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20年度診療報酬改定で火花 日医・横倉会長「前回上回る大幅改定率を求む」 支払側・幸野委員「ネットマイナスを厚労相に要請」

公開日時 2019/11/28 04:52
2020年度診療報酬改定をめぐり、診療側と支払側が11月27日の中医協総会後にそれぞれ記者会見を開くなど、場外で火花を散らした。日本医師会の横倉義武会長は、「前回(本体改定率0.55%)を大幅に上回り、さらに働き方改革が実現できるような改定率の確保」を政府側に強く求める考えを明らかにした。一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も会見に臨み、「診療報酬は(薬価を含めたネットで)マイナスにすべき」との考え方を支払側6団体で合意し、同日中に加藤勝信厚労相に要請したことを明らかにした。医療経済実態調査の結果が中医協に示されたことで、一気に「改定率」をめぐる攻防の火蓋が切られた。診療・支払各側とも12月上旬の中医協で次期改定についての見解を表明する。

◎日医・横倉会長「全産業に比べて医療従事者の賃金は伸び悩んでいる」


日医の横倉会長は、「医療機関には常勤の換算で300万人以上、また医療福祉分野にはのべ800万人以上が従事している。これは全従事者の12%近くを占めている」と指摘。「全産業に比べて医療分野の従事者の賃金は、伸び悩んでいる」と訴え、「医療従事者に適切な手当てを行うことで、社会保障が充実し、経済の好循環が達成できると考えている。医療従事者だけが取り残されることのないようにしなければならない」と強調した。横倉会長はまた、西村経済再生相が経団連に継続的な基本給のベースアップ(ベア)を求めたことを引き合いに出しながら、「医療福祉分野の就業人口が増加する中で、給与水準が低いままでは全産業の平均賃金の上昇もよくならない。全産業の3番目にあり、医療福祉分野の賃金を上昇することは、全産業の平均賃金の上昇にもつながる」と述べ、前回改定の改定率0.55%を上回る水準でかつ、「働き方改革を実現できる改定率の確保」と強く求めた。

◎支払側・幸野委員「賃金・物価水準の動向とは大きな隔たり」


支払側の幸野委員は支払側6団体で行った会見で、団塊世代が後期高齢者に入り始める2022年以降、医療費の急増と制度を支える生産年齢人口の減少局面に入ると指摘。「適正化・効率化を通じた制度の安定とその持続可能性を高めていくことが、喫緊かつ重要な課題」と指摘した。そのうえで、給付の伸びを抑制し、過重な保険料負担を軽減しなければ、「社会保障制度の根幹をなす経済そのものにも悪影響を及ぼしかねない」と警鐘を鳴らした。医療経済実態調査の結果については、「中期的に見れば国公立・公的病院以外の経営状況はおおむね堅調」と指摘。特に一般診療所などで高い利益水準になっているとした。一方で、過去6回の改定で診療報酬本体プラス改定が続いているとして、賃金・物価水準の動向とは大きな隔たりがあるとして、診療報酬ネットでのマイナス改定を求めた。薬価等の引き下げ分については、「診療報酬本体に充当することなく、国民に還元すべき」と釘を刺した。

20年度改定の焦点には、“医師の働き方改革”をあげた。入院基本料での評価も中医協では議論の俎上にのぼる。この日も会見で、松浦満晴委員(全日本海員組合組合長代行)が「働いている時間数が超えているからそれだけを抑えるために人件費がかかるということで、診療報酬の中で見ていこうというのは暴論だ」と述べるなど、支払側はこれに反発を強めている。幸野委員も、医師の時間外労働の上限規制が加わる2024年度の前に3回の改定があるなかで、「(入院基本料で評価する)前にやるべきことはあるのではないか。まずは、環境整備を進めるべきだ」と主張。地域医療構想をはじめとした三位一体改革を推進するなかで、医療現場の課題を明らかにし、タスクシフト・シェアやIoTなどを活用し、医療従事者の負担軽減や医療安全の向上につなげるような、環境整備の必要性を強調した。

◎後期高齢者の自己負担割合「拙速な議論を避けるべき」-日医・横倉会長


この日の会見では、政府の全世代型社会保障検討会議で争点となった高齢者の負担問題にもそれぞれが言及した。日医の横倉会長は、後期高齢者の窓口自己負担を2割で継続する考え方について、「高齢になれば若い時より医療を必要とする機会が増える。病気の早期発見につながることから、生活に過度な負担がかからないようにすることが望ましい」との見解を示した。一方で、現役世代の負担にも配慮する必要があるとし、「拙速に議論を進めるのでなく、様々な角度からデータに基づいて国民生活への影響を慎重に見極めていく必要がある」と述べた。また低所得者への十分な配慮も求め、国民の納得感を得ることが先決とした。健保連の幸野委員も、高齢社会のなかで、「現役世代にとっては給付と負担のアンバランスの解消は必要。75歳以上の窓口負担は低所得者への配慮をしつつ、原則2割負担とすべきだ」との見解を表明した。

受診時定額負担性の導入について日本医師会の横倉会長は、改めて導入反対の姿勢を鮮明にした。横倉会長は、「受診時定額負担はあくまで財政論である」と断じ、「ルールを変えて患者に負担を求めることは、社会保障としての国民負担の理念に反する」との立場を主張した。このほか政府の全世代型社会保障検討会議が、団塊世代が後期高齢者に入り始める2022年を一つのマイルストーンに改革プランを検討していることに触れ、「どういう社会的影響をもたらすのか。社会経済状況が動くので、分からないことも多い。早く決めることが果たして良いことなのか」と疑問を呈した。

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