欧州医薬品庁（EMA）はこのほど、バイオシミラー（生物製剤後続品）モノクローナル抗体ガイドライン（GL）案を発表した。ジェネリック（GE）メーカーには、360億ドル規模の市場への道を開いたと言えるが、実際には、GEメーカーにとってはバイオシミラーを開発するのは容易でなく、先発メーカーは安堵しているといった状況だ。同GLには6か月間のコンサルテーション期間が設けられ、意見を提出できる。

GLは、GEメーカーが薬物動態学的、薬力学的データで同等性を臨床的に意義があると示すことができれば、効能を示す臨床試験の実施を必ずしも求められないことや他の適応症へのデータ外挿を認めるなどGEメーカーに有利と思える内容となっている。しかし、UBS　Investment ResearchのアナリストGuillaume　van Renteghem氏は、GEメーカーで実際にバイオシミラーモノクローナル抗体を手がける企業は少数にとどまると見ている。同氏は、バイオシミラーモノクローナル抗体を開発しようとすると研究開発だけで1億‐1億2000万ドルかかり、このほかに営業・販売経費が必要となると指摘する。

◎各社の対応は？

サンドはバイオシミラーモノクローナル抗体を開発中だが、ノバルティスのグループ会社とあって資金面の有利さ、ノバルティスの持つ臨床面・規制面での専門知識の活用が可能なメリットがある。
イスラエルのテバはロシュの抗体医薬リツキサンのバイオシミラーを韓国のCelltrionと共同開発中だ。また、インドのドクター・レディズは同バイオシミラーをインドで発売している。しかし、新興国ではバイオシミラーについて欧米のような規制上のハードルはないため、欧米メーカーとは環境が異なっている。
ドイツのStadaは、2009年第1四半期にバイオシミラーの開発準備を行うと発表したが、その後、コスト面からスタートをためらっており、最近、「本年末までにスタートするかどうか最終的に決める」と発表した。
Renteghem氏は、「テバとサンドのことを考えたら、すぐに3番手を目指すか、参入をあきらめるか」だとバイオシミラーモノクローナル抗体分野への参入の困難さを指摘する。
先発バイオメーカーのアムジェンは、同GLを歓迎するとし、コンサルテーション期間に意見を表明するとしている。
欧州ジェネリック医薬品協会（EGMA）は、「高レベルのデータを要求することとバイオシミラーの開発の必要性とのバランスをうまくとっている」と評価している。