サノフィが買収案を公開 ジェンザイムとの交渉は難航か?
公開日時 2010/08/31 04:00
仏・サノフィ・アベンティスが、米ジェンザイムに対して1株当たり69ドル、総額185億ドルで買収を提案していることが明らかになった。同社が8月29日、同社のChristopher A・Viehbacher CEOがジェンザイムのHenri A・Termeer CEO宛に送付した文書を公開する中で明らかになった。従来から報道されているように、買収提案の1株当たり69ドルは、ジェンザイムが受け入れるとされるオファー額75ドルとはかなり開きがあり、買収は難航する可能性も出てきた。
今回の異例な発表の背景には、ジェンザイム経営陣が買収拒否しているほか、公式発表前に一部株主が訴訟提起を行うなど強い抵抗があるため、CEOの考えがよく表れている文書を公開し、「本音」を示すことで抵抗を和らげようという狙いがあるものとみられる。また、報道が先行したオファー額69ドルでもメリットがあることを強く訴えたいとの思惑もあるようだ。
サノフィ・アベンティスは文書公開した理由を、ジェンザイムの株主に両社の合併が株主価値を上げることを理解してもらうためとしている。ジェンザイム株1株当たり69ドルという値付けは、ジェンザイムの7月1日の株価49.36ドルに38%のプレミアムを付けた値。7月22日までの1カ月間平均株価には31%のプレミアムを付けた値。
サノフィ・アベンティスは7月29日に、同社のViehbacher CEOがジェンザイムのHTermeer CEO宛に文書を送付。その中で買収を提案した。しかし、ジェンザイムが買収について検討もせず8月11日に買収拒否を伝えてきたという。その後8月24日、ジェンザイムはサノフィ・アベンティスの財務アドバイザーと面会することのみを受諾したものの、その場では、ジェンザイムが「建設的交渉」の場を持つことを拒否したことを確認したのみとしている。
◎サノフィ側は「持続的成長戦略に一致する」と訴求
サノフィ・アベンティスは、合併が両社および両社の株主にとって価値向上への好機で、両社の持続的成長戦略に一致しているとメリットを訴えている。さらに、合併を成功させるためにはあらゆる選択肢を考慮する用意があるとして柔軟な姿勢を示している。
具体的には、▽サノフィ・アベンティスは、ジェンザイムに対し、新薬開発投資、市場参入・拡大などではリソース面で全面的支援をする。ジェンザイムはサノフィ・アベンティスのグローバルな拠点・製造技術を活用できる▽ジェンザイムは、希少疾患領域でサノフィ・アベンティスのセンター・オブ・エクセレンスになれると同時に同社のボストンの研究拠点の強化となる。▽ジェンザイムの希少疾患領域は、ジェンザイム・ブランドで独立部門として運営される。ジェンザイムの経営陣・従業員は買収後もその役割を期待される▽ジェンザイムの株主には売却金額は現金で直ちに支払われる――などとしている。
サノフィ・アベンティスのViehbacher CEOは、ジェンザイムの株主が提案を支持すると信じていると述べ、同社が「建設的な話し合い」の拒否を続行するなら、株主が大きな価値を受け取ることが遅れることになると指摘している。
なお、今回の買収について、財務アドバイザーは、Evercore PartnersとJ・P・モルガン、法律アドバイザーは、WeilおよびGotshalが行っているという。
【8月31日修正済み】米ジェンザイムに対して1株当たり69ドル、総額185ドルで買収を提案とありましたが、総額185億ドルの誤りでした。訂正致します。