中医協総会 人口減少がもたらす地域医療への影響を提起 地域医療構想の実現急ぐべき
公開日時 2019/07/11 03:53
厚生労働省保険局医療課は7月10日の中医協総会に、人口減少がもたらす地域医療への影響について提起した。同省が示した「2040年を見据えた人口階層別市町村の変動」と題する資料では、北海道夕張市が2015年比で70%人口減少すると指摘。全国の自治体データを示しながら、地域に見合う病院病床数の見直しを急ぐ必要性を指摘した。一方で無薬局町村が約150町村にのぼるとのデータも示し、医療資源の適正配分の必要性を訴求した。国は2025年の医療必要度を示す地域医療構想の実現を急ぐが、入院医療の診療報酬上の評価に加え、医療資源の少ない地域における報酬上の評価の検討など、今後の議論に様々な問題提起をした格好だ。オンライン診療をはじめ、医療ICTの利活用を含めて、リソースの再配分とテクノロジーの活用という新たな切り口での議論を中医協に投げかけた。
この日の中医協総会は、「地域づくり・まちづくりにおける医療のあり方」について保険局医療課が資料を提示する形で議論を行った。入院医療のあり方については、前回2018年度診療報酬改定で急性期一般入院基本料(急性期一般入院料1~7)や地域包括ケア病棟入院料、回復期リハ病棟入院料の見直しなどを行ったところ。改定内容については、検証が待たれるところだが、一方で厚労省の懸案事項としては、地域医療構想の議論の進め方について課題が指摘されていることにある。
◎政府は地域医療構想の実現を命題に
根本厚労相も経済財政諮問会議の席上、地域医療構想の進捗状況を報告し、2025年見込みの病床数について、当初見込みの121.8万床に対し、3.3万床減少するとの見方を報告している。この内容は、財務省の財政審建議や経済財政諮問会議の骨太方針2019でも取り上げられ、今後の医療費適正化策の一環として政府として取り組む姿勢を鮮明にしている。
中医協の議論は、今後診療報酬上の評価が争点となるが、この日の厚労省保険局が示した資料からは、人口段階別市町村の変動を踏まえ、早期に病床機能の見直しを促す狙いが込められている。なお、この日の資料によると、2040年段階で現状人口20万~50万の市町村が2015年に比べて40%に減少する地域として、石巻市、鶴岡市、桐生市など8団体を明示。さらに50%削減する地域として小樽市をあげた。一方、人口3~10万の地域では、滝川市、大船渡市、釜石市など117団体を列挙している。
入院医療提供体制について厚労省は、「医療機関間の機能分化・連携を進めやすくするような評価のあり方について、各入院料の届出等の状況や、前回2018年度診療報酬改定の対応を踏まえどのように考えるか」を論点にあげた。ただ、厚労省が指摘する通り、人口減少に伴う医療機関経営への影響も今後増大することが予想されており、この日の議論をみても、地域医療構想の実現に向けて、各自治体が主導する地域医療調整会議の重要性も再認識される結果となった。
◎薬局と訪問看護ステーションとの連携も重要に
医師の高齢化も進むなかで、各地域の実状に合致した医療提供体制の効率化も求められるところだ。特に在宅医療が中心となるなかで、医療機関と薬局や訪問看護ステーションの連携も重要になる。2018年度診療報酬改定では、多職種での情報共有を通じて地域医療に貢献する薬局に対する評価として「地域支援体制加算」を新設。さらに、医療機関の求めに応じて服薬情報の提供を行った薬局に対する「服薬情報提供料」の評価を拡充するなど、服薬後の安全性情報を把握し、医師と連携して医薬品適正使用に努める薬剤師に手厚い評価を行った。さらに、医療機関などに情報提供する訪問看護ステーションを評価する点数として「療養情報提供加算」を新設した。ただ、情報提供先は医療機関がほとんどで算定も約1割程度にとどまっている現状にある。
看護師や薬剤師へのタスクシフティングも重要になるが、薬局・薬剤師も医師と同様に地域で偏在していることが浮き彫りとなった。この日、厚労省は無薬局村が約150にのぼるとのデータも提示した。こうしたなかで、期待されるのが、遠隔資料や医療ICTを通じた情報共有などによる医療の効率化だ。実際、2018年度に厚労省が、医療資源の少ない地域の医療機関へヒアリングした結果によると、「ICTによる連携とケア会議の運営」や、「eラーニングによる研修」、「遠隔診療」、「ICTを用いた画像情報の連携」などの有用性が指摘されている。この日の中医協では、こうした医療ICT活用についての議論もスタートした。