新型インフルエンザワクチンなどの下支えで09年通期業績で過去最高、現地通貨ベースで11%増収と大手製薬企業の中でも群を抜いて好調だったノバルティスだが、12年のブロックバスター高血圧治療薬ディオバンの特許切れを目前に、後期開発品の動向が先行きのカギを握ると見られている。
その1つが多発性硬化症(MS)の経口治療薬・ギレニア(一般名:塩酸フィンゴリモド)。本来は先行していたメルクKGaA社のクラドリピンがMS治療薬として初の経口剤として上市される見込みだったが、昨年11月、FDAがクラドリピンの承認申請を受理しかったことが明らかになり、その翌月にアメリカとヨーロッパで承認申請を行ったギレニアが先行する形になった。従来からMSでは経口薬の要望が強く、最初の上市に至れば、大きな市場占有率を確保する可能性が指摘されている。
また、ノバルティスがアメリカ以外でライセンスを有している滲出型中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性症(AMD)治療薬ルセンティスも市場性が高いと見られている。同社は09年12月、ルセンティスの糖尿病性黄斑浮腫に伴う視力障害の適応拡大申請をヨーロッパで行っているが、この新適応はアメリカ以外でAMDとほぼ同程度の患者数を有していると見られている。
もっともシティグループのアナリストであるケビン・ウィルソン氏は「11~14年にかけてのディオバン、がん骨転移治療薬ゾメタ、ホルモン感受性乳がん治療薬フェマーラの相次ぐ特許切れの影響は、(10年中に完了する)アルコン社の買収と現在の後期段階ポートフォリオの開発加速だけでは補えないだろう」と悲観的な見方を示している。
(The Pink Sheet 2月1日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから