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【日本高血圧学会リポート】久山町研究 VD発症は中年期の高血圧がリスクに

公開日時 2010/10/19 06:00

脳血管性認知症(VD)の発症では、老年期のみならず中年期の高血圧がリスクになることが明らかになった。九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科の二宮利治氏が15日、日本高血圧学会のシンポジウム「わが国の高血圧の代表的疫学コホートとその成果」で、国内の代表的コホート研究「久山町研究」に基づき報告した。福岡市に隣接する糟屋郡久山町(人口約8000人)では1961年から九州大学医学部が住民を対象に脳卒中、心血管疾患などの疫学調査を現在まで継続的に行っている。


同研究では過去に認知症に対する断面調査が1985年を皮切りに4回行われており、現在の認知症有病率は10%を超えている。85~2002年までに認知症発症が確認された65歳以上の275例での病型別分類ではアルツハイマー症(AD)が45%と最多を占め、次いでVD30%、ADやVDなどを含む混合型認知症12%などとなっており、ADやVDが大多数を占めている。 一方、従来から高血圧はVDのリスクファクターであると指摘され、近年では高血圧が大脳灌流の低下を招くことでADを引き起こしているとの仮説も浮上している。しかし、内外の研究では、AD、VDともに高血圧がリスクファクターであるか否かは結論が得られていない。


そこで二宮氏らは認知症のない65~79歳の久山町往民668人を対象に1988年12月から17年間追跡したデータを基に老年期血圧と認知症との関連を検討した。ちなみに88年以前の73~74年時から研究にエントリーされている534人については当時50~64歳時点で88年までの15年間追跡の血圧データがあるため、これを中年期血圧として解析に加えた。


対象668人のうち追跡期間中にした。今回からは、高齢者の高血圧管理の在り方を報告。中年期の高血圧患者で脳血管性認知症の発症リスクが高くなることから、この時期からの積極的な血圧管理の重要性が指摘された。
50~64歳の中年期の高血圧患者で、脳血管性認知症(VD)の発症リスクがより高くなることを示した。
二宮氏は認知症のない久山町往民668人を対象に、中年期血圧と老年期(65~79歳)血圧の影響を検討。 1988年12月から17年間追跡したデータを解析した。


老年期血圧値でアメリカ高血圧合同委員会第7次報告書(JNC-7)にmo基づき正常血圧者(120/80mmHg未満)の相対危険を1とした場合、前高血圧者(120~139/80~89mmHg)4.O、ステージ1高血圧症(140~159/90~99mmHg)5.8、ステージ2高血圧症(160/100mmHg以上)7.4となり、ステージ1高血圧症(p<0.05)、ステージ2高血圧症(p<0.01)では正常血圧者に比べ、有意にVDの相対リスクが高かった。


また、中年期血圧値での相対危険も前高血圧者2.3、ステージ1高血圧症5.2、ステージ2高血圧症8.0と老年期血圧と同様でステージ1高血圧症以上で有意差が認められた。これに対し、アルツハイマー病発症では老年期血圧値、中年期血圧値ともに各分類間で相対危険に有意差は認められなかった。


これを収縮期血圧値、拡張期血圧値別により詳細に相対危険度を検討すると、収縮期血圧では老年期で140~159mmHg群6.0(p<0.05)、160mmHg以上群7.5(p<0.01)、中年期で40~159mmHg群5.6(p<0.01)、160mmHg以上群8.6(p<0.01)で有意差を認めたほか、拡張期血圧では中年期血圧値が90mmHg以上の群のみで相対危険2.5で有意差がついた(p<0.01)。また、ADに関する同様の検討では老年期、中年期とも各血圧群間での有意な相関はなかった。


さらに二宮氏らは中年期から老年期にかけての血圧レペルの変化別にVD発症の相対危険度も検討。中年期と老年期ともに正常血圧(140/90mmHg未満)だった群の相対危険を1とすると、老年期のみ高血圧群3.3(p<0.05)、中年期のみ高血圧群4.7(p<0.01)、中年期・高年期ともに高血圧群4.6(p<0.01)となり、中年期の高血圧患者でVD発症リスクがより高くなった。また、ここでもADでは各群間で有意差は認められなかった。このことから二宮氏は「より健康的な高齢期を過ごすために、老年期のみならず中年期の生活習慣改善を含めた積極的な血圧管理が重要である」と強調した。


また、中年期のみで高血圧と判定され、老年期では正常血圧だった群が老年期だけ高血圧だった群よりも相対危険度が高かったことについて二宮氏は「おそらく中年期から長期に高血圧だった場合には脳皮質下の細動脈病変などが増悪し、一旦、神経細胞などへ障害など、病変が確立してしまうと、降圧療法の効果が減弱してしまうのではないかと思われる。このような患者で老年期により一層厳格な血圧管理をすべきか、降圧薬を変更すべきかは今後の検討が必要」としている。
 

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