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【FOCUS 販売情報提供活動GL施行 医療現場の声を企業カルチャーに転換せよ!】

公開日時 2019/04/01 03:52

「この際、従来路線を切り離し、完全な転換を図る」-。厚生労働省の「医療用医薬品の販売情報提供活動ガイドライン(GL)」がきょう4月1日施行する。「規制が厳しくなるばかり。MR活動ができなくなる」と嘆く担当者の声を当初はよく聞いたが、ここにきて変化の兆しが見え始めている。社内ガバナンスの効く組織体制の構築、MR評価(KPI設定)の見直し、さらには営業日報など業務記録の作成・管理方法を見直す動きが一部企業で出始めている。今回のGLは企業の経済活動そのものを否定してはいない。とはいえ、医療者から批判された売上至上主義を廃し、むしろ適正なルールや範囲のなかで行う経済活動への転換を促している。GLから見えるMR像は、高齢化が進む医療現場の変化に目を向け、医師や薬剤師の声に耳を傾け、業務記録として社内に報告することにある。これまでの本社主導の上意下達型活動を転換し、ボトムアップ型の情報収集・提供活動を企業経営者のリーダーシップの下で再構築することにある。(沼田佳之、望月英梨)

厚労省の販売情報提供活動GLでは、企業の経営陣はMRが行う販売情報提供活動について一切の責務を負うことが明記された。その上でガバナンスの効く社内体制を整備し、全社員の評価・教育、手順書・業務記録の作成・管理、不適切な活動への対応、苦情処理の全てに対応が求められる。社内体制は10月施行のため6か月間の猶予があるが、その間に自社製品に関する資材やホームページに掲載したコンテンツ、医局説明会用のパワーポイントとMRが使う‟ノート“の記載などの全てを点検し、社内の再審査手続きを経て、承認されたものから順次活用する。

◎モニタリングは社内システムと連動 チェックリスト方式も一考

社内システムの改修もこれに伴い必要となる。例えば、販売情報提供活動監督部門が行うモニタリングの手順や評価項目の公表、さらにはモニタリング実施時のデータ管理については、社内にある各種システムとの連動が求められる。実際のモニタリングは営業本部の支店や営業所に止まらず、本社のマーケティング部や資材を作成する部門にも及ぶ。対象が広範囲となるため、社内的に一定のシステム構築が必要になるという訳だ。そこで考えられるのが、モニタリングの手順を定めた「チェックリスト」の作成だ。担当部門にモニタリングの対象となる評価項目を事前確認してもらうというもの。支店や営業所へのモニタリングであれば、MRの活動日報については、日時、訪問先施設名、医師・薬剤師名、使用資材が最低限の必須項目となる。これ以外に、未承認薬・適応外薬に関する質問の有無や、医師や薬剤師からの質問の有無、有害事象・安全性情報の有無、製品以外の情報提供・ディスカッションの有無などについて、営業日報にデフォルト形式でチェック項目を作成し、「有」の場合は特記事項にMRから記載を求める。特記事項については、当初は「設けない」という企業が散見されたが、ここにきて、その必要性を認識する企業も増えている。加えて、MRの上長による確認の電子サインも残す必要がある。

◎虚偽記載の場合は罰則規定の適応も

同様に、社内の資材制作部門についても、社内審査の有無だけでなく、掲載した図版のエビデンスレベル(査読付論文など)、承認申請時以外のデータ使用の有無、海外の審査報告書の引用の有無、副作用情報のアップデートの有無などをチェック項目で示し、「有」の場合は特記事項に記載を求める。これらをシステム化することでモニタリングをスムーズに行える体制を整える。これにより、これらデータの管理や保管も用意に行うことができる。さらに重要なことは、チェック項目の記載内容に虚偽があった場合の取り扱いを社内規定に明記し、もし虚偽報告が発覚した場合は、罰則規定が適応されることをあらかじめ決めておくことが重要だ。

◎MR教育は見直し必須 医療者の声を業務記録に反映させるトレーニング

MRの業務記録については、先に示した通りで、特記事項を含む記録の作成・保管を徹底する必要がある。これに連動して大切なのが、MR教育だ。今回のGLでは、販売情報提供活動そのものに大きなメスを入れた。冒頭の記載通り、「MR活動が制限される」との関係者の認識がここにある。ただ、GLの趣旨をしっかり読み込むと、むしろ、これまでのSOV(シェア・オブ・ボイス)型でコール数や訪問数を軸としたMR活動のKPIに対し、否定的なメッセージを発していることが分かる。むしろ、いまの病院や診療所の外来には高齢者が溢れ、一人の患者が複数の診療科を受診する時代となり、かつ多剤を服用するなかで、薬物治療そのものが大きな転換期を迎えていることに、「もっと外に目を向けるべき」と読み替えることができる。

今回のGLでは、医師や薬剤師との口頭でのやり取りを含めて業務記録に残すことが規定されている。すなわち、医師や薬剤師と面談するMRは、医療現場で起きている変化を見逃さず、それを記録し、社内に持ち帰り、更なる適正使用情報の提供に活かせ、と解すことができるのだ。

ところが現状の営業日報の多くは、「処方獲得!」や「この資材で増量に成功しました!」という上長向けの内容が殆どで、現場のニーズや医療者の意見を本社に吸い上げるような記載は少ないという。確かに、現在のMR教育の中で、業務記録の作成を教育カリキュラムに位置づけてこなかったことも問題かもしれない。製品戦略中心の教育では、今回のGLに応えることは不可能と言える。ここはMR教育の段階から、医療者の声に耳を傾け、その内容を本社にあげるための業務記録の作成に軸足を置いたMR教育を実践してみてはいかがだろうか。

同時にMRの評価については、厚労省が2月20日に公表したQ&Aにあるように、このGLの遵守状況をKPI設定することも重要だ。もちろん売上目標を外す必要はないが、仮にだが、評価期間の中で一度でも不適正な販売情報提供活動が社内外から問われたMRの評価はマイナス査定になることを社内規定として定めることも一考ではないか。

◎MA、MSLはより慎重な活動が求められる

最後に未承認薬・適応外薬の関係は3月29日付で厚労省からQ&Aが発出された。GLでは、「求められた場合」に限って、8要件の範囲内で情報提供することを認めた。昨年9月のGL公表の段階では、多くの企業が、MAやMSLがこの役割を担うと沸き上がったが、時を追うごとに、この課題の根っこの深さを知ることになり、いまはトーンダウンしている。未承認薬・適応外薬については、粉砕、配合変化、懸濁など実際上の医療ニーズと重なる部分も多い。その点で、MRが、こうした質問を医療者から受けることも少なくないという。この対応方針についてはQ&Aに記載された通り、「社内資料を企業として本GLに適合し、情報提供可能と判断した上で、本GLの条件に従って情報提供することは差し支えない」としている。また、この情報の提供者についても、MR活動の中であれば、一旦、情報提供活動とは切り分ける形(アポイントを取り直すなど)で、再面談の目的を明確にした上で医療者に情報を提供することも可能だ。一方、MA、MSLについては、情報提供の受け手である医療者が、「販売情報提供活動を目的とした活動であるとの疑念を生じ得る」ことや、各社間でその担保方法が統一されていないことから、現時点でGLが指摘する問題を完全に払しょくするには至っていないとの認識が業界内にある。ここ数年らいの不適切事例の多くにMAやMSLが関わっていたことを考えると、慎重な対応が求められることは言うまでもない。


 

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