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エーザイ・内藤CEO “データドリブン・ビジネスモデル”構築がトッププライオリティー

公開日時 2019/05/14 03:52
エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOは5月13日の決算会見で、政府が推進する第4次産業革命に乗じ、同社としての「データドリブン・ビジネスモデル」の構築に取り組む考えを表明した。社内外に蓄積したビッグデータをAI(人工知能)で解析し、その結果から未来予測を行い、その仮説に基づくプラットフォームを通じ、同社の強みである認知症分野などで新たなビジネスを創出する。内藤CEOは、「このモデルの構築はエーザイのトッププライオリティーに近い重要な経営課題だ」と強調した。2018年度薬価制度抜本改革で産業構造転換を突き付けられた製薬業界だが、エーザイは一足早く、ビジネスモデルの転換に踏み出す。

◎プラットフォーマーとして100万人データ集積目指す

内藤CEOはこの日の会見で、製薬産業の構造転換に対応するビジネスモデルの転換に舵を切る考えを鮮明にした。同社の目指すビジネスモデルは、エーザイがプラットフォーマーとなり、認知症患者などのリアルワールドデータ(RWD)を集積。AIを活用して分析し、予知や予防に関するアルゴリズムを開発する。スポーツジムや民間保険などコンテンツを提供する事業者と協働で、個々の患者に合致したソリューションを提供するモデルを描く。データサイエンスに基づく「データドリブン」の実現を目指す。

描くエコシステムは患者一人ひとりと直接結びつく「2ウエイのコミュニケーションができるようなシステム」(内藤CEO)だ。「100万人の当事者の方と直接コミュニケーションを取れるようなシステム」を19年度中にも開発することに意欲をみせる。実現に向け、ITベンダーやベンチャー企業とのデータ・プラットフォーム関連のパートナーシップに5年間で150億円を投資する考えも明らかにした。国内初の保険適用アプリ「Join」を提供するICT系のベンチャー企業、アルムとの資本業務提携も締結した。これをベースに、治験や臨床試験などを通じて蓄積したリアルワールドデータ(RWD)を活用したプラットフォームを整備し、ITベンダーやベンチャーなどのパートナー企業との協働によるエコシステムを構築する。

「アルゴリズムを用いてデータを解析することで、疾患の予測や生活上のアドバイスを行うような便益を創り出していきたい」と内藤CEO。医薬品だけでなく、ソリューションの開発に意欲をみせた。医療・介護職、スポーツジムなど、様々な職種がプラットフォームに参画することで、「生活者に提供するサービスやクオリティーが向上する」と強調した。エコシステム構築実現に向けて、データの管理・ガバナンスの重要性も指摘した。


◎自治体との認知症分野での連携協定活かしたエコシステム構築へ

エコシステムの拠点として、同社の強みである認知症分野において約150の自治体と連携協定を結んでいることを活かす考えも表明。地域包括ケアシステム時代を見据えたエコシステムを全国各地域に構築し、社会的価値と新たなビジネス創出に挑戦する姿勢を鮮明にした。

この構想を日本だけでなく、米国や中国などでのビジネスに拡大する考えも示した。中国では、IoTを活用して基礎インフラと生活インフラ・サービスを効率的に管理・運営する”スマート・シティー”の建設も進む。米国のGAFA、中国のBATHなどプラットフォーマーによるビジネスが活況を呈しているだけに、エーザイのグローバル戦略にも活かしたい考えが垣間見られる。

◎ITリテラシーの高い人材の重要性強調 認知症のRWDに自信

ビジネスモデルが転換するなかで、求められる人財も変容する。「ITリテラシーやデータリテラシーが非常に重要になる」と内藤CEO。同社には、アリセプトの二重盲検下比較試験(ダブルブラインド)だけでも約9000例のデータベースを構築する。内藤CEOは、「当社が認知症関連で持っているデータは世界で最も面白い高品質のデータだと思う」と自信をみせる。「人財は枯渇して奪い合いの状況にある」としたうえで、蓄積したRWDが「人財を引き寄せる一つのきっかけになれば」と語った。

◎19年3月期決算 連結売上高は7%増収 レンビマがグローバルで成長

同社の2019年3月期決算は、連結売上高は前年同期比428億円増(7.1%増)の6428億円。20年度の目標値としてかかげたROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)10%を2年前倒しで達成するなど、好調さが目立つ。国内医療用医薬品売上高は、2.0%増の2516億円。18年4月実施の薬価改定の影響でアリセプトの薬価引下げなどによる182億円の減収があったが、抗がん薬・レンビマ、免疫治療薬・ヒュミラ、疼痛治療薬・リリカが伸びた。

連結業績を大きく牽引したのが、肝細胞がんなどの適応を取得したレンビマ。グローバルでの18年度売上高は前年同期比94.1%増の626億円。戦略的提携を結ぶ米・メルクからマイルストンとして655億円を受け取っており、1剤だけで1281億円を叩き出した。19年度も売上高は85%増の1160億円と計画する。最も市場の伸びが大きい米国などで、108%増の780億円、国内でも31%増の130億円と予測する。

免疫療法治療薬・キイトルーダとの併用療法では、PD-L1発現の有無などによらず腫瘍縮小効果が確認されており、有効性に自信をみせる。米FDAからは腎細胞がんに続き、子宮内膜がんの適応でブレイクスルーセラピーを取得。予定する13本のうち、すでに11本の臨床試験をスタートさせるなど、試験計画も順調に進んでいる。

◎「世界初の疾患修飾薬を世界に先駆けて届ける」 認知症への決意新たに

20年3月期決算も連結売上高6800億円(6%増)、営業利益1030億円(20%増)、純利益(親会社帰属)は720億円(14%増)と増収増益を見込む。“データドリブン・ビジネスモデル”、がん免疫療法に加え、アルツハイマー型認知症治療薬の疾患修飾薬を19年度の成長に向けた“3つのキーワード”にあげる。

「(アルツハイマー型認知症治療薬として)世界初の疾患修飾薬を世界に先駆けてお届けするのは最大の経営の意思だ」―。この日の会見で内藤CEOはこう力強く語った。同社がアルツハイマー型認知症の次期主力品として期待を寄せていたアデュカヌマブの開発が中止となったのは、3月のこと。世界的にも衝撃が走り、株価にも大きく影響した。一方で、「BAN2401」は3月にフェーズ3をスタートさせた。さらに、Elenbecestatは2つの臨床試験に参加した患者約2100人をひとつのデータベースに統合して解析を進める。「申請可能性を追求するとともに、試験の検出力を増大し、成功確率が向上する」(内藤CEO)と述べた。


【18年度の連結業績 (前年同期比)  19年度予想(前年同期比)】
売上高 6428億3400万円 (7.1%増) 6800億円(5.8%増)
営業利益 861億5400万円 (11.6%増) 1030億円(19.6%増)
親会社帰属の純利益 633億8600万円 (22.3%増) 720億円(13.6%増)

【18年度のグローバル製品全世界売上高 (前年同期実績) 19年度予想、億円】
レンビマ 626(322)1160
ハラヴェン 413(399)430
フィコンパ/Fycompa 193(147)250
Belviq 56(48)50
アリセプト 402(443)350
パリエット/アシフェックス 277(320)240

【18年度中間期の国内主要製品売上高 (前年同期実績) 19年度予想、億円】
ヒュミラ 469(434)490
リリカ 283(265)―
アリセプト 179(244)140
メチコバール 150(172)130
パリエット 129(172)110 ※
ルネスタ 112(102)130
レンビマ 100(30)130
ハラヴェン 94(93)100
トレアキシン 72(69)82
エレンタール 64(66)65 ※
ワーファリン 54(60)―
リーバクト 48(59)―
フィコンパ 30(17)50
ジェネリック医薬品 252(278)―
※EAファーマ取り扱い製品
注) リリカは共同販促収入
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