伝えてほしい、どんな暴れても丁寧に説明してほしい」と、患者からの「お願い」も設けた。診断後は「社会的に死んでしまったような気持ちになった」と率直な感想も綴られている。「医師と、薬や病状について共通理解を作ることが難しい」との思いも語られている。

人生設計が家族や周囲を巻き込んで大きな変更を余儀なくされるなど、患者の生活にも思いを致しながら、患者視点の医療を考えさせる内容になっている。制作に携わった中枢性尿崩壊症の会の大木里美副代表は、「教科書の主役は疾患ではなく患者。患者中心のよりよい医療の実現と、患者と医療関係者の間のギャップを埋めるための一端を担うことができれば幸いです」と期待を寄せている。編集代表の酒巻教授は、「医師、医療者として持つべき感受性を育てたい」と話している。埼玉医科大学保健医療学部看護学科では来年4月から講義に用いる。

 

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