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希少疾病・鎌状赤血球症治療薬の開発が活発化

公開日時 2013/10/07 03:50

鎌状赤血球症(SCD)は、両親の片方が健常なヘモグロビンA遺伝子の代わりにヘモグロビンSをもっている場合にのみ発症する遺伝病で、赤血球の形が鎌状となり、酸素を十分に身体組織に供給できなくなる希少疾患である。症状としては、貧血、黄疸、血管閉塞による疼痛発作(クリーゼ)、臓器障害、細菌感染など幅広い。アフリカや地中海沿岸、中近東で多くみられる。米国には約10万に罹患者がいるといわれ、アフリカ系では500人に1人、ヒスパニック系では1500人に1人という。

 
このSCDの治療薬へ新規アプローチを目指し、多数のバイオテクベンチャーが積極的な開発への取り組みを見せているばかりでなく、大手製薬企業が現在のパイプラインの穴を埋め、オーファンドラッグの指定を受けることを目的にSCD治療薬開発に手掛けようとしている。
 
SCDに対しては、治療法選択肢があまりないことが課題となっていた。
SCDには、幹細胞移植がひとつのオプションであるが、適合型を合わせるのが困難なことや手技自体が死亡や失敗のリスクが高く実際にはあまり用いられない。
 
対症療法だが、唯一承認されているのが、骨髄抑制化学療法のヒドロオキシウレアがある。1998年に承認取得したが、痛みを伴うクリーゼの頻度や再発の中等度から重度のクリーゼを伴った成人の輸血の頻度を減少させる。患者の3分の2にしか有効でなく、二次性悪性腫瘍のリスクがあるが、現在、標準治療とされている。
 
ヒドロオキシウレアの長期の効果を検証するために複数の臨床試験が実施されている。一方、実地臨床医のなかには、同剤の毒性により患者からQOL、延命、医療費の面で同剤を遠ざけてしまうという誤解をもっているものもいる。
 
2011年に米国立衛生研究所(NIH)傘下の国立心肺・血液研究所(NHLBI)が補助金を出したBABY HUG Trialと呼ぶ臨床試験で、ヒドロオキシウレアは小児に対して安全かつ有効な結果が示されたと発表した。
 
試験担当者らは、同試験で、プラセボ投与群では、クリーゼをヒドロオキシウレア投与群より2倍経験し、急性胸部症候群と呼ぶ肺炎様の鎌状赤血球合併症は3倍発症した。FDAの依頼で実施されたひとつの臨床試験では、小児に対する同剤の薬物動態のよりよい理解を目的として行われた。
 
ヒドロオキシウレアは、鎌状赤血球細胞に赤血球内のヘモグロビンF(胎児性ヘモグロビン)の分量を増加させ、炎症に反応する免疫細胞を減少させることで作用する。
 
Astex Pharmaceuticalsの血液がん治療薬Dacogen(デシタビン)も胎児性ヘモグロビンを減少させることに役立つ可能性があり、現在、SCDに対する有効性をNHLBIが実施しているフェーズII試験で検証している。結果は2016年末に発表予定だ。
 
GlycoMimetics(メリーランド州ゲイザースバーグ)は、2011年にファイザーとGMI-1070を共同開発することを発表した。GMI-1070は、機能不全の赤血球細胞、免疫細胞および血小板を凝集、閉塞させる塊を形成する炎症反応に関与すると思われるセレクチンと呼ばれる3つの血管接着分子ファミリーの作用を阻害する。
 
同社は、今年4月に良好な成績のフェーズIIデータを発表し、ファイザーがセレクチン阻害剤の開発を継承するとの考えを示した。
 
同試験結果では、米国およびカナダの12歳から60歳のSCD入院患者76例でGMI-1070が血管閉塞クリーゼのリスクとともに入院期間短縮や麻薬性鎮痛剤の使用を減少させたことを示した。ファイザーとの導出契約では、GlycoMimeticsは、3億4000万ドルほどを受け取る。GMI-1070は、FDAの希少疾病薬および迅速審査の指定を受けている。
 
米Selexys Pharmaceuticalsは、特異的P-セレクチン阻害剤SelG1という薬剤を開発中だが、これが成功するとノバルティスは同剤の権利を購入するばかりでなく、Selexysを買収する可能性がある。2012年9月に両社の6億6500万ドルに上る提携が発表された。Selexysは、2番目のクローン病および腫瘍転移治療薬のSelG2を新会社に移転させる予定である。同剤は、欧米で希少疾病薬の指定を受けている。
 
SelG1のSUSTAIN試験が8月19日に開始された。同剤とプラセボおよび同剤とプラセボ+ヒドロオキシウレアの比較試験を実施する。主要評価項目は、SCD関連クリーゼ発症の減少である。結果は2015年末を期待している。
 
SelG1は、主に白血球細胞上で起きるP-セレクチンとその受容体PSLG-1の結合に干渉するヒト化モノクローナル抗体。SelG1は、P-セレクチンに結合することにより、内皮細胞と血小板およびクリーゼに関与する他の血液細胞との間の接着に介在する能力を阻害する。
 
Emmaus Medical(カリフォルニア州トランス)は、12月に5歳の小児230例についてSCDクリーゼの頻度を減少させるために精製L-グルタミンの予防効果を試験するフェーズIIIの結果を報告する計画だ。同社は、初期のNHLBIおよびFDAからの資金援助のあとは、友人や家族などからの資金提供によりタイトななかで製品を開発した。
 
L-グルタミンは、天然に存在するアミノ酸で栄養補助食品として販売されている。Emmaus Medicalは、同剤を治療薬として開発するのではなく、血管閉塞の予防薬として開発を目指している。
 
同社は、UCLA(カリフォルニア大学ロスアンジェルス校)およびEmory大学の治療センターで約60人を被験者としてフェーズII試験を完了した。現在、フェーズIII試験が米国31か所で実施されている。グルタミンはすでに古くから使用されてきたため、画期的新薬の申請は拒否されたが、希少疾病薬と迅速審査の指定は獲得した。
 
開発中の血管閉塞クリーゼの抑制を目的とした主要SCD治療薬は別表の通り。
<別表>企業名、候補物質、作用機序/標的、開発段階の順。
*AesRx LLC/NIH National Center for Advancing Translational Science's Therapeutics for Rare and Neglected Disease program。Aes-103(5-ヒドロキシメチル‐2フルフラール(5-HMF))。鎌状化させないためにヘモグロビン‐S細胞の酸素に対する親和性を増加させる。フェーズII(2013年9月3日発表)。
 
*BioMarin Pharmaceutical Inc。6R‐BH4(サプロプテリン二塩酸塩)。遺伝子疾患プログラムの下でPKU(フェニルケトン尿症)治療薬Kuvanとして開発された。内皮機能不全は、一酸化窒素の産生を求められる。一酸化窒素は炎症のコントロールおよび血小板凝集を減らすことに関与する内皮機能を制御する。2008年の鎌状赤血球試験の成功後、2007年には血圧管理、また、2009年には末梢血管疾患の試験で失敗、心肺プログラムにおける決定を前に、医師主導試験の結果を待っている。
*bluebird bio inc。LentiGlobin-正常βグロビンの単一コドン変異型のコピーの作成(T87Q)。遺伝子をレンチウイルスベクター経由により自己造血幹細胞に導入する治癒の可能性のある遺伝子治療。フランスでフェーズI/II試験中、およびβサラセミア(地中海貧血)メイジャーおよび他の先天性ヘモグロビン疾患ではフェーズII試験中。米国では発売予定。
 
*Emmaus Medical Inc。L-グルタミン‐天然に存在するアミノ酸の医薬品レベル。有害な酸化から赤血球細胞を保護する抗酸化物質。酸素バランスを回復させる。フェーズIIIが2013年12月に完了。
*GlycoMimetics/ファイザー。GMI-1070、セレクチン阻害剤。炎症に関与すると思われる細胞接着分子の3つの型すべてを阻害するよう設計された合成糖模倣分子。2013年4月フェーズII完了。ファイザーが開発を承継する予定。
*HemaQuest Pharmaceuticals Inc。HQK-1001‐短鎖脂肪酸誘導体。赤血球細胞内で胎児性ヘモグロビンの産生を誘導。フェーズIIbの登録終了、中間データは2013年末発表予定。
*Mast Therapeutics Inc。MST-188‐機能不全を起こす炎症および血栓を抑制、ならびに、血管閉塞クリーゼの持続時間を短縮させ血流を改善させながら、天然の水和性非粘着表面に回復させるために、障害細胞上の疎水性表面に結合する。EPICフェーズIII試験に登録中。
*NKT Therapeutics Inc。NKTT-120-ヒト化モノクローナル抗体。SCDに伴う慢性炎症を減らすために不変ナチュラル(CD3+)キラーT細胞を除去する。2013年2月に漸増用量フェーズI試験開始で2014年末データ発表予定。
*Sangart Inc。MP4CO-ペグ化一酸化炭素ヘモグロビン(科学修飾ヘモグロビン)。正常ヘモグロビン‐S細胞の安定化と鎌状化を防ぐために非毒性レベルの一酸化炭素を供給することで、肺に酸素を送り、クリーゼ疼痛の緩和・クリーゼ持続時間の短縮などのために虚血した組織へ酸素を供給する。フェーズIが2012年12月に完了。
*Selexys Phramaceuticals Corp/ノバルティス。SelG1-坑P-セレクチン抗体。血管閉塞に至る血栓を形成するカスケードにおいて最初の接着分子に結合する。2013年8月にSUSTAINフェーズII試験を開始。ノバルティスは同剤が成功すれば、Selexysと同剤を買収する意向。 
 
(出典:ClinicalTrials.gov、EBI Archives、企業ウェッブサイト)
The Pink Sheet 9月9日号
 
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