英王立医師協会とNICEがスタチンガイダンス案めぐり対立 評価委員のCOIも懸念
公開日時 2014/06/26 03:50
英王立医師協会(RCP)、英国医師会(BMA)らは6月10日、英国立医療技術評価機構(NICE)が、今年2月に作成した高脂血症薬スタチン剤のガイダンス案について、反論する意見書をNICEのDavid Haslam議長ならびにJeremy Hunt保健相に提出したと発表した。
意見書は、「スタチン剤についてのNICEによる最近のガイダンス案に関する懸念」(Concerns about the latest NICE draft guidance on statins)。NICEは同日、即座に同意見書に反発、両者の対立が深まっている模様だ。
NICEは2月12日、スタチンの服用を推奨する対象を従来のガイダンスでは、40~70歳の成人で、今後10年間の間に冠動脈疾患や末梢血管疾患、脳卒中などの心血管イベント発生リスクが20%以上ある者と規定していた。しかし、今年2月に公表されたガイダンス案では、“心血管リスクが10%以上である者”に変更した。これは、スタチンの服用を推奨する対象の拡大を意味する。
◎NICE・ガイダンス作成に企業とCOIある医師が参加
RCPのRichard Thompson会長、BMAのMalcolm Kendrick医師、リバプール大学のSimon Capewell教授ら職能団体幹部や専門医9名は6月に入って、NICEによる基準の緩和で、新たに500万人にスタチン剤が投与されるとの見通しを意見書として公表。その上で、健常人に投与された場合の心血管イベントに起因した死亡率や予防や有害事象、ベネフィットについてエビデンスが適切に示されていないと指摘した。
有害事象の発生率は、スタチン、プラセボの両者を示し、スタチンの発生率に懸念を示した。さらに、健常人のデータが適切に示されない限り、スタチンの適切な医療経済評価(HTA)をすべきではないとの考えも示した。
また、NICEの独立評価委員会のメンバー12人のうち8人がスタチンに関与する企業と直接的金銭関係を持っているために利益相反(COI)の観点から、これら委員がガイダンス作成に関与しているのは不適切と批判した。
◎NICE スタチン投与は費用対効果高い COIは透明性担保
これに対し、NICEは、ダイエットや運動の代わりにスタチンの服用を推奨しているわけではなく、心血管イベント予防の選択肢のひとつを提供するものと説明。スタチンが安価となったことを背景に、費用対効果の高い予防法だとの反論を展開した。
COIについては、評価委員会の専門家、患者らがガイダンス案を作成していると説明。その上で、専門家の知識・経験なくしてはガイダンス案を作成することは不可能だとした。
NICE実地臨床センターのMark Baker教授は、「誰もアメリカの医師のように金銭のために推奨案作成に名を連ねていない」と反発した。さらに、「我々はガイダンスを作成する上で、15年以上COIを管理する方法を検討してきたが、我々の方法は、透明性を持つばかりでなく厳格で実用的なものだ」と反論した。
Baker教授はまた、「本ガイダンスは、数百万人の健常人にスタチンを服用させようという目的をもっているものではない。それとは反対に、疾患や早死にを未然に予防することを目的としている」ことを強調した。