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“患者の声”で処方が変わる 製薬企業の情報発信内容も一因

公開日時 2015/02/28 00:00

提供:株式会社アンテリオ

 

「もらった薬がとても効きました」「いい薬があると知人に聞いたのですが」――。実地医療では患者から医師に薬の話をすることがしばしばみられる。この患者の行動が医師の処方にどのような影響を与えているのかは気になるところだろう。さらに、患者がどのような時に薬の話をするのか、製薬企業として取るべき施策があるのかどうかも製薬企業のマーケティング担当者の大きなテーマのひとつである。

そこで、アンテリオの自主企画調査データで、チャネルミックスの効果を確認する医師調査SOC(Share of Channels)と、薬剤の使用満足度やコンプライアンスを確認する患者調査APM(Anterio Patient Mindscape)から、“患者起点”によるマーケティング戦略を提案したい。

 

 

“患者の声”ノンプロモーション戦略の重要ファクターに

 

SOCでは、「患者の声」をノンプロモーションのひとつに捉えている。まず、「患者の声」の影響が強い薬剤を見てみると、▽疼痛薬▽アレルギー薬▽抗うつ薬――といった薬効群が上位に挙がった(図1)。総じていえば、効果を検査値で測るよりも、患者の反応で効果判定を行なう薬剤である。

 

医師は通常、薬剤を処方してみて副作用がなく検査値が良好であったり、エビデンス通りの期待の有用性が得られたりすることで、“使用感”を得ていく。SOCでは、この「医師の使用感」も「患者の声」と同様にノンプロモーションのひとつと捉えている。患者の反応で効果判定を行なう薬剤が「医師の使用感」を得るためには、「患者の声」が重要ファクターとなる。

 

患者が薬剤に満足していれば、プロモーションコストをかけずにノンプロモーションで薬剤の良い印象を形成することができる。これは、新薬の発売初期からも可能だ。逆に患者が薬剤に不満であれば、「医師の使用感」が想定ほど上がらず、ノンプロモーション部分が弱くなる。加えて、医師が製薬企業の意図したものとは異なるポジショニングを形成してしまうという負の連鎖にもつながるリスクがある。

 

このため、「患者の声」が「医師の使用感」に影響を与える薬剤ほど、薬剤使用患者が処方された薬剤をどのように思っているのかが重要になってくる。

 

 

製薬企業の戦略で“患者の声”は変わるか

 

次に、「患者の声」の影響力が高かった薬効群について、APMで見ていくが、今回は興味深い事例をひとつ紹介したい。

 

一般消費財であればナショナルブランド・OEMが例え同じ製品であったとしても、メーカー・CM・パッケージ・店頭広告で印象は随分異なってくる。製薬企業はそれらの活動を一般消費者・患者に対して基本できない。薬剤が同じであり使用している患者の属性が同じであれば、反応はほとんど変わらないと考えられる。

 

そこで、「患者の声」の割合が高い抗うつ薬の中で、いわゆる一物二名称であるリフレックス/レメロン(一般名: ミルタザピン)に注目してみたい(図2)。

 

同一薬剤であるにも関わらず、病院受診時に処方された患者では、「リフレックスは副作用に対する不満」「レメロンは効果に対する不満」が高く、両薬剤でそれぞれ5ポイント近い差が見られた。同じ薬剤でなぜこのような差が生じているのか。医師・患者およびそれらを取り巻く環境から考察すると、「医師が新患(軽症)ではなく切替(重症)で使っているのではないか」「医師・患者がすぐに効果が出ると思って使用していないか」「患者が効果の捉え方を間違っているのではないか」といった仮説が考えられる。

 

そして、これらの仮説のベースに、「製薬企業・MRから医師に対する活動結果」ということがいえるのではないだろうか。

 

日本市場では患者に対して薬剤そのものの宣伝ができない。このため、医師や患者の満足度・不満は、当該薬剤の期待値が大きく影響し、この川上に製薬企業・MRが存在する。マーケティングの観点からは、この状況を逆手にとって、患者に対して直接アクションを起こせない場合でも、医師を通じて患者の薬剤満足度をコントロールできないかを検討することは重要だろう。

 

リフレックス/レメロンは病院・クリニックともにMRディテールを行なっている。しかしながら、そこでMRが病院の医師に伝えているメッセージは、効果に関するメッセージひとつ取っても2剤で異なっていることが、アンテリオのMR活動・メッセージがわかるImpact Trackから明らかである(図3)。

 

例えば、リフレックスは「うつ・不安・焦燥改善」というある程度患者タイプに即したディテール割合が高いのに対し、レメロンは単に「効果の強さ」のディテール割合が高い。単純な仮説ではあるが、レメロンはMRから「効果の強さ」が医師に伝わり、医師がその内容をもとに「処方患者像」を設定し、「過度な期待を持って患者に薬剤説明」をして処方したため、最終的に患者が「想定よりも効果がない」ことに不満を持ったのかもしれない。

 

リフレックス/レメロンは一例に過ぎず、こういった事例は少なくない。医師に対して薬剤の特徴を伝えるだけでなく、企業本社では患者も見据えて薬剤メッセージや薬剤処方患者像を考えていくことが重要となり、また現場のMRも患者を意識しながら薬剤メッセージや薬剤処方患者像を正確に医師に伝える必要があるということではないだろうか。このような活動を徹底することで、医師には「適切な患者」に対して「正しい期待値」で「患者に説明」して処方をしてもらうことにつながる(図4)。MRが処方患者1人ひとりの状況・経過を医師に確認する場合も、非常に重要な点といえるだろう。

 

 

意図して“患者の声”の分析を

 

「患者の声」が「医師の使用感」に影響を与え、プロモーションに頼らないノンプロモーションによって印象形成している薬剤では、少なくとも処方された患者の「患者視点」がより重要となってくる。

 

製薬企業から「患者の声」を高めるのは難しいとの見方もあるが、同一薬剤でも患者の薬剤不満点が異なっている事実がある。製薬企業は医師に対して「適切な薬剤メッセージ・処方患者像」を伝えることが、「患者の声」を高める有力な手段となり得るのではないだろうか。現場のMRは「患者の声」まで意識した薬剤説明が求められてくる。

 

医療業界を中・長期的な視野で考えたとき、“医師”が重要なのはもちろんだが、実際使用者である“患者”が今よりも薬剤決定権を持つ可能性は高い。「患者の声」「患者視点」について、何となく患者も大事という理由でデータ聴取を行なうだけでなく、意図して検証・分析を行なっていくことが長期的な成功に必要不可欠な要素になるだろう。

 


お問い合わせ

株式会社アンテリオ

ソリューション企画部 リサーチディレクター 紫竹 宏亮(シチク コウスケ)
Tel:03-5294-8393 (代表電話) e-mail:ant-syndicated@anterio.co.jp (代表アドレス)

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