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【解説】アバスチン乳がん適応撤回問題で揺れる乳がん治療

公開日時 2011/11/30 04:00

米国食品医薬品局(FDA)による、ジェネンテックの抗がん剤・アバスチン(ベバシズマブ)の乳がんの適応撤回問題は、米国内の患者、学会などに様々な反応を巻き起こしている。米紙「ニューヨークタイムズ」(NYT)、「ロイター通信」などから各界の反応と課題を紹介する。(ヤマトファルマ・緑川労)

FDAのMargaret Hamburg長官は、アバスチンの適応外使用は継続できるとの見解を示しているものの、適応撤回が患者に与えた衝撃は大きい。

ミシガン州トロイ在住のTerrence D Kalley氏は、妻が同剤を服用しているが、「FDAは最も厳しい選択をした。患者にとっては死刑宣告に等しい」と憤りを隠さない。同氏は、FDAが6月に実施したこの問題でのヒアリングで、会場外で抗議を展開したメンバーの1人だ。

同剤を使用している乳がん患者数は約1万7000例。患者団体はそれだけでも、生存のエビデンスとして十分であり、同剤の使用を正当化できると指摘する症例数だ。

Mount Sinai Hospital Dubin Breast CenterのElisa Port共同院長は、「要は彼ら(FDA)は、赤ちゃん(患者)を浴槽の水に投げ込んだようなものだ」と手厳しく非難する。その上で、ジェネンテックが2012年から、パクリタキセルとの併用下で同剤の有効性を検討する臨床第3相試験(P3)について、「アバスチンから便益を受けられる患者集団を選別する必要があろう」との指摘もしている。


◎保険償還は当面継続か?  民間保険者ではすでに保険償還停止も


ロイター通信によると、同剤の年間コストは8万8000ドルと高額だ。患者にとっては、保険償還の継続が重要になる。

公的保険運営者であるメディケア&メディケイドセンター(CMM)のDon McLeod報道官は、「直ちに保険給付政策を変更する計画はない」と、FDAの決定にもかかわらず、当面保険給付を続行する意向だ。ただし、「FDAの決定の結果を受け、保険給付のオプションの問題を評価する考え」であることも明かしている。

しかし、民間の保険者は、その高額な薬剤の償還を継続しない可能性も指摘されている。少数だが、すでに進行乳がん患者への保険償還を停止した企業も存在する。

ジェネンテックは、同社独自の保険償還に関する支援プログラムを実施してきたが、提供できなくなる見込みだという。従来、同剤を使用してきた患者にとっては、経済的に厳しい局面が予測されることとなりそうだ。

◎迅速審査制度の課題も 有効性のデータ十分でなく

今回の決定は、迅速承認審査制度の権威にも課題を投げかけた。同剤は、2008年にFDAによる迅速審査を経て、適応拡大に至った。迅速審査であったがために、審査されたデータは、通常の審査に比べ、有効性のエビデンスが少なかったと指摘されている。

期待されたベネフィットが実臨床で確認されない場合には、実臨床下での追跡試験の実施などが求められる。アバスチンの場合、追跡試験での臨床成績が、同剤の適応取得のために行われた臨床試験と同程度でなかったことが、同剤の適応撤回に至った数少ない理由の1つだったとされている。

ハーバード大学のDaniel Carpenter教授は、逆にFDAが迅速承認での承認が増加する可能性があると指摘する。「アバスチンによって、迅速承認が完全でもなく、取り消せないものでもないというメッセージを国内外に示したからだ」との考えだ。

米メディアの論調では、FDAの迅速承認審査制度に1つの汚点を残したとの主張が主流のようだ。

ロシュ(ジェネンテック親会社)では、2011年第3四半期(累計)でアバスチンの売上高(全世界)は、前年比8%減少、39億4000万スイスフラン(43億ドル)、米国のみでは、15%減少の17.7億スイスフラン(19.3億ドル)になったと報告している。

一部の証券アナリストによると、撤回の影響で2011年売上は前年比10億ドルの減少を余儀なくされるという。

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