アッヴィ・フェリシアーノ社長 18年に「二桁成長、トップ20目指す」 マヴィレットが急速浸透
公開日時 2018/08/30 03:51
アッヴィ合同会社のジェームス・フェリシアーノ社長は8月29日、都内で記者会見に臨み、「革新的ポートフォリオ、新たな適応追加、新製品の上市、優れた実行力、揺るぐことのない患者さん中心の視点で、2018年には2桁成長と、初のトップ20入りを目指す」と意欲を語った。IQVIAのデータによると、17年11月に発売したC型肝炎治療薬・マヴィレットは18年上半期(1~6月)に薬価ベースで758億円を売上げ、一気に国内医療用医薬品の売上高トップにのぼりつめた。今後は自己免疫疾患への新製品の投入や、オンコロジー領域への新規参入を通じて持続的な成長を目指す考えも鮮明にした。
同社の17年売上高は、845億7100万円(日本法人決算ベース)。13~17年の5年間で売上高(薬価ベース)は年平均で8.9%成長し、日本市場全体の伸びを大きく上回った。従業員も1.6倍に増加し、1000人を超えた。フェリシアーノ社長は、「既存製品の価値を最大化するためのライフサイクルマネジメントが功を奏した。さらにC型肝炎治療薬、パーキンソン病治療薬などの新製品の上市の成功がある」と分析した。
◎C肝治療薬・マヴィレット 4か月間でマーケットリーダーに 小児への適応拡大視野
なかでも、C型肝炎治療薬・マヴィレットは、17年11月の上市後、急速に浸透し、4か月間でシェア80%を獲得した。すべての主要なジェノタイプに効果を示すほか、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)既治療の患者や腎機能障害患者にも投与できるなどの特長がある。投与期間を既存薬の12週間から8週間に短縮することも可能にした。同剤のこうした特徴が市場に評価され、急速な浸透が進んだ。一方で、C型肝炎治療薬のマーケットは、治療が奏功すれば縮小する特殊性がある。フェリシアーノ社長は、日本初となる、「小児C型慢性肝炎」の適応取得に向けてフェーズ3が進行中であることを明らかにし、「マーケットリーダーとして、アンメットニーズに応え続け、C型肝炎の撲滅に貢献する」と意気込みを見せた。
このほか、自己免疫疾患治療薬・ヒュミラについては、日本独自の適応である膿疱性乾癬を18年に取得したことも紹介し、日本市場に注力する姿勢を強調した。
◎オンコロジー領域新規参入で増員も MR×テクノロジーで情報提供最大化
パイプラインは、関節症性乾癬など複数の疾患が申請段階にあるIL-23阻害薬・リサンキズマブ、関節リウマチなどがフェーズ3段階にあるウパダシチニブなど、免疫疾患領域に臨床後期段階が複数ある。フェリシアーノ社長は、上市を見据え、「自己免疫疾患領域でマーケットリーダーとなることを目指す」と語った。
さらに、オンコロジーに新規参入することを改めて表明。これまでのフォーカスエリアである自己免疫疾患、新生児、ニューロサイエンス、肝疾患に加え、「フォーカスエリアの拡大で持続的な成長を目指す」方針を鮮明にした。がん領域には、多発性骨髄腫と急性骨髄性白血病がフェーズ3段階にある、BCL-2阻害薬・ベネトクラクスなどをパイプラインに持つ。このほか、抗体薬物複合体A(ADC)も11プロジェクトが進行中で、同社は世界最多の開発数としている。
オンコロジー領域についての新規参入に伴って、マーケティングや営業など新たな組織が必要との認識を示した。「最も輝かしい人たちを呼んできて新しい仕事、新しい製薬企業を作っていきたい」と述べ、数百人単位での増員を視野にいれる考えを示した。一方で、MR数については、「効果を出す十分な数はある」としたうえで、「単にMR数を増やすということだけではない。いかにテクノロジーを活用していくことが重要だ」との考えを表明。Facetimeを活用して、遠隔地にいる医師同士をつなぐことを例にあげ、デジタルソリューションを活用することで専門医のコミュニティーを中心とした情報提供の価値を最大化することの必要性を強調した。
◎働き方改革で社員にも「選ばれる会社に」
フェリシアーノ社長は、こうした目標実現のために「強い企業文化が必要」との考えも表明。在宅勤務の上限設定を設けないことや時短制度の拡充など働き方改革に取り組んでいることを紹介した。「アッヴィは、オープンなカルチャーを作り、新たな歴史を作ることを体感できる会社だ。ビジネスの成長と共に、強固な組織を作っていきたい。人財マーケットも厳しくなる中で選ばれる会社になるよう邁進する」と述べた。